『ROOKIE!』

リリース記念インタビュー 後編:『ROOKIE!』に迫る!編




『ルーキー』サウンド・トラック誕生経緯

コメホカ:さて!本日の話題のメイン、ドラマ『ルーキー!』サントラ盤について、お聞きしたいと思います。
コメホカ的には、1曲目『THE THEME FROM ROOKIE 2001』をお聞きして「アッ!ルパン3世」、2曲目『PUNCHI!!』をお聞きして「オッ!!11PM」(70年代のお色気情報番組。今なら"TONIGHT")などと、もうそれだけで、ノリノリでした。

金子:そうね「ルパン3世」のサントラって金字塔のように、どーんとあるよね。大野雄二さん、すばらしい。でも、大野さんのは、女性がもっとスマートな色気って感じゃない?
「ルーキー!」は、70年代のブラック・ムービーの持ってるムード、かっこよさを目指したので、少し違うかもしれないね。特に、浦島りんちゃんが参加してくれるっていうことになって、さらにスキャットがズンとブラックっぽく、来てるかもしれないね。

コメホカ:なるほど。今回、金子さんの中で、サントラのお仕事は、どういう気持ちで、やられたのですか?

金子:映画音楽とか、環境音楽とか、元々、好きなんだよね。

コメホカ:映画といえば、石井竜也監督作品『河童』の音楽とか、以前あった石井さんのショップ『HATI』の店内音楽『MEET TO THE HATI』とか、ありますよね。ただ、テレビのBGMって、少しお手軽なイメージがあるんですが、今回『ROOKIE!』を聞いて、ビックリしました。一枚のアルバムに、なってますもの。BIG HORNS BEE の新譜です、って言われても、そうか!!って思いますよ。

金子:テレビドラマって言っても、どこまで、やれるのかってあると思うんですよ。今回、僕は、自分のスタジオで作ってますから、非常に効率よく、かつ追加で色々と作り込めたってのがあります。
もともと、サントラ盤を出すっていうのが、前提ではなかったんだよね。ただ、刑事ものということで、ホーンがかっこよく決まる。ドラマの音楽スタッフと話したら、JB's、ジェームス・ブラウンが本業以外に自分のバンドを使って、映画音楽をサラッとやってる世界、70年代のブラック・ムービーのかっこよさというところで、意気投合できたので、お引き受けしました。アルバムの1曲目『THE THEME FROM ROOKIE 2001』のデモを作って、音楽スタッフの方々に聞いてもらったら、「コレだっ!」って、凄い気に入ってもらえて、逆にすごく後押しくれて、結局サントラが出ることに。だから、出るって決まってから、サントラ盤のために、トラックダウンし直したんだよね。ドラマの方も、途中で、微妙に変えていってるし・・・

コメホカ:えーっ!

金子:今回、短期間で出来たりっていうのも含めて、僕がスタジオ持ってるという事が、大きかったと思いますね。デジタルの発達で、いわゆる段取りが逆に出来るっていうか、前だと、人集めといて、せーので始めるんだけど、まづ、コンピュータで全部打ち込んどいて、ドラムだけばーっと録る、ホーンだけ、ギターだけ録って、差し替えると。もう、入れ替わり立ち替わりみたいな感じですよ。メンバーはいつものメンバーだし、…結構楽しかったですよ。

コメホカ:凄い機動力ですよね。

金子:でっかいハードディスク置いて、コンピュータ駆使しながらといっても、結果、生の音をどんどん録っていって、ミュージシャンのノリでやったほうがいい部分を活かしながらと、きちっとそのまんま忠実にやった方がいい部分と、やっぱり出てくるんで、その辺を見ながら、作業していってます。そんなことで、小回りが効くんで、サントラ決まったって聞いて「もう1曲作ろうかな?」「ソロとかも入れ直したいなぁ」とか、ドラマ見てて「オルガンの音があったらかっこいいな」とか増えて、結局トラックダウンし直すことに(笑)

