新潟県・巻町の日本海に面した約200万Fの広大な土地が立ち入り禁止区域となっている。東北電力による巻電子力発電所予定地である。

 この計画は96年8月のわが国初の原発建設に関する住民投票で「原発建設反対」の結果を受け、町が施設炉心部予定地を含む町有地を売却しないという形で残り3%の用地取得が暗礁に乗り上げ、凍結を余儀なくされている。
 原子力発電所建設計画は例外なく、都市部でなく、地方地域で進められてきた。「絶対に安全である」という前提条件のもと「地域振興」を唱ってきたが…、近年の事故・杜撰な管理が地域住民の不安感を強くする結果となった。
 国策としての電力事業は理解できるが、潜在的な危険を自分たちは背負いたくない。絶対安全ならば、なぜ巨大電力消費地である東京に原子力発電所を建設しないのかという問いかけも聞かれる。

 住民投票からちょうど一年、原発建設予定地へ行ってみると、各所に立ち入り禁止の立て札が立てられているなか、砂浜には多くの人が海水浴を楽しんでいる姿を見ていささか拍子抜けしてしまった。

 その同じ砂浜に海にいるはずもない大きな蛙の骸が波にうちあげられ、夏の日差しでカラカラに干上がっていた。
 理解できない立ち入り禁止区域を一層不可解なものにしていた。


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