Homeエッセイ目次>雛飾り

雛飾り

娘は自分の名前を気に入っていない。

親は考え過ぎて面倒になり、父親の一字をとって簡単に「ゆうこ」とつけたからだ。「ゆうこ、、良い名前やないの」と言って下さる方々はその「字」を聞いて一様に絶句しはる

だってそれは「雄子」だからだ。

大学に入った時「ゆうはどんな字かね」と聞かれ「オス、メスのオスです」と言ったのだそうだ。その先生はあきれ顔で「君ねえ、せめて英雄のユウと言いなさいよ」とおっしゃったとか、その後ずーっと「オスコ」と呼ばれっぱなしだ。

「名はたいを表す」の喩え通り、お転婆で頑張りのきく娘になり、父親と同じ職業を選んだ。実験だ、論文だとなかなか結婚しない。嫁入りなど出来るのかとのんきな親もさすがに心配になり、せめて、雛祭りが終わるや否や、お雛様をすぐ片づけるように心がけた。いつまでも出しておくと嫁入りが遅れる、と田舎のおばば様に叱られたからだ。

その娘があっと言う間に嫁に行った。

父親は大粒の涙と共に彼女を送り出した。その後はお雛様は出番すら無く、もたもたしている内に、今年も雛祭りは終わってしまい、鯉幟の季節になろうとしている。娘は今年母親になる、子供にどんな名前をつけるのだろうか、、、(2000.3.3.)

 ホーム 旅目次 エッセイ 花目次 浜松雑記帳 料理ワイン   このページのトップへ