コメホカ:ふつうは、そこまでは出来ないですよ。

金子:そんな感じで『ブラック・ムービー』という部分も含めて、かなり好きに、自分の趣味でやらせてもらいました。10年位前に米米CLUBで音楽担当したドラマもありましたけど(CX系 『素顔のままで』)、年間4クール、各TVキー局、一週間ほぼ毎日ドラマあるでしょ。だから、音楽も、なんか新しいムードのものが欲しいんだろうなと、漠然と思うから。まっ、自分なりに面白がれることを・・・・なかなかホーンのサウンド、特に、ホーンのキャラを活かすようなアレンジメントって言うのはちょっと難しいみたいですね。

コメホカ:音が結構強いから、キャラが立ってなくちゃいけないけど、演じる人のキャラを殺しちゃいけないし、そこのところが難しいでしょうね。

金子:そうなんです。結構、主張するから、やっぱりねぇ。演技で驚くところにペットでパーッって入っちゃうとね・・・気が散っちゃう。合いすぎててもいけないけどね。そう、脅かしじゃないんだよね、音楽ってね。インパクトとか脅かしって思って作っちゃうけど、音楽ってやっぱり心情だから。
気持ちの中のものを表現するのが、音楽だから。最近ホラーって言うのは、脅かそうとする時に、音でどーんってやって、「ほらぁ!びっくりしたぁ!」ってムリなんだよね。映像のコマが、タタタタドン!っていったほうが、よっぽどびっくりしちゃうし、インパクトって言うのは視覚的なものの方がよっぽと強いからね。それにリンクしとけば音がスッとついてくる。音だけで、脅かそうったってそれはムリなんです。


情景が浮かぶ劇伴

コメホカ:『ルーキー!』の音楽の話に戻るんですが、劇判として、気をつかわれた所はありますか?

金子:『ブラックムービー』だけで攻めてっちゃっても、まぁ映画だったらね、それだけできっと成立したんでしょうけど、逆にそのほうが硬派にかちっとわかりやすくなったんでしょうけど、やっぱり日本の中の警察のお話だから、もうちょっと異種混合で。といっても、やっぱり、イタリアのサウンドトラックっぽいものとか、ちょっと、FUZZ JAZZをナマでやった感じとか、自分の好きな世界で固めてますけどね。

コメホカ:各曲各曲、情景が浮かぶような曲ばかりだなと思いました。

金子:そうですよね。必ずなんかシーンと結びついて、別に『ルーキー!』のシーンということじゃないんですけど、音を聞いた時に「ああこういうシーンのところにかかってくるなぁ」という。例えば、「追いかけられてるぞ、追ってるぞ」みたいな。聞いてて情景が浮かぶっていうっていうのは、サントラ、というか劇伴の面白さなので、1曲1曲「これどういうところで使われるんだろうな、どういう風景なんだろうな」と思うと必ずなんかシーンが浮かんでくる、そういうのがあると、面白いなと。かつ、1曲ずつきちっと曲になっている、というところが、気をつかったところですね。

コメホカ:例えば『SHADOW OF THE NIGHT '77』なんて、物陰から主人公を見る黒い影。その肩ごしから主人公を撮るショット、しかも夜なんて勝手にイメージしてるんですけど。『'77』ってなんでかなと思いながら(笑) この曲なんか、見事に映像が浮かんでくる感じですねぇ

金子:『'77』は雰囲気なんかもつくっちゃいたくってぇ(笑)ホントだよね。なんか、全体に夜っぽい曲が多くなっちゃったかもね。夜の張り込みのシーンとかそんな感じもあるしね。夜の、へッドライトに浮かび上がる影・・・っていうシーンが目に浮かんだり(笑)



ボーカル!浦島りん

コメホカ:今回のサントラでは、浦島りんさんの存在が大きいですよね。

金子:すごいよねぇ。りんちゃんはねぇ、去年ぐらいからねぇ、仲良くしてるんです。
石井竜也『DRAGASIA』ツアーでベース弾いてたキタロウさんの紹介なんですけど。キタロウさんて、山崎まさよし君とか、スガシカオ君のレコーディングとか・・・、いろんな人のプロデュースやってるんですけど、僕の先輩なんです。大学のビッグバンドのサークルの『リズム ソサエティ』っていうバンドの先輩。もともと、マザーアースっていう、久保田利伸君のバンで、一緒に回ったりしてたんだそうで。それで、キタローさんとりんちゃんと俺とで、録音して遊んだりとかして。

