Marine Blue Serenade
■7日目■
【 朝 / 昼 / 夕 / 夜 】
◆7月27日<朝>◆
『最終日』
とうとう俺が家に帰る日がやってきた。姉貴達に別れを告げてバス停でバスを待っている。
振り返れば長いようで短い旅行だった。
楽しい事もあったし辛く悲しい事もあった。
しかし、今回の旅行は俺の今までの人生の中でもっとも輝いていた一週間だったのかもしれない。
「まこと!」
名前を呼ばれて振り向くと、向こうから姉貴が小走りでこちらにやって来ていた。
「なんだ、姉貴。俺、忘れ物でもしたか?」
「ちょっと見送りにな。…まこと、直美ちゃんとは上手くいかなかったようだな」
俺の横に並ぶ姉貴。
「いいんだ。…上手くいかなかったけど、いい思い出にはなった」
「直美ちゃん。今日も元気にバイトに出て行ったよ。でも、本当にこれでいいのか? 彼女のこと」
「夏のいい思い出さ。ちょっと寂しいけど、俺は納得してる」
「そうか…。まこと、人生には出会いもあれば別れもある。人と出会い別れながら、人生というのは綴られていくんだ。お前のこの夏の短い恋はそのほんの一つに過ぎない。別れがあれば、必ず出会いもある。もっと素敵な女性に巡り会えるさ。次の恋は絶対に逃がすなよ」
「姉貴…」
姉貴には俺が納得してるって事が嘘だとお見通しらしい。
バスがくると姉貴はただ俺の肩を元気づけるようにポンポンと二回叩いた。
「じゃあな姉貴」
「盆には帰るって親父たちに伝えておいてくれ。それから、元気出せよ、まこと」
ドアが閉まりバスが走り出した。
俺は窓の外を眺める。
ビーチはいつもの賑わいをみせていた。
俺がいなくなっても夏の間中、賑わっているだろう。そう考えるとなぜか切ない気持ちになった。
直美さん…彼女は今頃元気にバイトしているのだろう。
活発的で着飾らない所が好きだった…気がついたら俺の隣にいた女性。
君と夏のわずかな時期一緒に過ごした事は絶対忘れない…さよなら直美さん…。
気がついたら涙が頬をぬらしていた。
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