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interview 1997

 


 

ブライアン・イーノが新作『ザ・ドロップ』のプロモーション、および来年、彼のプロデュースのもと東京にオープン予定の「クワイエット・クラブ」物件下見のために、久しぶりの来日を果たした。早速、新作のことや彼のプロデュース方法、そLて独特のサウンドを生み出すテクニックについてインタビューを行なおうとしたのだが、編集部が撮影用に用意したEMS SynthAを手にしたイーノは、インタビューそっちのけでパッヂ作リに没頭し始めてしまった……。

 

今でもEMSを使っていますか?

 

使っている。これにしかできないことがあるんでね。よくやるのは曲の中でダダグダダといったパルスを発生させたいとき、マイクを使って楽器の音をこのリング・モジュレーターに入れるんだ。それから……(ジョイスティックを操作しながら)こうやって話すこともできるんだよ。

 

プロデュースやセッションをする際にはいつもEMSを持ち込んでいるのでしょうか?

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(「そうだ」とシンセで答えている)

 

最後までそれだと困るのですが……。

 

(まだやっている)……(笑)でも、本当に重宝な機械だよ。フィルターもリング・モジュレーターも素晴らしく、他の楽器を入れるのに役立つ。

 

大抵エフェクターとして使うのですか?

 

これはノイズを発生させるための機械あるいは新しい音楽のための楽器なんだ。これをキーボードのように弾こうと思わない方がいい。でも、これまではできなかったものすごくエキサイティングで新しいことがたくさんできる。

 

どこが他のシンセサイザーと違うのでしょう?

 

ほかのシンセサイザーでは失われてしまった設計原理が生きているからだ。原理は3つある。第1の原理は、これがノンリニアであるということ。現代のシンセサイザーは、すべて既に内蔵されたロジックがあって、大抵はオシレーター→フィルター→エンベロープといった順序になっている。だが、EMSだとオシレーターからフィルターへ行って、フィルターがLFOをコントロールし、LFOがエンベロープをコントロールし、エンペロープがオシレーターをコントロールするといったことができるんだ。とても複雑なル一プを作ることができるので、複雑な音を出すことができるんだよ。現実の世界というのもまさにそうやって音が生み出されている。決まった順序によってのみ物事が起こるわけではなく、とても複雑なフィードバックや相互作用があるんだ。
 
 第2の原理はやっていることが目に見えるということ。シンセサイザーのデザインを台無しにしてしまったのは日本人だ。素晴らしいシンセサイザーは作ったが、インターフェースの面ではまるで悪夢だよ。ボタンを押しながら15回もスクロールしてやっと求めるパラメーターに行きつくなんてね。それに比べるとEMSは使いやすい。パフォーマンスをしている最中にもいろいろなことができるから、即座に違った感じの音楽が出来上がるんだ。ボディ・ランゲージが音楽に影響…を及ぼすんだよ。ボディ・ランゲージがあまりないと、窮屈で細かくて正確で退屈な音楽しか生まれないし、豊かだとクレイジーな音楽が生まれるんだ。

 第3の原理は、これにはスピーカーを含めてすべてが組みこまれているので他.のものを接続する必要がないということ。私がいかに早くこれをセットアップしたか見ただろう?もしもこれが現代のシンセサイザーだったら、まずケーブルを探して、オーディオ・セットの裏側に回って接続しないといけない。あれこれぐちゃぐちゃやっているうちに、恐らく私は出て行ってしまうだろうね。私はもう歳だから気が短いんだよ。

 

ほかに常に持ち歩いているシンセサイザーは?

 

長年DX7を使っている。今回の新作はほとんどDX7だけで作った。それから、Prophet-VSを持っているが、あれはEMSとちょっと似ているね。ワイルドなシンセサイザーで、音楽を演奏するのがなかなか難しいが、私はどっちみち音楽をやりたいわけではないからね。私が持っているシンセサイザーはそれだけだよ。

 

Windows95の起動音はあなたが作ったそうですが、どのシンセサイザーで作ったのですか?

 

ああ、あれは面白かった……ある日手紙をもらったんだけど、そこには「斬新で、クリエイティブで、インスピレーションにあふれていて、広々としていて、深みがあって……みたいな形容詞がやたらと付いていたんだけど、最後には「といった3秒半の曲を作っていただきたい」と書いてあったんだ。おかしいだろう?その2ヵ月前は40分くらいのものすごく長い曲を書いていたから大変だったね。でも、あのプロジェクトはとても楽しかった。DX7とProphet-VSを使って1週間かけて作ったんだけど、それ以来ほんの短い時間にもすごく敏感になってしまった。実際、あのプロジェクトからほかにもいろいろな曲が生まれたから楽しかったよ。

 

あなた自身はWindows95を使っていますか?

 

大嫌いなんだ。どっちみちコンピューターはあまり好きではないけど、私はMacintoshを使ってたんで、MacintoshからPCへと行くとまるで石器時代に逆戻りしたような気持ちになる。コンピューターのあらゆる欠点がPCではさらに悪くなっているから、触らないようにしているんだ。

 

新作はロンドンのご自身のスタジオでレコーディングしたのですか?