コメホカ:『DRAGASIA』の国際フォーラムで、浦島りんさんをお見かけしたんですよ。そういう繋がりで。

金子:1曲目の『THE THEME FROM ROOKIE 2001』にしても、りんちゃんが入るだけでもう、黒人がやってるみたいで。他のコーラスの人も引きずられて、もう、3人で声をあわせるところあるじゃないですか。あそこなんか、ほんとにブラックぽいなぁっていうか。

コメホカ:女性の太い声ってあんまり使わないですよね。日本のコーラスだとかわいい声を入れるっていう。

金子:そう、こういうのってほんとにおもしろいよね。りんちゃんに頼めば大丈夫っていうのがあるから、当然頼むんだけど。たとえば、2曲目の『PUNCH!!』って、もっとソフトなソフトな感じで、女性3人ぐらいでやろうかなと思ってたんだけど、りんちゃんの逆に、太くてあったかい声でやってもらって「これもアリだな」って。りんちゃん用にキーを下げて、女性のキーにしては、少し低いんだけど、そういうイイ偶然性で、パフォーマーにあわせていくっていうのも、楽しい作業だよね。今度は高いキーでコーラスバージョンを作るとおもしろいしね、みたいな感じでいつも考えてやってますね。

コメホカ:りんさんって、吉田美和さんとのユニット『ファンク・ザ・ピーナッツ』のイメージが・・・

金子:もともとはジャズボーカリストなんですって。もともとジャズから始まった人で、「ファンク・ザ・ピーナッツ」をやってるんでソウルというイメージが強いけどね。まるでジャニス・ジョップリンみたいだよね。『PUNCH!!』に限らず、いろんな曲で、ほんとは英語の歌詞を乗っけたかったんだけどね。劇判には、歌詞はつけられなかったんですよ。もし、ライブとかでやるなら、歌詞つけたらいいよねぇ。

コメホカ:是非、ボーカルありで、ライブやって欲しいですねー。

金子:『PUNCH!!』のスキャットの話に戻るんだけど、面白いのは、この曲、作りとしてみれば「イタリアン」なんですよ。イタリアン・サウンドトラックのスキャット
聞いた話なんですけど、もともと、イタリア人のスキャットっていうのはジャズがイタリアに入ってきた時に、英語ができる人は歌ったんでしょうけど・・・イタリア語をのせたら全然合わなかったと。「どうしよう」っていった時に「スキャット」が生まれたそうで。ジャズは即興でね、ワンコーラス歌って、トランペットのソロをやった後に歌の人が、それをそのままスキャットでやったりとか・・そういう風に黒人の歌手達がやってたんですけどね。イタリア人はそれにテーマを持たせたっていう。

コメホカ:へー、面白いですねぇ。

金子:あと、面白いなぁーと思ってるのは、石井竜也の鈴鹿サーキットでのライブ(99')のときに、BHBの『BLOWZ JOB』をマチコのスキャットでやったっていうのがあって、それも良かったんだけど、サックスで、僕が吹いてるパートをマチコがやって、意外とそういうインストゥルメンタルな面白さっていうものを、ライブの中にあっても、面白いナって思ってます。


コメホカ的に気になる曲について、お伺いします

コメホカ:少し、個別の曲の事をお聞きしたいと思います。
まづは、私は『RAMZEI』がとっても雰囲気があって好きなんですが、『RAMZEI』ってなんですか?具体的に誰かいるとか?

