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 『明けてゆく空の色』 1999年1月26日



 少しずつ色を変えていく東の空を多くの人々が見上げていた。澄んだ透明な冬の大気の中、一年の初めの夜明けを待っている。
 変わりゆく空を見ている時間はけっこう好きだ。黒から青、そして赤へのグラデーションの美しさはとても素晴らしい。一年のうち何度、いや一生のうち何度、色を変えて明けてゆく空を見つめることがあるのだろうか?
 毎日繰り返されているこの光景を大勢の人が気にとめて見上げる日はこの日しかないのではないだろうか?
 私はカメラの三脚をセットしながらそんな事を漠然と考えていました。

 元旦の朝、私は友人と別府に初日の出を見に出かけました。今年は暖冬にもかかわらず年末年始は急に冷え込んでこの日も寒かった。
 でも、私は冬の寒い朝が嫌いじゃない。透き通った緊張感みたいなものが好きです。

 東に海を持つ別府では毎年、初日の出を見るためのイベントが各所で開かれています。私たちが行ったのは海辺で開かれているお祭り。(地元の婦人会や商工会の人たちがやっているらしい)私はここ二年、このお祭りには来ていなかったのですが、ここ数年で知名度が上がったらしく、久しぶりに来たそこには、かなりの人が集まって来ていました。
 いくつもの大きなドラム缶に火が焚かれ、多くの人がそこで暖をとりながら日の出の瞬間を待ちます。
 その時間ってけっこう好きです。

 夜が明け始めるとみんな立ち上がり東の空を見上げる。
 ここだけじゃない。他の海岸にも、そして鶴見岳などの山の上や展望台、高台から多くの人がその瞬間を見つめている。
 そう考えてみると凄い事のような気がします。こんな朝早く、みんな一つの目的のために集まって来ている。子供も大人も、老いも若きも、男も女もみんな同じ瞬間同じ空を見つめている。
 その事に気づいて私は一種の感動を覚えました。

 空が白く輝き始めた頃、みんな息をのんで瞬間を見守る。
 そして太陽が姿を表す。一瞬の間をおいて会場に拍手が広がった。万歳をしてる人もいる。
 私はその瞬間を肉眼で見た後、一眼レフとデジカメを交互にシャッターを切りました。
 こうして一年に一度の夜明けを見つめる日は終わりました。

 確かに眠いし(ほとんど徹夜だった)寒いし退屈だったし、きつい事もあるけれどそれに見合う良さというか感動があったと思います。
 あんなもの見てもつまらないって言う人がいるとは思うけど、私は好きだな。
 私の中ではけっこう価値のあるイベントなので、来年以降も機会を作って行ってみたいです。