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日本語力とコミュニケーション力


斉藤 孝教授の講演が浜松でありました。「声に出して読みたい日本語」の出版で、一躍有名になり、日本語ブームをもたらした明治大学の教授です。今は何も言わずにスマホを抱え込んでいれば一日が過ごせるという妙な時代になっています。でも、グローバルな方向に向かっていくという世界の潮流の中で「日本語力」と「コミュニケーション力」の大切さは無視できません。音楽や演劇でも思いや感情は伝わりますが、細かな意思の疎通は、やはり言葉を駆使することが必要です。人間が、伝えることが出来る「言葉という道具」を持っているということは、考えれば本当に貴重なことですね。

人間だけが持つこの貴重な生きるための力を高めていき、「しゃべり合う力、雑談力」をあげていくことが必要なのだという氏の主張に納得させられました。専門は教育学、特に日本語の言語能力やコミュニケーション能力を発展させるための教育に力を入れるとともに、健康や身体を大切にすることも主張され、読書方法や情報活用法、健康法などを様々な角度から提唱されています。その教育論は「齋藤メソッド」とも言われているそうです。

今の教育の現場から要請したいことは、学生達にもっと新聞を読んで欲しいということでした。月に1分も読書をしないという学生が45%もいるのだそうです、聞いているこちらが愕然としてしまいました。少なくとも新聞の社説やコラムくらいは読んでいただきたいものです、大学生ですもの、、。将来、日本の中枢で働くべき人々が、日本語を知らず、正確な日本語を話せないとなれば、これはもう亡国ですね。

「論語」や「学問のすすめ」は、敬遠せずに読むべきであり、漱石の豊かな文体や、平家物語の流れるような文章などに触れることによって「語彙」が豊富になり、その結果「言葉の引用」や「文章の要約力」が深まり、「雑談力、会話力」をあげるていく、そして結果として、コミュニケーション力がつき、クリエーティブな会話が出来るようになると主張されました。

歌舞伎18番の「白浪五人男」の「知らざあ言って聞かせやしょう。浜の真砂と五右衛門が、歌に残せし盗人の、種の尽きねぇ七里ヶ浜、、、」や、

平家物語の「願はくはあの扇の真ん中を射させたば給え。これを射損ずる物ならば、弓きり折り自害して、人に再び面をむかふべからず、、」

などを、節回しも本職はだしで音読されました。TVでときおり見かける氏の優しい印象とはちがった「せからしい早口と、回転の素早さ、演じる力」などに驚かされました。それに声が甲高く、ちょこっと「女形傾向」も持って居られます(笑)。講演は手慣れておられ、「音読」を観客に強要するなどという離れ業も演じられ、なかなか面白い展開でした。会場は爆笑と言っても良いほどの笑い声があがっておりました。かなりの「芸人」でいらっしゃいます。

雨模様で気の進まなかった講演会でしたが、終わってみれば心が軽くなったような、得をしたような気分で帰宅いたしました。日本語力恐るべし、、です。(斎藤 孝講演会から 2017.3.07.)

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