金子:『RAMZEI』は一応人の名前ですかね。『ラムゼイ・ルイス』っていうピアニストがいるんですけど。知ってますね。まぁあの人は男なんだけど、女性でラムゼイっていう名前のイメージにしてみようって。

コメホカ:やっぱり〜!(喜ぶYAMYAM、ガックリくる、ぷるっぷる。呆気にとられる金子さん!)
実はここに伺う前に話してたんだすけど、『RAMZEI』は『ラムゼイ・ルイス』だと主張するYAMYAMと、ゾルゲ事件で暗躍したスパイ集団『ラムゼイ』グループからきていると主張するぷるっぷるの間で、論争があったんです。結果は、YAMYAMの圧勝ですね。

金子:(笑)これはね、ピアノ曲で『ラムゼイ・ルイス・トリオ』っぽい曲を・・・ピアノ曲で作ろうと思ったんだけど、やっぱりスキャットだなぁって思って。

コメホカ(ぷるっぷる):『RAMZEI』は、スパイもののお色気シーンっていうイメージの曲なんですよ、私。その瞬間にスパイものってイメージで頭が固まっちゃって、ラムゼイ、ラムゼイ、うーんって。そっちのほうにいっちゃって、ピアノから来てるとは思わなかった。

金子:大体僕の場合はギターで作るんですよ。ギターと歌でメロディーを全部作ってるんですよ。ホーンの時も、スキャットのときも。

コメホカ:キーボードじゃなくて、ギターで?

金子:そう、だから、たぶん、スキャットでも何でも合うでしょう(笑)
でも、この曲は最初はピアノ曲を作ろうと思ったんだけど、やってるうちにスキャットかなぁーって。これはピアノは野崎君っていって、去年アートヌードでひいてた人なんですよ。
じつは、フッシーと二人でミュートトランペットとフルートのユニゾンというバージョンもとったんですけど。それは、オクラいり(笑)ボーカルメロディー無。「♪パーラトゥティー♪」っていうのをそのままミュートとフルートで録ったりもしたんだけど。このフルートは劇中には流れてないから。これのために取り直し。歌は一緒だけどね(笑) 
あっ、それからついでに・・・『CHASING POZZO』のポッゾは、架空の人です(笑)

コメホカ:今回、近田さんがリミックスやってる曲ありますね。「ツイン・ピークス」っぽいですね。

金子:『BLACK LIST(Remix)』『IT'S TIME(Remix)』ですね。今回、近田くんにリミックスしてもらったという。近田くん、ご存じの通り、ギタリストですが、腱鞘炎になってしまって・・・・本当は、ギターで参加して欲しかったんだけど、全治1ヶ月って言われてもう、涙をのんで。ギブスで固定して、かなり重傷。「マジやばいっす」とか言って。で、4月に入ってから、指がこう治りかけてるところで、リハビリにあの曲作ったっていう(笑)
あと、どんな曲印象に残りました?


コメホカ:今話題の出た、オリジナルの『BLACK LIST』『PROPELLER』も好きですね。
特に『BLACK LIST』、だんだん緊張感が高まっていくような・・・

金子:これはモロJB’sですね。ジェームスブラウン、天才ですよ!
この曲ね、わかばのソロだけってバージョンもあるんです。それはそれで素晴らしいんですよ。

コメホカ:クー、聞きたいぃぃぃ

金子:ただ、劇中でトロンボーンを使わない部分が結構流れたからそのイメージもあるかなって、前半は普通に流して、後半にちょっとトロンボーンのソロを編集したの。わかばのトロンボーン、合うよね。意外とこういう音のトロンボーンって、あんまり世間で聞かないよね。
ホーンってほんと色々な曲に、色々なイメージで音色を奏でられるから、まだそういうバリエーションをやったことのない人はたくさんいるんじゃないかな。あっ、こういう使い方もあったかって、このアルバムを聞くと思うかも知れないね。フルートと何とかを組み合わせて、こういうメロディ吹くと、こういう感じになるんだよってね。
ほんと、60年、70年代って言うのは、ある意味、文化的なものも、がーって高まっていってるし、芸術的なものも高まっているから、アイデアの宝庫なんだよね。人間同士ができる。何とかと、何とかを組み合わせてやってみようって。デジタル的じゃなく、ユニークなところで組み合わせている。アイデアの宝庫だから、クラシックの曲を聴いて、アンサンブルの勉強をするっていうのもあるけれど。凄い組み合わせをしているのもあるよね。あの、オースティンパワーズ。クインシージョーンズ60年代の曲を使ったりとか、ピッコロとバス・トロンボーン。凄い高い音と低い音を組み合わせて演奏させてみたりとか。また独特のコミカルで、カッコイイ世界ができたっていう気がするね。
これからもいろんな奴トライしてみたいなと思っちゃうよね。それにスキャットとかが入ってくると、またいろんなバリエーションが出てくるしね。

