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不運なジジババ  
 
西伊豆の海岸にある戸田港からの富士山が美しいと、どこかから聞いてきた連れは、戸田港へ出かける気満々になっていました。そこから以前行ったことがある堂ヶ島の「蘭の里」までなら簡単に行けると言ってきかないのです。この人の「簡単」には、何度もひどい目にあわされているのに、懲りないおババはうっかりとこの誘いに乗ってしまったのですから、今更グチを言ってもはじまりません。不運きわまりない日がスタートいたしました。

150号線の「苺街道」を抜けたあたりで、渋滞で苛ついていたジジは、道路が少し空いたと見るや、勢い込んでスピードを出しすぎ、5年ぶりに静岡県警の「網」に、まんまとひっかかったのでゴザイマスぅ〜(笑)。時代遅れの無線探知機はボケボケで、捕まってしまってから、ピピーッと騒ぎ立てておりました。

違反スピードで稼いだ僅かの時間は、県警が河川敷にしつらえた取り調べ机での書類書きで、はかなくも消えてしまったのです。違反罰金で不機嫌になってしまった運転手爺は、運転がだんだん荒くなっていきました。

西伊豆の土肥を経て蘭の里までの海岸道路17号線は、平坦ではなくて山越えばかりの細い道でした。出発前に見た地図は道路地図でしたから、道の起伏は解りません。行けども行けども山と海の境目の細い道が続きます。思いのほか時間をとられます、あせったジジ運転手は、途中にある眺めの良い見晴らし台や、有名な名所である「恋人岬」などにはまったく目もくれません、なんのためにこの細い海岸べりの道を選んで走っているのでしょう。海も岬も見ようともしないで、ひたすらジグザグの山道を走り続けます。まるでラリーのようにタテヨコに振られっぱなしの助手席は、遊園地の飛行機のようでした。乗り物に強いことが取り柄のおババもさすがに無口になってしまいます。

出発後4時間もかかって、ようやくヘロヘロと閉館30分前の「蘭の里」に着きました。朝から晴天だったにもかかわらず、ここまでの道中で駿河湾の向こうに見えるはずの富士山は、山際にわいているたっぷりの雲をかぶりっぱなしで、一度も顔を見せませんでした。おまけに、「蘭の里」は花の時期にはまだ早く、ショボショボの胡蝶蘭が済まなそうに首を垂れていました。

もう来た道を戻る気はしませんから、帰途は土肥から修善寺方面に道路を変えて、少し出来ていた高速自動車道を走り、沼津にぬけることを強引に主張しました。夕方近くなって空模様が悪くなる気配です。嫌な予感は見事に当たり、三島あたりで真っ黒な雲の真下に入ってしまいました、激しいにわか雨です(笑)。その大雨の最中、そこだけ薄明るくなっていた山際に、朝から一度も姿を見せなかった富士山がグレーのシルエットになって、ドーンという感じで大きく出てきたのです。墨色の富士山という素晴らしきオマケまでついてきたのですから笑います。

何も食せず走り続けた挙げ句の果てに、空腹を我慢してたどり着いた清水のお寿司やさんは「本日 定休日」!!・・・

準備検索がなっていないのです。行き当たりばったりの癖は直りません。交代運転手婆は、助手席でふて寝をするジジの大鼾を聞きながら、東名をひたすら走り続け、ヘロヘロと浜松にたどり着きました。不運三隣亡の老人夫婦の一日。あ〜ぁ、アホらし、バカバカし、、(2011.3.03.)
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