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True Love  

One busy morning, at around 8:30 a.m., an old gentleman in his 80<s arrived to have his wounded thumb checked. He said that he was in a hurry as had another appointment at 9:00 a.m.
ある朝、8時30分頃、白髪の品の良い老紳士が一番で診察室に入ってきました。80歳代と思われる年齢でした。怪我をした親指の様子を診て欲しいとのことでした。何か急いでるようでしたので「お急ぎですか?」と尋ねますと、「9時に他の約束があるんです」と答えました。

I decided to check his wound immediately. I took his blood pressure and asked him to sit down. When I saw it, it was nearly healed so I only needed change his bandage.
まず老人の血圧を測りました。急いでいたのでしょうか、少し高めの血圧でしたが、問題にする程ではありませんでした。私は指の状態を診るために、自分の前の椅子に座るようにと言いました。
包帯を取ってみると怪我はほとんど治っていましたので、新しい包帯を巻いてあげるだけで大丈夫でした。


While I was taking care of his thumb, we began to have a conversation I asked him if he had another docker's appointment that morning, he was in a hurry to get to the nursing home to eat breakfast with his wife. I asked about her health. He told me that she had been in the nursing home for a while. and that she had Alzheimer's disease.
私は彼の親指の治療をしながら彼に尋ねてみました。何か落ち着かない様子でしたので、「これから他のお医者さんとの約束でもあるのですか?急いでいらっしゃるようですが、、」

「え~とそれがですね、、介護施設に居る妻と一緒に朝食を摂ることになっているんです」
「奥さんはお体でもおわるいのですか?」
「元気は元気ですが、ここしばらくは介護施設暮らしなんです、アルツハイマーなんですよ」(2018.1.19.)

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I asked if his wife would be upset if he was a little late. He told me that she didn't even know who he was, and that she had not recognized him for five years. I was surprised, and asked,
「あなたが少しでも遅れていくと奥さんは錯乱状態になったりするのですか?」

「いいえ、そんなことはありません、彼女は私が誰かということさえ分からないのです、もう5年間もそんな状態が続いているんです」
私はびっくりしてこう尋ねました。


"Do you still go every morning, even though she doesn't know who you are?"
「あなたが誰か分からなくても、そうやって毎朝奥さんと朝食を共にするのですか?」

He smiled as patted my hand and said, "She doesn't know me, but I still know who she is "
すると老紳士は私の手を取って軽く打ちながら、「先生、彼女は分からなくても、私は彼女が誰かよく分かっていますからね」と、にっこり笑って言いました。

I had to hold back tears as he left. I thought, "That is the kind of love I want in my life". True love is neither physical, nor romantic. True love is to accept all that is, has been, will be, and will not be.

下から見上げると、老紳士の頭に毫光がさしているかのようにまぶしく見えました。私はあふれ出ようとする涙をぐっとこらえて「お大事に!奥さんによろしく」と万感の思いを込めて言うのがやとでした。

これこそ私が人生で追い求めてきた真実の愛なのだ。人を愛するということは肉体的でもないし、ロマンチックな夢のような世界でもない、過去のこと、現在のこと、これから起こるであろう未来のこと、総てをありのままに受け入れて自分の心に忠実に人に尽くすことなのだと、彼が身をもって教えてくれたのだと、強い感慨にひたりました。(2018.1.26.)

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