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Just a Few Drops

Many years ago , we lived in a part of the country that had a dry season every year.
私たちの息子ビリーも成人して手元を離れ,胃までは大きな都会でIT関係の仕事をしているのですが、私は彼が子供だった頃の話を決してわすれる事はありません。私たちは甘利背の高くない木々があるなだらかな丘を切り開いた土地に数軒の農家の人たちとやかに暮らしていました。難点を申せば、乾期が酷いと言うことくらいでしょうか。

One year, we had not rain in almost a month. The crops were dying. The cows had stopped giving milk. The rivers and streams had all dried up. Seven local farmers would soon lose their farms before that dry season was through.
その年は特に厳しいトシで、一ヶ月以上も一滴の雨も降りませんでした。水のない小川は細い小径のようになり、あんなにも滔々と水を流していた河も今は所々に水たまりがあると言った状態になっていました。畑の作物はぐったりして地面に張り付くようになっていて、今にも枯れてしまいそうです。飼っている牛はもう何日もの間乳を出しません。もうしばらくの間雨が降らなかったら立ちゆかなくなる農家もでるのではないかという状況でした。

One day, I was in the kitchen making lunch when I sow my six-year-old son, Billy, waking toward the woods. He wasn't walking with the usual easy steps of a small child but with a serious purpose. L could only see his back. He was waking with great effort and trying to be as possible.

そんなある日のことです。私が台所で昼食の支度をしていました。見るともなしに窓の外に目をやると、6才になる息子のビリーが林の中へ入って行くのが見えました。彼の歩き方が変なんです。あの軽やかな足取りではなく何か大切な物でも運んでいるような歩き方をしています。彼が細心の注意を払い、出来るだけ静かに歩こうとしている様子は見て取れました。(2016.5.27.)

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Minutes after he disappeared into the wood, he came running back toward the house .
男の子は林の中へ入って行って見えなくなったのですが、すぐに走って戻って来ました。

I went back to making lunch thinking that whatever he had been doing was done.
そして、庭を横切ってどこかへ消えてしまいました。「あの子は何をしているんだろう、、まあいいわ、たいしたことはないだろうし、もう終わったんだから」そう思いながら、お母さんはお昼ご飯の支度に取りかかりました

But soon, he was again walking in that slow, careful way toward the woods. This went on for a while: walking carefully to the woods, running back to the house.
ところが、またすぐ息子が変な格好で現れました。なんともおかしな格好で、注意深く一歩一歩気をつけながら林の中へ』は行っていったかと思うと、全速力で戻ってきます。これを何回も繰り返しているのです。

I slipped out of the house and followed him. I was very careful not to be seen.
私は静かに家を出て、息子に気付かれないように注意しながら後をつけていくことにしました。

He had both hands cupped in front of him as he walked and was being very careful not to drop what he held in his tiny hands.
彼は小さな両手を自分の前で合わせて器を形作り、その中に大切なものを入れ、それを絶対に落とすまいと注意して運んでいるようにみえました。

Tree branches hit little face but he did not try to avoid them.
小さな枝が彼の顔に当たりましたが、よけようとはしません、そのまま前へ進んで行きました。

Then I saw several large deer standing in front of him. Billy walked right up to them.
ビリーの目の前に鹿の群れが現れました。ビリーはその方に向かって進んでいきました。

A huge male was very close.
ビリーはリーダーと思われる大きな角を持った雄の鹿の方へと歩いていきました。

But the deer did not threaten him; he didn't even move as Billy sat down. And I saw a tiny baby deer lying the ground, clearly and tired from the heat. It lifted its head to lap up the water cupped in Billy's hand.
その鹿のすぐ前までビリーは近づいていきました。しかし鹿は頭を動かすこともなくじっと立ったままでした。ビリーはその大きな鹿のすぐ横でひざなづきました。するとどうでしょう、あおこには小さな赤ちゃん鹿が横になっていました。頭を地面につけてハーハーと荒い息づかいをしています。日照り続きのカラカラの大地で喉を潤す水もなく、容赦なく照るつける日光を避ける木陰でやっと生きながらえている様子でした。ビリーは赤ちゃん鹿の前に手を伸ばしました。赤ちゃん鹿は頭をもたげ、ビリーの手の中にある水をピチャピチャとなめました。指についた小さな水滴まで舐め採ろうと舌を動かしました。

