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からくり食材 
本人も変わりましたね。つい30年ほど前までは「食べることが出来たらありがたい」、と思って暮らしていましたのに、昨今は、食べ物をショーの道具にしたりして粗末に扱うようになってきました。食べ物の番組さえ取り上げておけば視聴率が稼げると思っているような各TV局に飼い慣らされ、いつの間にか一億総グルメのようになり、みんなそろって贅沢な美食評論家のごとき有様です。

そして今、高級レストランで食べたブランド牛ヒレ肉が、寄せ集めの加工肉であったとか、国産車海老を使ったという料理が、輸入エビで造ったものであったとかで大騒ぎです。ブラックタイガーと車海老の差も分からないようなら、食べる方も、偉そうにグルメなどとは申せませんわ。産地を詐称していた大手のホテルやレストランの担当者が、薄い頭を3つほど並べて下げて「スミマセンデシタ、お金はお返し致します」、、食べたお客は自分の舌のできの悪さには目をつむって、平気で返金してもらいに行くやなんて、、恥ずかしいですねぇどっちも。日本人も恥知らずになったもんです。

TV局は問題を起こした高名なホテルに記者を張り付かせて、返金要求をしにきたお客様の「お考えとお話」を、沢山お聞きすれば、さぞかし面白い番組になるでしょうに、、

「どこどこ産牛、とか、なになに海老」なんてメニュに書くからアカンのでしょう、何も書かなければ問題はおきません。しかし、この「名前」がくせ者、ブランド大好き日本人には「名前」が大事、これを表示するだけで大きな儲けを産むことを、提供者側はうんと以前からご承知なのでした。「名前つき」はなんとなく格があがるのです。

この頃は「道の駅」の野菜にも細かく生産者の名前が書いてあります。「○○さんのトマト」、、顔写真入りもありますから、しっかりした野菜のような気がします。事実これらの野菜などは高品質なのです。名前をだせば、そこに責任が生じますから、信用も生まれます、それをたよりに消費者は買い物をしてきました。

安い物を髙く売りたい、この欲望が行き着いた先が、消費者の心理に巧妙につけ込んだ「食材名の詐称」なのでしょう。ブランド名を書き出すことで何倍もの利益が生まれるのですから、、××に魂を売ったんでしょうね。

スーパーでは「北海道産」と書いた野菜が幅をきかせていますし、お米は「魚沼コシヒカリ」が必ずどこにでもあります。高級魚を扱うデパ地下などでは「関鯖、城下カレイ、大間マグロ、」などなど。輸入大国日本を考えれば、北海道産の小麦や小豆、純魚沼産のおコメがそんなに沢山溢れているはずがないのです。

お商売人はこの辺りを心得て、法律ギリギリのことをしているのでしょう。消費者もそんなことはうすうす分かっていたと思います。コンビニの安いお弁当が高い国産食材だけで作れるはずはありませんもん、、みんなが食材の基本的なことをもっと知らんとダメですね。消費者庁というお役所はなんのためにありますのんや、、しっかり頑張ってもらわんと、、

商売の専門家にかかれば、肉を軟らかくしたり、旨味をプラスしたり、輸入海老をプリプリの車海老にすることなど「朝飯前」です。こういうことしたって法にはふれません、毒を入れたり細菌を混ぜたりしているわけではないですから。ただ、これにブランド名をつけて売れば、詐欺、ですよね。

柔らかくてジューシィな肉であれば「お・い・し・い・!」、プリプリにさえすれば「やば~っ!うまっ!」とグルメリポーターが喚きます。食べ物で遊ぶということばかりが目につきます。それでも、日本の食文化が注目され、「和食」が文化遺産になるそうです。

今回の騒動を外国の人たちはどのように思っているのでしょう、戦後何十年もかかってやっと得た「繊細な旨味を感じることが出来る日本人」という評価は、? です。

今回の高級ホテルレストランのメニュ詐称は、ほんまにカッコ悪い、、いつまで経っても、日本の恥の一つとして消えることがないように思います。( 2013.11.10.)

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