コメホカ:カラーが変わってきますよね。

金子:楽器とスキャットのメロディーっていうのもあるし、ジャズギターのようなシンプルなものと歌とで、また(雰囲気が)変わったりもするしね。ホーンだけだとスパイシーな感じがするけど、スキャットが入ることによって、マイルドな感じにもなるしね。

コメホカ:それから『PROPELLER』、曲だけ聴くと、ストリッパーとかが出てきそうな下世話なって言うか、いかがわしいって感じがあるんですけど、ドラマの中では意外とそんな風じゃないのが、不思議なところで。

金子:これは日本のドラマに合わないんじゃないかと思ったんだけど、上手く、意外と結構使われてたよね。なんか、アヤシイのかあやしくないのか良くわかんない感じの、面白いポジションで、あのドラマで流れてるなと思ってる。この曲は、たしかにもうちょっといかがわしいアガリになるのかなぁ、って思ってたんだけど、意外とカラっとしちゃったっていう。やってみないと分からない(笑)
もっとエコーとか沢山かければよかったかなぁ。と、ちょっと思ってるんですけどね(笑)

コメホカ:そうすると、もっとまったりした感じで。途中でバリトンサックスのお遊びもありで。

金子:ああ、アレはほんとに遊びですね。BHBでも良くありますけど、リズムも何もかも、一回くるっとひっくり返して、あれって思ってるとまた元に戻るって、ああいうのは楽しいですね。聞いててドキドキするというか。
成田さんって本当にいいですねぇ。ここんとこずーっと、何やるのも成田さんにやってもらってるんですけど。プレーに味がやっぱり素晴らしいですね。この時代に、黒人のバンドでアメリカでツアーをやってた人なので。

コメホカ:肌で覚えている人なんですね。

金子:そう、70年代にむこうで『アイズレーブラザース』のツアーの前座とか黒人バンドでやってたからね。一番気持ちいいドラムのビートを良く分かっているんですよね。完璧ですね、ホント凄いですよ。ドラムのチューニングからして違うからね。そういう素晴らしいミュージシャンに支えられつつ、絶えず支えられつつ、感謝してます。


曲のコンセプトと、ミュージシャンの個性

コメホカ:しかしサントラ、お聞きすればするほど、もったいない位、丁寧なつくりで、ワンクールで終わるのはもったいないですよね。"2"とか"映画"とか、あると面白いですね。こういう大人の雰囲気で、フランスのスパイ映画とか、ヨーロッパ系のちょっとお色気とか、ギャグもはいりつつのスパイとか、アクション映画ぴったりって思うんですけど。

金子:そうねぇ。いくらブラックって言っても所詮日本人が作っているから、フェイクとは言わないけど、出来てるテイスト感がぽっと引いてみてみると、やっぱりアメリカ人ではないわけだから、絶対に。もろブラックじゃない、良くも悪くもこってり感がない、ジェームスブラウンみたいに、あんまり油ギッシュじゃないから、おしゃれな感じになって、聞きやすかったりとかね。

コメホカ:そういう意味で、今の時代にあってるのかなぁと思いますけど。むしろまんま80年代を、そっくり持ってこられても、ちょっと違うかなと。

金子:そういう風に聞いていただくと嬉しいですね。ただ、もともと浅いところをめがけると、こんどいいテイスト感が出なくなっちゃうって言う気がするんでね。精神的なところやアプローチの仕方やメロディーの作りこみ方は妥協せずに、きちっとやって、後は日本のミュージシャンがやるわけだし、僕の感性だからね。

