調査の目的と課題



 近代のハワイを考える上で、砂糖きびプランテーションの果たした役割は重い。プランテーションは、白人農業資本の成長の基盤だったし、カメハメハ王朝の盛衰の影にも、砂糖の輸出入をめぐる国際問題があった。また、日本人移民をはじめ、多くのアジアからの移民を受け入れたのもこの砂糖きびプランテーションだった。

 19世紀末のハワイ砂糖きびプランテーションの労働者キャンプ

 ハワイ諸島の中でもカウアイ島は、この砂糖きびプランテーションの形成がもっとも早い時期から行われた島である。そこには、プランテーション・キャンプを中心に独特のコミュニティが形成され、人々の生活を支えてきた。今日でも、この地域で暮らす人々の多くは、移民の子孫である日系やフィリピン系の二世三世の世代であり、彼ら自身もかつてプランテーションで暮らし、働いた経験を持っている。

 今日、これらプランテーションは、ハワイ砂糖産業の衰退によってその役割を終えつつあり、そこに営まれてきた地域社会も住民の高齢化や人口の減少を迎え、離島固有の社会問題を抱えている。また、砂糖産業に代わって新たに観光リゾートの開発が進行する一方、先住民族の伝統農産物であるタロイモ農業の復興がみられるなど、地域社会は変化の兆しを示している。さらに、近年、この島を襲ったハリケーン・イニキによる壊滅的な被災経験は、人々の生活や生き方に深い痕跡を残した。

現在のプランテーション

 カウアイ島をフィールドにこの島で戦前、戦中、戦後を生活してきた日系人のこれまで書かれなかった生活の歴史を記録し、未来に伝え、また、今日の生活の現状や諸問題を明らかにすることを通して、文化の境界を越えて生きてきた人々の歴史と文化とその未来を考えたい。それが、この調査の目的である。

 今回の調査は、カウアイ島ワイメア本願寺別院とその会員の方々の全面的な協力によって実施されるものである。ワイメア本願寺は、耕地で働く日本人移民によって設立され、以来、現地日系社会の心の拠り所として活動を続け、今年で百周年を迎える。近年では、高齢者の心のケアに取り組むなど、その活動は日本でも広く注目されるところとなっている。