1997/02/20(THU)

1997/02/20(THU)



薬で手先がかじかんでいて、思うように打てないのが、残念です。微妙なところが伝わるかどうか、とても心配です。この感じは、うまく分かっていただけるかどうか。要するに、大ざっぱなことしか、物事のアウトラインしか伝わらない気がするんです。これはわたしにとっては、ほとんど恐怖です。しかし、この指の状態では、どうしようもないことなのです。自分がほんとうに思っていること、ほんとうに表現したいこと、それを徹底的に掘り下げて、ある程度、満足のいくところまで表現をもっていくには、そこへ向かう姿勢と指とが、完全にひとつになっていなければならない。指がこんなあやふやな状態では、いくら気ばかり急いてもうまくいくものじゃない。
しかし、それもこれも、口に出してしまえば、愚痴になる。それでも書いていくには、黙って書いていくしかない。できるだけのことをするしかないのです。何を言っても言い訳になるんですから何も言わないで精いっぱいやるしかない。こんな単純な結論になるんですね。

倉田良成は、なんでも、オクラにしておくのはしのびないから、可能な限り活字にしておこうという考えらしい。自分のことだけでなく、わたしのことまでも、そうしろと言ってくる。わたしも実は、かれの考えに賛成である。その意味でも清水鱗造氏には、感謝しているのだ。しかし、この日記ともエセーともつかない書き物に関してはどうだろうね。エセーでも日記でもいいのだが、わたしが拘るのは、人が読んで、面白い、または為になるものであるかどうか、ということだ。どうもあまりそのようなものとはは思えない、というのがわたしの結論なのだ。倉田氏は、いいんですよ、あまり考えないで活字にしたらどうですか、と言う。これにも、わたしは賛成してはいるのだが……。

|
夏際敏生日記 [1997/01/21-1997/02/22] 目次| 前頁(1997/02/19(WED))| 次頁(1997/02/21(FRI))|