五反田駅は国道1号線を跨ぐようにホームが作られている。1号線はここから高輪に向かって緩やかなスロープを描いていているため、ホームからは開放的な広がりを見せている。

 広い国道から一歩路地に入ると風俗営業店が目立ち、昼にも関わらず、入り口に呼び込みの男が立ち、通り過ぎる人に儀礼的に声を掛けていた。平日のこんな時間から営業しているのかと意外な感じだった。

 路上で氷屋さんが納品用に氷を鋸で切り分けていた。その様子を撮影しながら、以前会社勤めしていた時の同僚のことを思い出していた。彼の父親も氷屋を営んでいたな…、彼もその後その会社を退社し、今はここ五反田でDTPのMacのオペレイターとして働いていると聞かされいた。
 その撮影中、名前を呼ばれ振り返ると、彼が立っていた。本当に偶然であった。近況を聞き、五反田駅周辺の撮影をしていると説明すると、「特別、写真になる場所じゃないですよ、ここは…。」と答えた。
 彼と別れ、向かいのタバコ屋でタバコを買った。店先にいる犬にも、「五反田は写真を撮るような場所はないよ」という顔をされた。「そういう写真を撮るつもりはないのだが…。」と答えたが、理解できないようだった。


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