シンガポールの教育事情― 学校訪問記 その2 (2010年12月)
1.
シンガポール日本語補習授業校(The Japanese Supplementary
School Singapore)
住所: 95 Clementi Road,
Singapore 129782
Tel : 65-67776660 Fax: 65-67753032
Mai : singjss@pacific.net.sg URL: www.jss.edu.sg
1992年10月にシンガポール在住の日本人の母親達が自分の子供に日本語を教えようと、日本人会の一室を借りて教室を始めた。その後1994年に日本政府から正式に補習校として認可され、1996年にはシンガポール政府から正式な学校として、また2002年には、charity bodyとして認可を受ける。運営母体は、日本人会補習校学校運営委員会。運営委員は在シンガポール大使館
を代表する領事、日本人会事務局長、日本人学校校長・事務局長、理事会が委託した企業の代表者、補習校校長の14名。
現在約250名の日本国籍を持つ小中学校生徒がボランティア教員を含め約45名の教員の下、国語(日本語)と社会の指導を受けている。教員は、全員が日本の教員免許とシンガポール教育省の許可証を保持しているので質の高い授業が行われている。
児童生徒の3分の一が現地校の生徒で、その多くは両親が国際結婚をしてシンガポールで進学していくことを目指している。残りの3分の2は、将来帰国して日本の教育を受けることを目標としている児童生徒で駐在員子女が多い
【校舎】日本人学校クレメンティ校の校舎の一部を借用
【授業】毎週土曜日午後1:25〜4:25 3時間授業 国語・社会
学級】1クラス 15名定員、低学年と日本語科クラスには、担任とボランティア補助教員が入り、細やかな指導を行なっている。
生徒のニーズに応じた教育(日本語と日本文化)
大槻秀三校長先生の案内で補習校の授業を参観させて頂いた。教員達の熱意によって発展し続けている学校だけに教員、保護者そして子供たちに大変パワーのある学校である。
クラス編成は、生徒の将来の進学言語予定(「帰国して日本語で進学か」「英語などの他言語で進学」)によって次の三つに分かれている。
【クラス編成】
国語科 : 「普通コース」と「ゆっくりコース」
日本の学習指導要領に基づいた教科書を使用して、母語として日本語を学ぶコース。
「普通コース」は、将来帰国して日本の教育に戻る予定の駐在員の子女が多い。
「ゆっくりコース」は日本語以外の言語(主に英語)で進学予定の子女が多い。現地校・インター校の学習を妨げないことを配慮したコース。
日本語科 : 外国語として日本語を学ぶコース
主に、第2言語として日本語を学ぶテキストを使用して学ぶ。
主に、第2言語として日本語を学ぶテキストを使用して学ぶ補習校は、国内の小中学校とほとんど同じ行事(運動会、鑑賞会、授業参観、実力テスト、書道、文集作成、季節の行事 他)を実施したり、授業内でも日直を決めたり上履きに履き替えたり等、日本文化を学ばせることに大変力を入れている。また、補習校に入学する=保護者も家庭での教師として日本語の家庭学習(宿題)に協力することを義務付けられているので、熱心な授業が行われており、国語科の授業風景は国内の学校の授業風景となんら代わるところはなかった。廊下や占有教室に掲示された作文、日記は、丁寧な文字で書かれ、生き生きとした表現にあふれていた。補習校独自の図書館があり読書を奨励している。図書館で本を借りることを学ばせるために授業内に「図書の時間」を定期的に設けている。図書館には、母親ボランティアが常駐し、読み聞かせなどの支援をしている。父親母親がPTAを組織して、駐車場、行事の手伝いなど自主活動を活発に行っているので、それが生徒の学習意欲にも繋がっているのだろう。また、保護者のための講演会を開催するなど保護者同士のコミュニケーションの場ともなっている。
入学について
毎年入学希望者が多く、かなり厳しい制限がある。入学時には、日本語テスト、面接が実施されて本人の意欲、保護者の学習への協力も問われる。新一年生は、入学考査が行われ合格者のみ入学が許可される。この10年ほど小学校低学年は、常にウェイティング状態。(1)入学資格:・日本国籍を有し、国際校・現地校に学ぶ義務教育年齢の児童生徒。・入学希望学級における学習に支障がないと判断できる(日本語)力があること。・少なくとも教師の日本語での指示が理解できて、学ぶ積極的な意欲をもつ児童生徒