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When the water was gone. Billy jumped up and ran back to the house, to a water faucet that we thought we had turned off : Billy opened it and small amount of water began to come out. He waited , letting the water slowly fill up his cup . And then I understood. He had gotten in trouble the week before for plying with water. We had lectured him about the importance of not wasting water.
手に着いた水がすっかり無くなると、ビリーはパッと立ち上がり、急いで家へと駆け戻っていきました
。ビリーは家に着くとすぐに水道の所へ行き、使えないように止めてあった蛇口をギュット力一杯捻りました。細い一筋の水が流れ出てきました、ビリーは急いでそれを手のカップで受け止めました。手のカップが一杯になるまで身動き一つせず、じっとしていました。ようやく水が溢れるようにたまりました。みていたお母さんは事の次第を理解しましたが、気に掛かることが一つありました。と言いますのは、数日前のことです。ビリーが大切な水を無駄にして遊んでいたので、母親は夫と共にそれがどんなにいけない事かをこんこんと言い聞かせるということがあったのです、それなのに今ビリーが水を、、、という思いもあったのです。

After filling up his cup, he somehow turned off the faucet by his using his elbow. When he stood up and began the journey back , I was there in front of him.
するとビリーは肘を器用に使って蛇口を止めました。それからゆっくりと立ち上がり、ソロソロと林の方へ歩き出しました。

I was there in front of him. His little eyes filled with tears.
" I'm not wasting," was all he said.

前に母親が立っていることにも気がつきません、突然現れた母親の姿にびっくりしてビリーは立ちすくみました。

「僕、、遊んでいるんじゃないよ、、」やっとのことでビリーはそう言いました。
(2016.6.10.)

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I joined him with a pot of water from the kitchen. I let him tend to the baby deer.
母親は台所へ行ってポットに水を入れて戻って来ました。
「さあ、これを持ってお行き、そして子鹿にいっぱい、いっぱい飲ませておあげ」
ビリーの顔がパッと輝きました。


I stood at the edge of the woods watching him working so hard to save another life.
「お母さん、有り難う」そう言ってビリーはポットを受け取ると小さな足にありったけの力を込めて弾むように駆けて行きました。お母さんはその後をゆっくりとついて行き、木のかげからビリーの様子を嬉しそうに見守っていました。

As the tears that rolled down my face began to hit the ground, they were suddenly joined by other drops,,, and more .
他の命を救おうと小さな身体で懸命に世話をしているビリーをじっと見ているお母さんの目から大粒の涙がこぼれ落ちました。
その時です、思いも寄らぬ事が起こりました。ひと粒、ふた粒、ポツポツと雨が降ってきたのです。私は空を見上げました。私の顔にも雨粒が当たりました。
「おお、神様」私は顔をぬぐおうともせず、天を仰いで神に感謝しました。


Some people will probably say that this didn't mean anything, that miracles don't really exist, that it was bound to rain sometime. And can't argue with that . I'm not going to try . All I can say is that the rain that came that day saved our farm ,,, just like the actions one little boy saved another living creature.

「奇跡が起こったのです」
人々は奇跡なんかじゃない、雨は降る時期にきていたのだというかも知れません。私はそれに反論する気は毛頭ありません。議論しようとも思いません。ビリーが小さなひとつの命を救ったように、神様が私たちの命をお救い下さろうとしているのです。
数日後、牧草は青々と芽を吹き、十分な水を得て、家畜たちは元気を取り戻しました。畑の作物も例年のように育ち始めました。村は救われました。
村を救ったのはビリーだと、私は今でも思って居ます。(終わり)2016.6.17.

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