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日本人のギャルソン


日本人の若いウエイターがパリの有名カフェのギャルソンに採用されたというコラム記事を読んだ。たかがコーヒーを運ぶ係りじゃないか、と言うのはマチガイのようだ。ピカソやサルトルにも愛された歴史と伝統あるそのカフェはでは、ギャルソンの採用基準が厳格で、19世紀から「右利きのフランス人」という条件を長い間守ってきたという。そこへ東洋人の31歳を登用したということだからニュースにもなろう。れっきとした専門職なのだ。

大学卒業後、アルバイトで入った日本のカフェでウエイターをしてノウハウを磨き、さらなる上を目指してパリに渡った彼は左手と右手を使い分ける技と身のこなしでフランス人を圧倒し、高齢で引退した老ギャルソンに代わって抜擢されたのだそうだ。

左手には銀盆をささげ、右手では伝票や代金のお釣りをポケットから瞬時に取り出す必要があったため、左腕には筋肉がつき、右手の指は繊細さを増したとか、スゴイことである。
日本のようにレジ係が特別にはないことが多いフランスのカフェでは、支払い関連の仕事も大きなウエイトをしめるのだろう。多分このあたりに彼の出番を開いた鍵がありそうだ。物を買った時、瞬時にお釣りを暗算できるのは日本人の特技、これを武器にして自分の特性を磨き上げていった31歳の若者にエールをおくりたい。

外国に住み、その国独特の仕事で日本人が名をあげることは現地人の3倍の努力がいると聞いた。天性のしなやかな肢体と運動神経、それにフランス人におとらない顔つきと身のこなし、発音の難しいあのフランス語の会話、そして「気配り」。

売り上げた飲み物の15%とチップの収入は、同じ年頃の商社マンの給料を凌ぐという。若いうちにしっかり頑張って、いい結婚をして、豊かな老後を過ごしてほしい。くだらないニュースばかりの日曜日の新聞記事で一番の読み物だった。

じっくりとヨーロピアンコーヒーでも、お淹れしましましょうか、、ハンサムなギャルソンではありませんが、オババがお運びいたします(笑)
(2005.9.4)

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