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One Inch  

今から千年以上も前のお話です。その頃、天子様は京の都に住んでおられました。京には賀茂川が北の山からいくつかの村々を抜けて田畑の間を通って流れ下っています。

Once upon a time there was an old man and an old woman .

澄んだ水をいっぱいに湛えた賀茂川の上流の山あいの村に、お爺さんとお婆さんが住んでいました。

They loved children very much .but never succeeded no matter how often they went to the village temple to pray .

二人には子供がありませんでした。神様もちょっと意地悪なんですよ、、あまりにも二人は仲が良くて、何をするにも一緒でしたので、神様が願いを聞き届けてくれなかったのです。お爺さんもお婆さんももう60を越すトシになっていました。

"Pleas give us a child " they said, even though they were now very old.
"Even if it's only very small, even if it's only the size of a little finger."

半分は諦めていましたが、それでもなお神様の前に立つと、若い頃と同じようにお祈りをするのです。
「子供を授けてください、小さな子供でもいいですからどうぞ二人に子供をお授けください」神様は二人があんまり熱心にお祈りをしますので、かわいそうに思って、願いを聞き届けてあげました。

And then one day , the gods took pity on them.
"My dear " the old woman said to her husband.
"I am pregnant".

お宮にお参りして2、3日のことです。お婆さんはお爺さんに真顔で言いました。
「子供が出来たみたいですよ」

The old man 's eyes widened in surprised . His wife was, after all , over 60. He gave a great cry of joy and started dancing around his wife.

お爺さんは目をまんまるくしてびっくりしました。それから「ばんざ~い!」と大声ではしゃいでお婆さんの周りを飛び跳ねて回りました。 (2014.7.25.)

So the old woman gave birth to a boy - a very small boy, who was only the size of the old woman's little finger.

しばらくして男の子が産まれました。その子はとても小さくて、お婆さんの指ほどの背丈しかありませんでした。

"Don't worry," said the old man. "He 'will grow".

「心配ないよ、すぐに大きくなるよ」お爺さんはお婆さんを慰めてそう言いました。

But the little boy did not grow. He remained the size of a little finger, about one inch tall. Even sat the age of five, even at the ten, he was still one inch tall. His name became "One Inch."

ところが、その子はいつまで待ってもおおきくなりません。五歳になっても背丈は一寸ほどしかありませんでした。十歳でもそのままでした。

人々は彼を一寸法師と呼ぶようになりました。 (2014.8.01.)

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He was a handsome boy , always eager to help his parents. But because he was so small he could not help the father with the work on the farm or his mother with the work in the house . And the other children used to tease him for being so small.

一寸法師はとても畏い子どもでした。そしてお爺さんの野良仕事やお婆さんの家事の手伝いをして助けてあげたいといつも考えている優しい子でもありました。
悲しいことに一寸法師の背丈はいつまでたっても一寸ほどしかありませんでしたので、思うように働くことができません、おまけに体が小さいということだけで、自分より年下の子供にまで馬鹿にされ、「ヤ~イヤ~イ!ちびっこヤ~イ」とからかわれていました。

When One Inch was 15, he went to his parents.

一寸法師が15歳になったとき、思いつめたような顔つきでお爺さんとお婆さんのところへやってきてきちんと正座してこう言いました。

"I love you very much ." he said , " but I am not happy here . I cannot help you as much as I would like. So I have decided to go to the capital, where I will serve a lord and gain his favor and became very rich. If I am rich, I will be able to help you . please let me go ."

私はお父さん、お母さんが大好きです、私は体が小さいために思うようにお手伝いすることができません、それがとたも辛いのです。私が都へ行ってみたいと思います。そしてそこでお殿様にお仕えし、お殿様に気に入られるように働いてお金持ちになりたのです。お父さんお母さんを楽にして差し上げたいのです。
どうか私を都へ行かせてください。(2014.8.8.)

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"But the road to the capital is very dangerous," said the old man, "especially since you are so small. And once you are there, who will notice you? ".

「そうは言っても、都への道は危険だぞ、それにお前は身体が小さすぎる、どこにいるのかもわからないじゃないか」
お爺さんは少し強い口調で言いました。


"I'm good with a sword, and I can sing and dance".
His parents did not want him to go , but in the end they agreed.


「僕は剣も上手だし、歌も踊りもうまいから、大丈夫だよ」
一寸法師の決心は変わりません、おじいさんもおばあさんも一寸法師を都へ行かせたくなかったのですが、とうとう許すことにしました。


"Now, here are three things from your mother and me, said the old man.
"A needle, which you can use a sword, an bowl, which you can use as a boat, and a chopstick, which you can use as an oar."


