Report:カリン

 DSセプト部の対戦会「GPカリン」に参加しました。ルールは「目標魔力6000G、40R、30秒、サドンデスなし」です。いくつか気がついたことがあるので、レポートを残しておきます。

 マップデータ

初期魔力 砦ボーナス 最大ダイス 基本地価 護符価値
200 100*4 7 50,80,100 10

 周回ボーナスの計算方法と各スペルの収支

 周回ボーナスの平均値(期待値)の計算は次の方法で行いました。

 よって合計は280Gとなり、砦ボーナスの400Gと合わせて、1周することで680Gの魔力を獲得できると計算できます。1周は40歩なので、1歩あたりの価値は17.0G、1ダイスの価値は68.0Gです。これは、平均的なマップは80~100Gであることを考えると、極端に魔力供給が少ないことを意味します。これがカリンの大きな特徴です。

1歩の価値 1ダイスの価値 最終ラウンドまでの獲得魔力
17.0 68.0 2720
ホーリーワードX ヘイスト フライ マナ
42.0 52.0 38.0 125

 続いて【パーミッション】の収支を計算します。かなりの距離を短縮できるため【パーミッション】はいつ使ってもプラスになると思えますが、実は違います。砦を通過した数による収支の違いは、次の通りです。

 【パーミッション】は「砦をあとひとつ通過すれば周回」という状況で使っても、マイナスになってしまいます。新大陸と違って、かなり使用機会が限定されるスペルです。もちろん、高額通行料を避けたり、【マナ】の強化、クリーチャーの配置などなど、様々な副次効果が見込まれるため、必ずしも数字の通りの評価ではありません。しかし、使うタイミングを考える要素にはなります。

 魔力の増幅ができない

 カリンは土地数が少なく、聖堂もなく、収入も弱いため、自力での達成が困難です。これから生み出される環境を考えてみます。
 まず、一つ目としては「他人の土地を奪う」戦術が成り立ってしまうということです。自分を伸ばすことが出来ないので、他人の伸びシロを奪って自分を伸ばすのが手っ取り早い。
 二つ目は「通行料を奪いやすい」ことです。狭い上に砦までを往復するため、1つの土地を2回通過することになり、通行料収入が発生しやすい環境にあります。

 以上から、総じて土地の需要が高く、クリーチャー戦闘を重視してブックを構築しなければならないと結論付けられます。

 魔力収入の機会に恵まれないため、収入手段にも気を配らなければなりません。「相手の拠点を奪う」と言えば聞こえは良いですが、侵略するにも手持ち魔力は必要です。最低限のカードを使えるだけの魔力を供給する手段は用意すべきでしょう。もちろん、通行料が取りやすいのですから、早々に拠点を作って維持をできれば、かなり相手を威圧することができます。
 先に挙げた【パーミッション】は当然としても、【パーミッション】と相性が良くて場が遅延するほど効果の高まる【マナ】や、クリーチャーコストが高くなりがちな環境から【ウィザードアイ】が有効です。また、戦闘が多発するため【ソウルスチール】も意外と稼げます。
 機能時間帯の比較をすれば、クリーチャー配置のコストを確保したい序盤は【ウィザードアイ】、移動侵略など戦闘が多発する中盤は【ソウルスチール】、周回数を稼いだ終盤は【マナ】となります。複数を組み合わせると良いでしょう。

 カルドセプトが将棋になる=移動侵略の多発

 カリンは、砦まで行って戻る間に土地を2回通過するため、頻繁に領地指示を出せるマップです。そんなマップで土地が足りないとなればすることはひとつ。「移動侵略」です。ただでさえ土地を取るために高STのクリーチャーを配置しやすく、隣も自分もST50超えなんてザラ。と、なれば「殴られるより前に殴っておけ」とばかりに移動侵略が発生します。幸いにして隣の土地も同じ属性。殴る動機は十分にあります。

 しかし、自分が侵略する分には良いとしても、他人に侵略されるのは回避したいものです。では、土地を安定させるにはどうしたら良いでしょうか。
 一つには、アイテムを多く抱えて、侵略しても無駄だと思わせることです。「アイテム削りをしたは良いけど、こっちのクリーチャーのHPも削られた」と来れば、迂闊な侵略はしてこないでしょう。
 もうひとつは、侵略に失敗したときにデメリットを与えるクリーチャーを使うということです。【アケローン】や【ディープスポーン】が代表格ですが、単純にSTの高いクリーチャーでも同じことができます。いくつか織り交ぜておくと良いでしょう。
 また、明らかに移動侵略されそうな土地にはクリーチャーを配置しないことが、意外と重要なポイントです。できれば低STのクリーチャーや防御型クリーチャーの隣に配置したいです。迂闊に配置すると「相手が移動するから、先にこっちが移動して・・・」となり、余計な手数がかかるばかりか、将棋の歩の突き合いように駒(配置しているクリーチャー)の数比べ、消耗戦をやることになってしまいます。

