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ラテンに浸りながら

10年目の節目の年になったということを、地震保険の更新通知で知り、うっかりと毎日を過ごすなどという贅沢は言っていられないのではないかと思いました、もう猶予はあまりないのかもしれません。焦りにも似た気分に苛まれていると言ったら大げさでしょうか。やり残した多くのこと、訪れそこねた外国、見たかった風景、そんなことを思えば、未練ばかりで、煩悩の鬼ババァのようです、見苦しいこと甚だしいですね。

とりあえず、1週間前に行われた卒後54年目の同窓会の写真を切り貼りして、フォトストーリーに仕上げるための最終作業、BGMの設定にかかりました、などと言えば大袈裟ですが、これがなんとも面白いというか面倒くさいというか、楽しい仕事なのです。そんな相反したような気持ちでパソコンにしがみついてから2日、画像のタイムライン配置を終え、字幕をつけ、最終の音入れ作業になりました。

「ラテン」のCDから、同世代のジジババが気に入りそうな音をさがします。思いがけず久しぶりにラテンのCDを長時間聴きました。同居じじぃはクラシック一点張りで、ラテンなんぞは音楽と思っていないという偏屈者ですから、自室で音を絞って試聴を繰り返します。ラテンは大音響のフルオーケストラで聴かなくては雰囲気が出ないのですが、そうもいきません。ペレスプラードのオーケストラで「マンボNO5」を絞って流しながら、もう少し静かなタンゴ風の曲を選んでセットしてみます。♫ウ~ッ!ハッ!!♬

♪♪なんといういいリズムなのでしょうか、タンゴにつきものの楽器 Bandoneonです。アコーディオンをうんと複雑にしたようなこの楽器は、「悪魔が作った楽器」と言われる程演奏が難しいのだそうです。膝に乗せて蛇腹を引いて高い音を出しながら空気を抜きつつ蛇腹を戻すなどという大変な作業をします。タンゴの鋭いキレの良いスタッカートは、この膝を動かしながら蛇腹を瞬時に引くことによってひき出される、などと聞くと、ただただ感嘆、往年のピアソラの雄姿を思い出してしまいます。

1840年代に、ドイツのハインリッヒ・バンドという人がパイプオルガンの代用として、外へ持ち出せる楽器を考え、作られたのだそうですが、ドイツ人と聞いたとき、いかにもドイツらしい緻密な楽器だと思いました。それがタンゴという真逆な感じがするラテンの音楽によって花開き、演奏され続けてきたといことが不思議にも思えます。ともあれ、バンドネオンに浸りながら半日が経ちました。

15分たらずのDVDは、ラテンを2曲をBGMにして完成です。「すぐやる課」の課長たるおババは、大車輪で発送を終えました。すぐに皆様のお手元に届きます、速いだけが「取り柄」ですから、、

来年は卒業55周年、同窓会もそろそろ終わりにして、盛大に有終の美を飾ろうではないかという世話人の提案に、思わず頷いてしまった老同窓生たちでした。大学の建物のうち、古いレンガ作りのものは「文化財」となり、新しく作られた建物の林立するキャンパスにはもう昔の面影はありません。それでも、運転手さんが気をきかせてスピードを緩めてくれたタクシーの窓にしがみついて赤レンガの思い出を探したのは、若いことに気付いていなかったあの時代が、みんなにとって一番輝き、煌めいていたからなのでしょう。

DVD お楽しみ下されば嬉しいです!
あちこちの不備には目をつぶってこだわらないでくださいマセ。

そして皆様、どうか来年まで元気でいてくださいね! (2015.5.27.)
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