「それではわしら二人からお前にあげたいものが三つあるから持って行きなさい、この針は剣として使いなさい、お椀はお前を乗せる舟になるだろう、箸は櫂として使いなさい」

"Go by the river", said the old man. "It is the safest way."

「 おワンの船で川を下って行きなさい、それが都への一番安全な道だからな、気をつけて行くんだよ」

"Thank you , father . Thank you, mother. I will make you proud of me,"
So One inch said good - bye to his parents and left the little village.

「お父さん、お母さんありがとうございます、僕はお父さんとお母さんの自慢の息子になれるように頑張ります」
そう言って、一寸法師は自分の生まれた小さな村から旅立って行きました。(2014.8.22.)
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As the old man had said, the journey to the capital was dangerous. The river was fast, there were waterfalls and rapids,

お爺さんに言われた通り、都への旅は危ないことばかりでした。川の流れは速く、渦巻く激流、おまけに危険な滝まであって、お椀の舟の一寸法師にとってはそれはそれは危険な旅になりました。

and One inch had to be careful not get eaten by the birds. But he had chopstick to steer his bowl and his needle to fight off the birds, and so he managed to travel quickly and safely.


一寸法師は箸の櫂をうまく使って、危ない場所を一つ一つのりこえて行きました。あるときは大きな鳥が一寸法師を食べてしまおうと大空から襲ってきました。一寸法師は針の刀で襲ってくる鳥の目を狙って大きく腕を伸ばします。目をやられてしまっては大変と鳥は諦めて飛び去って行きました。
大変な思いをしながらも、一寸法師は都への旅を続けて行きました。(2014.8.29.)

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After a week on the river , he noticed more buildings on the banks. Then there were more boats , and soon he was going under a huge bridge, over which there passed more people than One Inch had ever seen in his life.

十日ほど経ちますと、川の両岸に家がたくさん見られるようになりました。船の往き来も激しくなってきました。一寸法師のお椀の舟は大きな船の立てる波にゆられて危うげに見えますが、一寸法師はそんなことにはおかまいなく珍しげに辺りをキョロキョロ眺めています。

お椀の舟は大きな橋のところまでやってきました、橋の上を大勢の人がわたっています。仕事着を着たひとたちが荷物を抱えて足速に行き来しています。重そうに荷車を引いている人もいます。着飾った女性も渡っていきます。牛車がやってきました。一寸法師は生まれて初めて見る光景に心を奪われて眺めています。

One Inch steered his bowl to the bank and entered the town, dodging the feet of the townspeople as he passed through the crowded streets.

一寸法師は土手にお椀の舟を着けると土手を上がっていきました。人通りの激しい通りを人の足に踏み潰されないように気をつけながら賑やかな方へ歩いて行きました。

"Where will I find a wealthy lord ? " he wondered. He saw a carriage passing by , pulled by great ox. That looks like a rich person's carriage."


「どうしたらお金持ちのご主人様を見つけることができるのだろう、、」一寸法師はそんなことを考えながら歩いていました。向こうから力の強そうながっしりとした体つきの大きな雄牛に引かれた見事な牛車がやってきました。
「あっ、これだ!」この牛車についていけば立派なご主人様に会えるにちがいない、そう思った一寸法師は牛車の後についていきした。 (2014.8.5.)

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He followed the carriage out of the town to a large house. There the carriage stopped , and out of it stepped a beautifully dressed girl wearing a veil. She quickly disappeared into the house.

牛車は賑わいの中を通り抜け、町外れまでやってきました。そこには壮大なお屋敷があって、牛車は大きな門を入っていきました。
一寸法師は走るようにしてその後を追いかけていったのですが、誰ひとりとして一寸法師に気づく者はありませんでした。中から美しい装いのお姫様が降りてきました。頭に打衣を被り、ほんのりと薄紅色のお顔が少しだけ覗いています。お姫様は足速に家の中へと入ってしまわれました。


One inch entered after her.

一寸法師はポカンと口を開けて眺めていましたが、ふと我に返ると「そうだ!ここに決めた!」と呟いて玄関に入って行きました。

"Is anyone there ?" he called.


「頼もう!お頼み申~す!」一寸法師は大声で呼びかけました。(2014.9.12.)
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A servant appeared and looked around. He did not see One Inch.