 狭いとコントロールが突き刺さる~色被りは避けろ

 狭いマップでは、少ない「ゆらぎ」でも、マップに大きな「波」を起こすことがあります。【シャッター】で割った防御アイテム1枚でも、普通のマップであれば「拠点を踏まれるまで何とかなる」ものですが、カリンでは簡単に踏み抜かれるため土地を維持できません。これは【バインドミスト】や【ドレインマジック】でも同様です。使われると普通のマップよりも確実に効きます。ただし、妨害は妨害でしかありませんから、妨害ばかりしていても勝てるわけではありません。

 最も影響が大きいのは「属性被り」による土地の削り合いです。例えば、火属性が2人いたときと1人のみの時では、展開に大きな差が生じます。他のマップなら色被りメリットを生かせますが、カリンでは少ない土地を争う関係になってしまうのです。単純なブックの強弱やプレイングの巧拙よりも、試合展開に与える影響は大きいです。そのため、相手と色が被るかどうかは大きな要素になります。

 ブック解説と反省点

 上述の「色被り」を意識して、ブックは3つ用意しました。

D・I・O」 written by 16bits
Creature20Item7Spell23
クレリック2エルブンクローク1アップヒーバル2
ティラノサウルス2オーディンランス1ウィザードアイ3
ドラゴノイド4カウンターアムル1スワップスペル1
アケローン4グレムリンアムル1チャリティ3
アシュラ2サキュバスリング2テンペスト1
エルダードラゴン2フュージョン1パーミッション4
サラマンダー2ホーリーワード62
パイロマンサー2ホーリーワードX4
マナ3

 単純な総合戦闘力で言えば【エルダードラゴン】が全クリーチャーの中で最も強く、これを有効活用するために組んだブックです。竜族を多く採用し、削り侵略のコストを落とすために【ドラゴノイド】を4枚。【アケローン】【アシュラ】は侵略抑制の要員で、火被りのための【サラマンダー】、【デコイ】対策の【パイロマンサー】と続きます。【サキュバスリング】はやや異色ですが、【ナイト】+【オーディンランス】を低コストで防げること、【アケローン】が使える先制付与アイテムであることを考慮して採用しました。魔力収入は【パーミッション】4枚に【マナ】と【ウィザードアイ】を3枚。コントロール要素として、巻き返しの【テンペスト】、万能に使える【スワップスペル】という構成です。

半熟オム」 written by 16bits
Creature20Item6Spell24
ティラノサウルス2ウィンドシールド2ウィザードアイ3
パイロマンサー2オーディンランス1ウェザリング2
ギルドラプター2グレムリンアムル1カタストロフィ2
クンフーモンク4ブーメラン2スワップスペル1
ジーニー2チャリティ3
スペクター4パーミッション4
ナイト2ホーリーワード62
パラディン2ホーリーワードX4
マナ3

 【カタストロフィ】と【アヌビアス】を使った全滅型焼きブックを作りましたが、【アヌビアス】を強化するまで時間がかかることと、全焼きするための【カタストロフィ】2発が果てしなくコストがかかることから断念しました。その結果、焼いて場のクリーチャーを整理しつつ土地数を伸ばすブックに落ち着きました。そこそこのポテンシャルはありますが、「相手が焼いた後の侵略やクリーチャー交換に付き合ってくれないと、ブックのアドバンテージを生かせない」という他人任せなブックです。

逃げ水カリン」 written by 16bits
Creature20Item7Spell23
クレリック1アーメット2ウィザードアイ3
ティラノサウルス2オーディンランス2シンク2
ドラゴノイド2カウンターアムル2スワップスペル1
パイロマンサー2グレムリンアムル1チャリティ3
ネッシー3パーミッション4
ファンガス4ホーリーワード62
リバイアサン2ホーリーワードX4
リリス4ポイゾンミスト1
マナ3

 「火属性が被る」ことを想定した水ブックです。【エルダードラゴン】の竜族応援だけ、いただこうというコンセプトで、【ネッシー】【リバイアサン】をインスタントに強化できます。水は【エルダードラゴン】の直踏み侵略を受けないのもメリットです。アイテムの消耗戦に強い【ファンガス】、削られるのが怖いので侵略を抑制する【リリス】と駒も揃っています。異色は【ポイゾンミスト】ですが、「相手の移動侵略を誘発する」のを狙って1枚入れています。


 実際の試合で多かったのは、「【シャッター】でアイテムを破壊されて、土地を維持できなくなる」ケースでした。こちらはクリーチャー単体の能力では侵略をされにくい構成なので、【スワップスペル】1枚では無くて、相手のアイテムを破壊できるように【シャッター】複数枚の方が良かったのかも知れません。しかし、場の侵略アイテムを1枚壊しても、2枚目、3枚目には対応できないため、やはりドローして問題解決を図った方が、真っ当な気がします。この辺は難しいところですね。