 

そうだ。TASCAM DA-88が2台あるんだが、今回のアルバムではあまり使わず、直接DATに落とした。私はVisionを使っているんだが、それでシーケンスを組んでDATで録るという方法だ。ただ、1回DATに落としてからまた別のプロセスに通すということが多い。シーケンサー→DAT→プロセッシング→もう1つのDAT→プロセッシングといった具合にやっていくんだ。

 

プロセッシングとは具体的にどの機械を使ってやるものなのですか?

 

EVENTIDE H3000SEを通すことが多い。これは素晴らしいマシンで、随分といろいろなプログラムを作ったよ。ディレイやハーモナイズはもちろん、レゾナント・フィルターとしてよく使う。フィルターを発振させつつ、その周波数ポイントをスイープさせるんだ。私が行なう処置はどれも流動的なもので静止してはいない。曲の中で動いているんだ。

 

H3000SE以外にプロセッシングに使うものは?

 

H3000SEからYAMAHA SPX9Oへいって、そこから幾つかの真空管もの、そしてまたH3000SEに戻って繰り返すというようなことが多い。さらにその出力をイコライザーにかけたりね。SansAmpもよく使う。あれを使うと音が各段に良くなるんだ。低音部に少しかけて曲をパワフルにしたり。

 

実際にプロセするときにポイントとなる周波数は決まっていますか?

 

好んで使うのは軽快な高音部とダーティで暗い低音部だ。

 

コンソールで好きなものはありますか?

 

NEVEが好きだ。とても音楽性が豊かだからだね。例えば、NEVEのEQを使えばどんなものでも良くなる。目を閉じて音を入れてもいい音になるんだ。でもSSLだと正反対のことが起こる。技術面でどこがどう違うのかは知らないが、NEVEのEQは私の耳に心地好いんだよ。

 

レコーダーは何が好きですか?

 

アナログだと、エディットのしやすさや巻き戻しのスピードなどを考慮に入れるとすると、MCIだ。デジタルではSONYが好きだな。

 

モニター・スビーカーで好きなものは?

 

まず何よりもスピーカーはたくさんないといけない。どんなものであろうと、とにかくたくさん必要なんだ。音楽を作っているときの私はスピーカーの正確さなどは問題にしない。どれだけ私を心地よくさせてくれるかが肝心で、スピーカーはそこいら中にあるし、どれも種類が違うんだ。50年代か60年代にイギリスで発明されたシステムがあってね、スピーカーが上を向いていて音がまず上へ行って、それから部屋中に広がるんだけど、それが好きなんだよ。私は音がそこら中に広がっているのが好きなんだ。音楽が白分の前にあるのではなくて、音楽の中に自分がいるという感じが好きなんだ。だから、ヘッドフォンで作業するのは大嫌いだし、ヘッドフォンで音楽を聴くことも全くない。

 

ところでプロデュースしているときのあなたの様子を知りたいのですが、コンソールをいじっているのですか?

 

何もいじらないよ。恥をかかせてやるんだ。「おまえは何の価値もないウジ虫野郎だ!一体何様のつもりでアルバムを作ろうなんて思ったんだ!」ってね……SM状態にしてやるんだ(笑)。いやいや、私がやろうとしているのは、なぜ君はアルバムを作っているんだと質問することだよ。なぜその人がアルバムを作っているかの理由を明確にしてあげたいと思っているんだ。現代のレコーディングにおける一番の問題は、あまりにも多くのことができるということだ。シーケンサーを使ってカントリー&ウェスタンの曲だってできる。それが30分もしたらヒップホップの曲だってできるし、チベットのボーカルを使ったワールド・ミュージックもできる。アルバムを作るのにやたらと時間がかかるのは、みんな本当に自分のやりたいことが見つかるまでなんでもやってみたがるからだよ。

そして私のようなプロデューサーの仕事はその幅を狭めることだ。それはやらなくてもいい、それもやらなくてもいい、でも残ったこれに専念しようといった具合にね。まずは幅を狭めて、狭めたものを強化するのが私の仕事だ。もう1つの私の仕事は、プロジェクトと外界との橋渡しだ。スタジオでただアルバムを作っているだけではなく、それが映画や絵画や彫刻や小説とどう係わってくるかを伝えてあげる。これは果たして他の人たちが取り組んでいるアイディアの一部なんだろうかとね。

 

ほかにプロデュースの秘訣はありますか?

 

私は、大抵みんなが帰った後にレコーディングされたものを聴き直してみて、あまり重要でない要素を取り除いていいところを強調させるんだ。そうすれば翌日バンドがやって来たときには、違ったものを耳にすることができる。そしてそれが彼らの励みになると思うんだ。でもだからこそ大変なわけで、バンドが来る前にスタジオに来て準備しておかないといけないし、バンドが帰ってからも大抵は残って、すべてがいい状態であるようにしておかないといけない。そうすれば次にその曲に取り組んだときに、トラブルだらけではなくエキサイティングなものになるんだよ。トラブルだらけで1日を始めたい人間などいないから、夜の間にトラブルを解決して、翌日バンドがやって来たときには曲がちゃんとクリーンな状態になっているようにするんだ。

 

たくさんのバンドからプロデュースを依頼されていると思いますが、引き受ける基準は?

 

その人たちと一緒にスタジオにいてどれだけ楽しめるかということを考える。ただ、最近はプロデュースしようという気にならない。しばらくは自分のこと……音楽でないものもやりたいんだ。

 

 


Sound & Recording Magazine 1997.9