コメホカ:作曲のところでは凄くブラックなんだけど、演奏しているうちにインプロビゼーションがはいってくるっていうか、セッションとしてどんどんテイスト感が変わってくるということなんでしょうかね。

金子:うんうん。そういう意味では普通の劇伴では、ありえない凝りかたになりますよね。
とにかく、劇伴作家ではないし、好きなジャンルなんで手が抜けなしいって言う。(笑)
一つの作品として、ジャズのインストであろうとサントラであろうと分け隔ては無いので、一つの世界観がちゃんとあればもしかしたら、好きになってくれる人も居るかもしれないし。

コメホカ:やっぱり最初からできあがったものとして持っていくんじゃなくて、テーマを持っていって、そういう作り方になっている訳なんですね?

金子:そうなんですよねぇ。やっぱりイメージの引き出しっていうのがすごい必要で。
たとえば、BIG HORNS BEE だって、いう時に、メンバのキャラがあって、そのあとにどんな音楽がくるかっていうふうにどうしても考える。この人たちが主役のこういうパーティをコーディネートしたいなっていう。そのバリエーションって言っていろんなものをもっていって、「次はこれやってみようか」って。米米の時もそうだったんですけど。だから、ドラマでも、キャラがあって、そのキャラが、今どんなこと考えててとか、あるじゃないですか。一つのコンセプト、人間のドラマ、心情というか。

コメホカ:そこのコンセプトに、またミュージシャンの個性が入ってくるんですね。

金子:そうそう、演奏もやっぱりその起伏に合わせて盛り上がっていったりとかっていうのがあるから。
やっぱり、70年代の音楽とか60年代の音楽とかって、音楽だけじゃなくて、ファッションとかも騒がれているという、相変わらず90年代から、ここ10年15年ぐらい、熱は未だ冷めずっていうところだと思うんですけど、やっぱり人がすごい。生身で作ってった時代だから。実際のファッションとかもそうだし、一点物とか、デザイナーが実際自分の手でこう作って、こんな派手な物、作っちゃったけどって、帽子を作ってそれを写真に写したりとか、絶対コピーのできない物だったりとか。
演奏もあの頃って打ち込みとか、全然なかったから、そこにいるその人たちじゃないと出せない音とか、如実にはっきりしてた時代だった。


コメホカ:今日のお話ではコンピュータをうまく使われてるんですけど、このサントラ聞いた時、ほんとに、ホーンの音がすごいナマっぽく聞こえてきて、ライブ感があるんですよ。
エフェクトをかけたりとかしてるんじゃなくて、管から出てきてるな、っていう感じに聞こえるんですよね。それがねすごい気持ちいいんですよ。そういう音のシャワーを浴びるみたいなのが、よかったんですよね。

金子:うん、結局さぁ、音…トランペットの音を望まれてたりとかする場合が多いと思うんだけども。
僕なんかは自分で作るから「トランペットの音ほしいな」と思うんだけども、撮ってるときにトランペットの音じゃなくてやっぱりその人のキャラもほしいなって、こう思うんですよ。だから、その人らしい部分ていうのを見つけて、そこを全部OKにしたいって、多少変わってもOKになっていくと、メロディだけの強さじゃなくて、演奏者の強さっていうのが出てくるから。そこでプラスアルファというかなんか惹きつける物ができるんじゃないかな?と思って。
それはだから、歌ものをやってもインストゥルメンタルをやってもみんな同じです。これはもうドラムに関しても、ベースに関しても、今回結構自分で弾きましたけどね。ギターに関しても、みんなそうですね。
プラスアルファのところが、意外と人を惹きつけたりするっていうか。

