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第2回 東京大学におけるMac OS X導入事例と、UNIXアプリケーションの活用について

前回のコラムの中で、Mac OS Xの普及事例の1つとして 「某有名国立大学を始めとする教育現場」という項目を挙げましたが、それを詳しく紹介している記事がアップルコンピュータのサイトにて公開されています。記事中でも紹介されていますが、NEC(リース)が「Xserve」を中心とするMac OS Xベースのシステムを提案し、構築を担当したというのは非常に興味深い事です。


●非常に興味深い選択

NECといえば「PC9801」シリーズ(私が最初に手にしたパソコンです)を世に送り出し、日本中にMicrosoftのオペレーティングシステム(MS-DOS)を普及させた先鋒的な存在であり、日本における開発当初のMS-Windows(現在のWindows XP)の大半は、PC-9801の上位機種によって稼働していたといっても過言ではなかったと思います。そんなNECの関連会社が東京大学において、Xserveを中心とした世界最大規模のNetBoot環境をMac OS Xによって構築したという事実は、IT業界に携わる者として非常に斬新な印象を持ちました。仮にMac OS Xが他社にライセンス供与されていて、以前のように互換機の存在が許されているならば、自社のハードの幾つかにMac OS Xを載せてみたいと考えるメーカは思ったよりも多いのではないか?とも考えたりします(決してNECがそうだと考えているわけではありませんが)。


●システム構築における理想型ともいえるNetBoot環境

東京大学の情報教育システム「ECCS2004」にて採用されているXserveを中心としたNetBoot環境は、インフラ面等を始めとする導入に至るまでの敷居が比較的高いと感じられるものの、システム管理に携わる者にとってみれば一度は手がけてみたいと思うシステムの1つといえます。

NetBootの概要を簡単に紹介しますと、

サーバ上(この場合はXserve)に置かれた起動用のディスクイメージを、クライアント側がネットワーク経由でメモリに読み込む事によってコンピュータを起動させるシステム。使い方次第ではクライアント側にハードディスクが不要となる(ハードディスクレス)。

この環境がもたらすメリットとしては(紹介記事と重複する部分もありますが)、

よって、「全てのクライアントが、何時使用されても同一環境下で作業する事ができ、エンドユーザ側では常に継続性を保った状態での作業が可能となる」といった事が挙げられるかと思います。

これは、学生のみならず一般企業においても同様ですが、一定規模以上の人数で使用されるシステムを運用しようとする場合、システム構成はもちろんの事、極端にいえばフォルダの並び方、アイコンの位置等、こと細かく仕様を統一して局地的なローカルルールの様なものを排除してあげる必要があります。その辺りの決め事が曖昧になってしまうと、転勤や、ちょっとした部署間の移動の時でさえも業務に支障をきたす事が起きてしまいます。それほど現在の社会においてパソコンという物は深く浸透してきており、全く応用の利かない初心者の人でさえも、迷う事なく使えるシステム構成が望まれているという事です。

このような観点から見ると、人的負担やランニングコストをかけずに安定したシステム構成を保てるNetBoot環境は、システム管理者、エンドユーザの両者から見て理想的なシステム構成といえるのではないでしょうか。


●UnixとMac OS Xの橋渡し役に

Mac OS Xはコア(基幹)となる部分にオープンソースのDarwinにFreeBSD の機能を組み込む等、UNIXをベースにして稼働している事は周知の事実となっていますが、このシステム構成により世界中に数多く存在するUnixベースのアプリケーションが移植する事なく、そのままに近い状態での利用が可能となっています。但し、Mac OS X上にはUnixのGUIの実行環境である「X Window System」を組み込む必要がありますが、これもMac OS X 10.3.Xにて標準添付されている「X11 for Mac OS X」を使用する事により、ユーザに追加投資の負担を強いる事なくUnixベースのアプリケーションが利用できるようになっている等、アプリケーション不足がユーザの導入に二の足を踏ませる要因の一つともなっているMac OS Xにおいては、普及の鍵を握る大きな要素の一つになっているかと思われます。

但し、UNIX用のオープンソース(注1)のアプリケーションは、本来ソースコードの形式で入手した物をユーザ自らの手でコンパイル(注2)する必要があり、「X11」を含めた実行環境は一般ユーザーにとって決して身近な物とはいえませんでした。しかし、そういった問題を前述の東京大学においては、「Fink」と呼ばれるオープンソースのソフトウェアをMac OS Xにパッケージとして移植するプロジェクトを専門のチームが開発、提供する事により、学内と家庭において常に同じ環境で作業する事ができるよう、手助けを行っているようです。

特に「X Window System」上で動く代表的なアプリケーションとして耳にする事も多い「OpenOffice.org」が、発表していたMac OS Xネイティブ対応(注3)のロードマップを修正して、暫くは「X11 for Mac OS X」版に注力していく事を表明した事により、がぜん「Fink」の存在と普及がクローズアップされていくのではないかと思われます。

そしてこれらの活動が、とかく敷居が高いとされているMac OS XへのUNIXアプリケーションの組込みに1役買ってくれれば、Mac OS Xの未来像も明るく開けてくるのではないかと考えると共に「東京大学Finkチーム」を支持する事をここに表明したいと思います。


●本文訳注

(注1)オープンソース

プログラムの原文(ソースコード)をインターネット等で公開しているソフトウェア。一見危険な存在にも思えるが、世界中の技術者(プログラマー)などの監視によりセキュリティ上の欠陥等が素早く発覚し、迅速な対応が取れる等の特徴を併せ持つ。政府が絡む公的機関等はオープンソースのOSを採用しようとする動きがある。

(注2)コンパイル

高水準言語(C、FORTLAN、JAVA、COBOL等)で書かれた原始プログラムを、コンピュータが解釈できる形式(機械語)に翻訳する処理の事。尚、翻訳を行う言語処理プログラムの事を「コンパイラ」といい、アセンブラ言語を機械語に翻訳する言語処理プログラムは、そのまま「アセンブラ」という。因に前述のOpenOffice.orgをミドルクラスのG4でコンパイルすると25時間近くかかるとされている。

(注3)ネイティブ対応

別途エミュレータや実行環境等を用意しなくとも、そのままの形で動かせるプログラムの事。


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Created Date : 04/11/21
Modified Date : 05/05/07