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山田太一氏講演(浜松)
脚本家として1970年代で活躍し、時代をリードした山田太一氏の講演がありました。

テーマは「いま生きているということ」、、小柄な人は、静かで穏やかな語り口で「弱い」ということは美しいと主張されました。

浜松出身の木下恵介監督と共に映画を作った頃のこと、特に木下映画は、不器用にしか生きられない名もない一般の人たちを取り上げ、その人生にスポットをあてて、社会との関わり合いを深く描いていくことが多く、共感をもって共に映画を作ってきたということでした。

1974年の多摩川水害をもとにしてつくられた氏の代表作「岸辺のアルバム」では、当時まだタブー視されていた不倫や家族崩壊などを描いて高視聴率をとり、いちやく名前が知られるようになりましたが、その後も家族や若者をテーマに、社会とのつながり方を描いて問題提起をされています(不揃いの林檎たち、、など)。

東日本大震災で日本人は、人間の力で何でも出来るということが「幻影」だったことを知りました。押し寄せる大津波になすすべもなく流されて命を落とした多くの人達を見、万全だと信じこまされていた原発崩壊の恐怖を知りました。抗いがたい自然の猛威に対する人間の無力さを思い知った今、謙虚に、静かに信じたことを継続していくことが生きる力になるでしょうということでした。

もし自分があの震災で被災して、家や家族をなくしたり流されたりしたら、どういう風に対処されるかという質問に、そうなった時は、起きたことを受け入れ、今できることを精一杯やるしかない、現実に今どうやって生きていくかということしかないのだから、と答えられました。

穏やかな中にも確固たる信念を感じさせた講演は、「静かな迫力」をもって聴衆の心ににせまったように思いました。
(2011.9.10.)

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