(2)受付期間
【新入学(新小学一年生)の場合】
1月下旬に開催する学校説明会後の2週間前後の期間
【途中入学(小学1年生を含む)の場合】
4月〜12月 :随時1月〜 3月 :2月中旬2週間前後
(3)学費
【入学金】
日本人会会員 :$150 日本人会非会員 :$300
【授業賞料(教材費含む)】
小学部:$175/月 中学部:$185/月
【傷害保険】 $21.40
(4)入学にあたってのつぎの注意事項がある。
・それぞれの学年の受入数に限りがあり、定員いっぱいの場合は入学できない。
・学習指導要領が定める授業時間数の3分の1程度の時間数で日本語力を身につけるためには、毎日の家庭学習は欠かせないのでその覚悟のない者は入学を遠慮して欲しい。
・面接考査で日本語力を判断し、補習校で日本語を学ぶ素地がないと判断した子女の入学は許可できない。
ゲームをしながら漢字を覚えよう! お母さんボランティアと図書館授業
2. 早稲田大学系属 早稲田渋谷シンガポール校(Waseda
Shibuya Senior High School)
住所: 57 West Coast Road, Singapore 127366
Tel: 65−67732950 Fax: 65-6773295
URL: www.waseda-shibuya.edu.sg
シンガポールの西、海風の届くWest
Coast Rd 沿いに、やしの木と南国の木々に囲まれた開放感あふれる早稲田渋谷校の校舎がある。桑原教頭先生、平野理事事務局長様、倉橋入試広報部長様に学校案内頂き、学校運営についてお話を伺うことができた。
前身は、1991年に設立された渋谷幕張高校で、2002年より早稲田大学系属校、またアジアで唯一の在外教育施設として開校された。当初は、シンガポール日本人中学出身者ならほぼ全員入学できたが、最近は、中国・マレーシア・タイなどの近隣アジア諸国からの志願者が多く倍率は高くなる一方だそうだ。
コンピューター室には50台のコンピューターが完備して常時に生徒はアクセス可能。入り口近くの生徒ホールは、憩いの場となっており寮生の食事、コーヒーブレイクも用意されている。
卒業後の進路― 早稲田大学への道
一定の基準を満たした者は、早稲田大学に内部進学可能で、現在の推薦枠は43名(98名中)。各学部2〜5名の推薦枠。
早稲田大学以外に推薦枠は90名枠以上あるので、ほぼ推薦で進学できることになる。
【主な推薦指定校枠】関西学院(15)、立命館(4)、同志社(1)、南山(2)、明治(2)法政(3)、青学(2)、中央(2) 他
自主的に受験を希望する者は、国公立や医学部などへの進学希望者。受験指導は、学校内の通常授業で十分対応できているそうである。英検、TOEIC、国内模擬試験も校内でおこなって、個別に進路指導をしている。
特色− 「自調自考」 「国際教育」 「倫理観」
・海外校としての特色を生かし特に国際人教育に力を入れている。
・チュートリアルイングリッシュ=生徒4人にネイティブ教師1名での英語コミュニケーション教育
・文化交流−現地校体験・現地校DHS交流会・プラナカン文化体験
入学について
【生徒数】 現在9学級 309名 (1学年 100名)
【生徒数】 現在9学級 309名 (1学年 100名)
【入学試験】12月と2月の第1土曜日 実施。編入試験は、随時実施。
国語・英語(リスニング含む)・数学 各100点満点。
東京・クアラルンプール・バンコク・ジャカルタ・香港・台北・上海・ベトナムで実施予定
【学校説明会】 2010年実施した地域は
5月 シンガポール・ペナン・台北・台中・ジョホールバル・ハノイ
6月 バンコク・上海・蘇州・ホーチミン・クアラルンプール・ジャカルタ・
7月 マニラ・香港・深セン・広州・北京・天津
10月 東京
【対象】海外赴任者の子女。3月中の赴任が決定していれば2月の受験は可能。
受験に合格すれば外国籍生徒も受け入れる。
【学生寮】現在生徒の4割が寮生。
男子寮95室、女子寮71室 合計166名収容可能。個室でインターネット接続可能。
渋谷早稲田シンガポール高校 中学部 エントランスから校庭を見る