胞子のようにばらまかれた都市の遺伝子は場所を変え、その姿を変え、生息しつづけてきた。

 外環境の変化に順応し、その順応情報を次に伝えながらの自己増殖は小賢しい人間の想像を遥かに卓越してきた。
 何より、ここ東京の3世紀に渡る都市の変遷が雄弁に語っている。

 街を歩き、突然襲われるデジャブートリップは都市の遺伝子達の無言のメッセージなのかもしれない。
 それは都市からの空間的メビウスへの好意的な招待ではなく、単なる遺伝子のシッポを踏んでしまった者への照れ笑い的リアクションなのかもしれない。
 それを感じられるなら、敢えて綻びでてしまった箇所をことさら広げることなく、黙って頷き、左手の小指の爪を隠してその場を立ち去ることにしよう。

 むしろ、彼らは彼らで…、目が合った瞬間、ソソクサと立ち去る術を既に情報として取り込んでしまったように感じられる。


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