召使が現れました。辺りをあちことと見回しましたが誰もいません。

"I thought I heard someone call," he said , scratchings his head.

「はてな、、誰か呼んだように思ったんだが、、、」召使はブツブツ独り言を言いながら頭を掻きかき中へ戻ろうとしました。

"Down here, next to the shoes."

「ここですよ!履物の横ですよ!」召使が目を凝らしてみると、ちいさなちいさな男の子が上を見上げて叫んでいました。

The servant looked, screamed and jumped into the sir.

"It's a demon ! " he yelled "Get away form me . "

「何だあれは!化物だ!」召使はびっくりして飛び退きました。(2014.9.19.3)
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"No, my name is One Inch, and I have come to offer my services to the lord of this house".

「違います!ちがいます!私は化物なんかじゃありません!一寸法師です、体が小さいのでみんなにそう呼ばれています。私はこの家のご主人様にお仕えしたくてやってきました」

"What is all this noise ?" said another man, coming to the door.

「何を騒いでいるんだ?」そう言いながら立派な身なりの男の人が奥から現れました。

" I am the lord of this house. What do you want"
"I want to serve you , my lord ," said One Inch. bowing.
「私はこの家の主だが、お前の望みは何だ?」
(お殿様は驚いて声のする方を見ました)


The lord looked surprised. He picked One Inch up in his hand.

一寸法師ののぞみを聞いたお殿様は、一寸法師をひょいとつまみ上げると、自分の手のひらの上に乗せました。

"What a funny little man you are , " he said.
"so what can you do ,then ?

「お前はなんとチビなんだ、そして何ができると言うんだ?」お殿様はしげしけと一寸法師を眺めてそう言いました。

"I can sing, I can dance, I can sword ," One Inch said, swinging his needle around. The lord laughed loudly.

「私は歌うことができますし、踊りだって踊れます、それに剣も使えます」そう言って一寸法師はお殿様の手の平の上で針の剣を振り回して見せました。

"Excellent, excellent, " he said.
"I like you. You will make an excellent servant for my daughters . Now , come with me."

「わっはっは、わっはっは、、面白いやつだ、気に入ったぞ」お殿様は大笑いをされました。それから真顔になって「そうだ、お前を娘の特別な家来にしてやろう、付いて参れ」そう言ってすたすたと中へ入って行きました。一寸法師は急いでそのあとを追いかけました。 (2014.9.26.)
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The lord's daughter gave a cry of delight when she saw One Inch . She picked him up and pressed him to her cheek.

お姫様は「まあ~」と嬉しそうに声を上げました。そして一寸法師を手のひらに乗せて頬ずりしました。

"Thank you , father," she said . " Thank you".
So One Inch became the servant of the lord's daughter. He sang and danced for her, he helped her prepare ink for her letter, and he even agreed to play dolls with her. They soon became best friend.


「まあ、、なんて可愛いんでしょう」お姫様は嬉しくてたまりません、一寸法師はお姫様のために歌ったり、踊ったりしてみせました。人形遊びをするときもいっしょにお相手をしました。お姫様が手紙を書くときは筆と墨を用意しました。

このようにして一寸法師は、まい日、毎日お姫様と一緒に過ごしました。そして二人は仲のいい友達のように、心を通わせることを日々かさねていきました。(2014.10.3.)
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Then one day , the lord's daughter went to the temple in her carriage. One Inch went with her, together with ten bodyguards.

そんなある日、お姫様は一寸法師をお供に連れて、牛車に乗ってお寺参りに出かけました。牛車の周りにはとても強そうな男たちが10人も護衛として付き従っておりました。

On their way home, they met two huge trolls -- one blue, the other red.

無事にお参りを終えた帰り道のことです。突然二匹の大男が現れました。赤鬼と青鬼です。

"You have a beautiful girl in there," growled the red troll. "Hand her over " .

「そこにきれいな娘がいるだろう!俺たちに渡せ!」赤鬼が怒鳴りました。

The guards drew their swords and charged at the trolls. The girl watched terrified from the window of the carriage. The trolls laughed and , using their spiked clubs, they quickly killed all ten of the guards.


護衛たちは一斉に刀を抜いて男達に切りつけました。
「ワッ ハッ ハッ ハッ、、」鬼たちは高笑いすると、大きな鉄の瘤と鉄釘を打ち付けた太い金棒をブンブン振り回しました。金棒に打たれて、護衛の男たちはぶっ飛ばされて血を流して倒れたままもうピクリとも動きません。瞬く間に10人の護衛たちは殺されてしまいました。 (2014.10.17.)