コメホカ:ああそうですよね。やっぱりなんか BIG HORNS BEE の音になってるみたいな感じがしますよね。一番いいところを引き出してるなぁって。『BLACK LIST』で、わかばさんのソロとかパンってあって、バホバホいうやつが入ってたりすると、「ああわかばさんの音だ」とか。ミュートのトランペットで、「ああ、これも下ちゃんの音だぁ」とか思いながら。
ファンだから、そういうふうに思うのかもしれないですけど。なんか顔が見える音色っていうか、あるんですよね。

金子:そうだよね。あるんだよねやっぱりね。なんか、その人なりの、こうニュアンスをつけるもの(ミュートであおるまね)だったりとか、その人でしかないから、同じフレーズ書いていても、ひとりひとり全然違うふうに吹くから。
下神の場合はやっぱり、ああいう表情豊かなのが上手っていうか、『FUZZ JAZZ』のときも、だいたいこれもの(ミュートのまね)は下神がやったりとか。フッシーもうまいんだけど、フッシーがやるともっと、オールドタイプのジャズっぽい音が出るし、下神だともうちょっと…なんだろな、型にはまんない、コミカルな感じがすごい出てくるっていうか。

コメホカ:微妙なニュアンスの違いっていうのも楽しいですよね。そういう一人一人のキャラが。そういうのも、色濃く出てるアルバムだなぁというふうに思いました、我々は。
だから、単純にそのサントラっていうのよりも、BHBのアルバムっていうふうでも・・・最初にアルバムを作って、それがドラマに使われたって、言ってもいいんじゃないかな、というか。

金子:うん。そういうミュージシャンの個性が重なり合って、うまくいくときってあるんだよねぇ、全てが。偶然性があるからね、録音とか。例えば、VOCALとかでも、うまい人って、その場性がすごい強いから、迷いがあるままだと、お仕事としてプロとしてやるんだけど、気持ちがのるとプロを越えた素晴らしいのができるし、僕としては、できるだけ自由な感じで、でももとのメロディは損なわずに、やって欲しいって思うんですよね。

コメホカ:むずかしい注文ですね。

金子:まぁでもね、注文しすぎちゃうとできなくなっちゃうから、いいところをちゃんと。そんな細かい注文はしないですよ、実際は。チョイスだから。それはまたデジタルのいいところで、録ったやつを全部キープすることもできるし、それもまたいいところを編集するって感じ。
それはだから、今のデジタルって、80年代のデジタルとは大違いっていうか、すごくアナログ的に使えるデジタル。ハードディスクの容量があれば、もうドンドンできるでしょ。朝「よし」って、きたらずーっとセッションを始めることもできるじゃない。アナログだったらテープを交換しなきゃいけなかったけど。昔のデジタルだったらね、テープに撮らなきゃいけなかったけど、ハードディスクだったら、こんなでっかいハードディスク用意しとけば、1日でも撮りきれるからね。

コメホカ:今日は『ルーキー』のお話をメインにと思ったんですが、それ以上に、プロデューサー金子、コンポーザー金子、プレイヤー金子といろいろなお話がお聞きできて、とても、嬉しかったです。


今後の活動予定

コメホカ:最後に、金子さんと美奈子さんの今後の活動予定を、お聞きしたいのですが?

金子:MINAKOは、去年につづき、ファンクラブ会員のイベントですが、サマーパーティみたいなのをやる予定です。僕や、マリちゃん、近田くんもゲスト参加する予定ですよ。

コメホカ:BIG HORNS BEE のご予定は、どうですか?

金子:スターダスト・レビューとのライブツアーですね。
僕は、てっぺいちゃんの『ZERO CITY-AQI』の出演もあるのですが、日程は微妙に重なってないのですが、リハーサルとか、どうなるんだろう?
HALツアーの時も「えっ!トラブルフィッシュだけっていったじゃん!」「えー!その後も?」みたいな「大丈夫!出来る、出来る!」ってね(笑)

コメホカ:めちゃくちゃ、ハードスケジュールじゃないですか!! スタレビも石井さんも、楽しみです。
BIG HORNS BEE のライブも、是非、是非、やってください! 本日は、貴重なお話、いろいろとありがとうございました。金子さんと美奈子さんの今後のご活動、期待してます!



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