ロシア原子力潜水艦沈没のドクメンタリーフィクション      2000/9/20

  今回の事故を、新聞テレビ情報を利用して、想像たくましくして、事故時のド キュメンタリータッチのフィクションで、潜水艦設計の経験を駆使して書いてみ ました。

   ご存知だと思うが、潜水艦の船体は非耐圧の外殻と、耐圧の内穀が有る。内穀は、それぞ れ耐圧横隔壁を持って、9つの耐水圧区画が縦に並んでいる。この最新潜水艦の限界潜航深度が500mに近いと云われている ので、内穀強度は巨大なはずだ。

事故の状況は:

   まず最初に、最船首区画の前部発射管室内部で大きな爆発があった。
   艦は当時は潜望鏡深度で、演習中であったので、内穀の横隔壁付き耐圧扉は、常 識的に前から後ろまで全て開放されていた。 当然、横隔壁耐圧扉を、艦内爆発と言う非常事態を察知して閉鎖する前に、巨大な衝撃波が、密 閉状態の艦内最前部から最後尾まで走った。

  この時点では強力な内穀強度から考えて、内穀は損傷を受けなかった可能性もあ るが、最前部の内穀は一部引き裂かれたかも知れない。 衝撃波の大きさにも依るが、前中後部にある出入口耐圧ハッチは、対外圧の耐圧 設計にはなっているが、大きな内圧衝撃波で、機構的な損傷を受けた可能性はあ る。
  当然、室内のハイテク機器、各種重要機器に損傷を与えたことでしょう。問 題は、潜望鏡を始め艤装品の耐圧隔壁貫通金物が多数有りこれらが損傷を受けれ ば、小さくても水密が保てず、浸水が開始した。船首部での浸水量は相当な量であった。
  密閉室内の衝撃波爆風で、乗組員に多数の死傷者が出て、艦はコントロール機能も失ったようだ。ダメージを受けなかった 乗組員が懸命の救難処置を講じようと努力したが、暗闇の中で、刻々と浸 水が進み手の施しようがなかった。
  原子炉のオペレータは、覚悟の上で最後の判断をして、原子炉のエマージェンシートリップボタン(非常停止ボタン)の蓋を開けて、決死の思いで押した。動力源が無くなると云うことは、乗組員全員の死を確定することであるが、後の放射能汚染を防止しようと考えた。
   60度ヒールの艦内には、部分的に空気が滞留していた可能性はあるが、冷たい 海水に浸かり、暗闇の中で、保温服も着れない人間の生存能力には限界があった。

   二次大戦時の一部の日本航空母艦で、格納庫内のガソリン混気、火薬への引火で 自爆した例に似て、対内部からの攻撃には充分な防御体制はなかった。
   このシナリオには、ロシア軍部は反発しているが、艦対艦の衝突であれば、潜水艦の 強度と、訓練された乗組員の防水体制への移行時間を考えた時、あのような全損 状態は考えにくい。
  ノルウエーの潜水員は多分、内圧によると思われる船体構造/艤装品の変化を見 たはずだ。多分船首部に於いて顕著であったであろう。 浸水が早い船首が沈降して海底に衝突したと思われるが、深度100mの海底で、船長約150mでは 約40度トリム(前後傾斜)で船首が海底に到達するので、移動距離のイナーシャから見ても それ程大きな力が掛かったとは思われない。外殻はダメージを受けると思うが、 潜水艦内穀の強度から考えれば、Titanicのように、沈没時の縦強度、海底に衝 突した力で船体が大きく損傷を受けるとは考えられない。
  魚雷は、少しぐらいの衝撃力では起爆しないようになっているので、どのような 欠陥があったのか想像できない。巡洋艦の訓練中のミサイルが命中したとの説も あるが、訓練中は実弾は付けないだろう。考えられないが、もしサブロックのよ うなミサイルで、実弾が装填されていれば、可能性はある。魚雷の燃料ガスが艦内で漏れて、これに引火し、このエネルギーで魚雷の火薬が爆発した可能性が大きい。

   このシナリオの基になっている事実に対し、新たな事実が判明すると言うか、報 道されれば、このシナリオは変わることになります。