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"We can eat latter ", said the blue troll.
"Fast, let's get girl".

「こいつらは後回しにして、まず娘から食ってやろう」と青鬼はこともなげに言いました。
"Stop right there ", cried a tiny voice from the ground.

「待て!」小さいけれど鋭い声が地面の方から聞こえてきました。

"Put down your weapons and I will spare your miserable lives".

「金棒を捨てろ!そうすれば命だけは助けてやる」 その声は続きました。二匹の鬼は声のする方を見ました。一寸法師が針の刀を振りかざして仁王立ちして鬼たちを睨んでいます。

The trolls looked down and saw One Inch. They both burst out laughing .

「プッ!」二匹の鬼は吹き出してしまいました。

"What is midget ?" said the blue troll.
"Watch this," said the red troll, and he picked up One Inch, dropped him into his mouth, and swallowed him whole.

「何だ、このチビは、、」そう言ったかと思うと、赤鬼は一寸法師をつまみあげて手の平にのせ、パッと口の中へ放り込み、ゴクンと飲み込んでしまいました。

"One Inch , no ! " screamed the girl.

「あっ!一寸法師が、、、」お姫様は悲鳴のような声をあげました。

Now , let's get the girl," said the red troll, but as he said this, he bent over in pain.
"Yeow, my stomach, yeow."


「今度は娘を食うことにしよう」そう言ったとたん、赤鬼は体をエビのように折り曲げてかがみ込んでしまいました。

「ゲオっ、、俺の胃が、、ゲオっ、、」喚きながら転げまわって苦しんでいます。(2014.10.24.)


One inch was in the red troll's stomach , stabbing its sides with his sharp needle.

赤鬼に飲み込まれた一寸法師は針の刀でところ構わず胃の壁を力いっぱい突き刺しました。

Then the red troll's mouth flew open , and One Inch sprang out and onto the blue troll's face where he stabbed the troll in the eye. The two trolls ran away screaming .

赤鬼は口を大きく開けて一寸法師を吐き出しました。飛び出した先は青鬼の顔でした。一寸法師は青鬼の睫毛をしっかりとつかみ、片方の手に持った針の刀で青鬼の目をブスリブスリと突き刺しました。鬼はたまりません、「ギャッ」と悲鳴にも似た声を上げて逃げ出しました。一寸法師は青鬼の顔からヒョイと飛び降りました。

" One Inch , you have saved my life," cried the lord's daughter .

「ありがとう!一寸法師!、お前は私の命の恩人です」
やっと人心地に戻ったお姫様は一寸法師をすくい上げるようにして手の平に包み込み、こう言いました。


"look they've dropped something , " said One Inch .

「お姫様、鬼たちが何か落としていきましたよ」一寸法師は美しい小槌のようなものを見つけてこう言いました。

"It's a wishing mallet, said the girl, picking it up. She started to shake it,

「あれはきっと打出の小槌ですよ、なんでも願いが叶うという打出の小槌の話を聞いたことがあります」


"I wish One Inch was the size of a normal man, and that he will be my husband, and that we will live happily ever after ".

お姫様はその小槌を拾い上げると「一寸法師よ大きくなあれ、大きくなあれ」
と言いながら打ちふりました。すると何ということでしょう、一寸法師はグングン大きくなって、立派な男になりました。それからお姫様は一寸法師が私の夫になって、二人で末永く幸せに暮らすようにと祈りを込めてもう一度小槌を振りました。(2014.10.31.)

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In a few seconds, One Inch had grown to the size of an ordinary man. In a few hours, the two had returned to the lord's house and were marred with her father's blessing. And soon they were living happily ever after.

一寸法師の背丈はグングン延びて、すぐに大人の男と同じ背丈になりました。打出の小槌の力は素晴らしくて、一寸法師の身につけているものまでも変えてしまいました。そこにすっくと立っている男は姫の願った通りの公達でした。

二人は連れ立って御殿に戻りました、そして、事の次第をお殿様に話しました。
お殿様は娘を救った一寸法師に感謝しました。姫は大好きだった一寸法師のお嫁さんになりたいと頬を赤くしてお父様にお願いしました。

殿様に異存はありません、どこの公達にも及ばない息子ができて大喜びです。佳き日を選んですぐに婚礼の宴が盛大に開かれました。
それから後、二人は末永く幸せに暮らしました。 終わり (2014.11.07.)


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