残暑の厳しい日、駒込駅を降りた。撮影しながら聞くセミの声が変わり、夏の終わりを感じるようになった。

 駒込駅そばに、江戸時代五代将軍綱吉の信任が厚く御側用人として重用された川越藩主・柳沢吉保が築造した庭園が「六義園」として市民に開放されている。
 この六義園は江戸時代の大名の築庭園形式である回遊式築山泉水庭園形式で、園内には「万葉集」「古今和歌集」の名勝を配する配慮がなされ、吉保自らがその意匠にあたり、7年もの歳月をかけて作られた。
 明治になり、三菱財閥の岩崎家の別邸となり、その後、東京都に寄付された。

 池をまわるように園路を歩くと、驚く程のカメの群生に出くわした。人影を察知すると水面を泳いで近寄ってくる。
 水際には「コイ・カメにはエサを与えないでください。」の看板が掲げられていた。カメは明らかにエサを求めて近寄ってくるようである。

 気になって、園の関係者に「コイ・カメには定期的にエサをやっているのですか?」と尋ねたところ、「来園者がスナックなどをエサとして与えていたため、栄養過多とスナック類の油が水面を覆い酸欠状態となり、コイがバタバタと死んだので、ゴールデンウイーク以降はエサは与えていません。でも、コイは死んでもカメはコイの死体を食べて生きているようです。カメの繁殖力は凄いですね。」と聞いて割り切れないモノを感じた。
 優雅な日本庭園の池の中では、壮絶なカメの生存競争が繰り広げられているわけである。
 笑い話のように伝えられている「生類憐れみの令」は柳沢吉保の時代のモノであるのが何とも皮肉な話しである。


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