◆エピローグ◆
『夏休みが終わって』
新学期が始まった。
また平凡な毎日が戻ってくる。
小野寺さんと弘と俺は、以前となにも変わらずつきあっている。けっきょく、俺達はこういう関係の方がシックリくるんだ。そんな気がする。
俺は放課後。
学校の屋上から何気なく街並みを見下ろしていた。
俺はちょっと考え事をしたい時はこうして屋上に来るのだ。
「おい! まこと、何だ? 考え事か?」
突然、声をかけられ振り向くと、そこに弘が立っていた。
「探したんだぜ。いまからゲーセンつきあってくれ。いまちょっとハマッているやつがあるんだ」
「ああ。いいけど、お前、今日は当番じゃなかったっけ?」
その時、屋上のドアがバン!と勢い良く開いた。
「弘! またさぼって帰る気だったのねっ!!」
それは小野寺さんだった。
片手にモップを持っている。
そうか…女子の当番って彼女だったけ?
「あっ、やべっ!」
「なにをわざとらしく宇佐美君の背中に隠れてるのよ!」
そう言う彼女の方へ俺を後ろから押す弘。
「な、なにするんだよ、弘」
「こいつが代打な。じゃ、俺はこれにて…」
めちゃくちゃ言ってやがる。立ち去ろうとする弘の襟首をつかまえる小野寺さん。
「なにが、これにてよ!か弱い女の子に仕事押しつけて恥ずかしくないの」
「だから、まことを変わりに…」
「問答無用! いいから、いくわよ! …ごめんね、宇佐美君。この馬鹿、借りて行くね」
そう言って彼女は弘を引っ張って階段を下りていった。
俺はこんな相変わらずな関係も悪くないと思い始めていた。
けっきょくあの夏の日の事は俺達になんの変化ももたらさなかった。
でも、3人で遊んだ思い出として振り返ると、けっこう楽しかったように思える。
それに貴重な体験だぞ。近場じゃなくって、あんな遠い場所で三人で遊んだなんていうのは…。
俺は青空を見上げてあの夏の海での思い出を振り返る。きっとあの夏の一週間は忘れない思い出になるだろう。
俺は大きく背伸びをして鞄を手に取る。
「仕方がない。俺もあいつらを手伝うか…」
そう独り言をぼやきながら俺は屋上を立ち去った。
【END】
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