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不審者は誰?


アレッ??このシャツ、どうしてここにあるのん?廃棄物の袋に確かに入れたはずなのに、、首周りが擦り切れて、ボツボツと穴が開いてきたから別にしておいたのに、又洗濯機に入っている!

連れ合いの10代は戦争真っ只中、勤労動員で毎日造幣省の穴掘りや高射砲の土台作りをさせられた。そして敗戦、日本全国が飢餓と貧困、不衛生な環境の中で生きざるを得なかったあの時代に、それまでの真綿でくるまれた生活が一変し、命を維持するためには残さず食べて、大切に着るということが身に染みついたのだそうだ。物を捨てるということが出来なくなって、何かの時のために何でもとっておく習慣もきっちり身についた。

飽食と物あふれの今、新しい肌着、下着は小ダンスにいっぱい詰まっている。なのに古いヨレヨレの下着をつけて平気でいる、破れたものも一向に気にしない、むしろ肌になじんで着易いのだそうだ。

しかし、これがいつも騒動の引き金になる。妻たる者は昭和二桁生まれ、とは言っても、下着管理は妻の仕事という固定観念が残っていて消えない。破れた肌着でウロウロされるのは困る、なんとしても阻止したい、だから穴を見つければすぐに廃棄袋に入れる、すると翌日、その肌着は引き出されていて、それを着てすましている連れ合いに仰天することになる、この繰り返しバトルは結婚以来数十年続いてきて、いまや泥沼化している。

「また!!穴があいてるじゃないですか!」
「まだ着られる!穴なんてわからへんからいいんや!」

これの繰り返しで困ったあげく、少し作戦を変えた。廃棄袋に入れる前、洗濯物を取り込む時に、穴を見つけたら、すぐさまその穴に指をいれて広げ、一気に大きくひき開けるのだ。こうしておけば敵はもう着ることが出来ない。しばらくはうまく行った、しかし、敵もさるもの、洗濯物の係り?!を申し出て、穴のあいたものをすばやく取り込んで自分の引き出しにしまいこんでしまうようになった。

今日も両手を挙げた連れ合いのわきの下が大きく破れているのに驚き、目をむき、バトル再開である。

考えた結果、作戦を変更、洗濯機から引き出し、干す前に破れ目を大きくしておくことに変えた(笑)
しかし、勝敗はまだついていない。

電話がチリチリ、、、と鳴った。

「モシモシ?」

「モシモシ、○×医院ですね、今ね、お宅のお家の周りをウロウロしながら歩き回っている人を見ました!気をつけて下さいね、へんな帽子をかぶった妙なオッサンです」

「ご親切に有難う!気をつけます」

連れ合いに報告しようと部屋を覗いたけれど姿が見えマヘン、外を見てみると、色の変わった古い野球帽をかぶって、シャツ姿の男がウロウロ、、

よく見れば、この家のご主人様でございます!外に聞こえんように家に招き入れてからこっぴどく、、、

「自分の家の周りを歩いていて、不審者扱いされるやなんて、いかにケッタイな格好してはるんかよ〜くわかったですやろ!!」

ほんまにもう、、呆れて物も言えまへん、戦争はゲリラ戦に突入です。          (2005.7.10.)

  
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