「スーパーフライSuperFly」のこと
当時の黒人のスラングで「最高にクール」という意味のレコードを72年にカーティスは同名の映画のサウンドトラックとして発表した。当時いわゆるブラックムービーが多く作られ黒いジャガー」などキャスト・監督ともに黒人の手によるもので、否応なく黒人固有の文化が描かれることになり、白人との価値観の違いをあためて知るという意味では興味深い。
さてこの「スーパーフライSuperFly」だが、主人公であるニューヨークのコカインの売人を客観的に今ある事実として描いている。映画の中でカーティスを見ることもできるが、そのカーティスはこのサウンドトラックはコンセプトアルバムとしても大変すぐれていると思う。映画を見なくても十分に楽しめる完成度の高いレコードだ。
このレコードの中でも聞くことができる、カーティスのちょっと鼻にかかったファルセットとワウのかかったギターは70年代のソウルに少なからず影響を与えた。加えてリズムも都会的でありながらブラックミュージックならではの匂いを強烈に発している。全体のアレンジもストリングスとホーンが緊張感を構成した。
その後、このサウンドトラックの成功により多くのアーティストのプロデュースを担当することになる。グラディス・ナイト&ザ・ピップスの『クローディーン』、アリサ・フランクリンの『スパークル』、ステイプル・シンガーズの『レット・ドゥ・イット・アゲイン』などだが、どれも作曲からギター演奏、プロデュースをこなしカーティスの持ち味がよくでている。