石井竜也「ART NUDE」レポート(第一部)〜1998年12月9日 渋谷パルコ劇場〜


石井竜也「ART NUDE」の1998年12月9日公演のレポートをお届けします。
第1部はアコースティックライブ、休憩をはさんでの第2部はアートパフォーマンス、 ボディペインティングとライブという構成です。

今回のレポートは、ずっと座ったままなので、逐一メモを取っていた方が、随所に見受けられました。 コメホカも実況風超詳細レポートにてお送りします。まずは第1部、アコースティックライブの レポートをお届けします。

画像は、販売グッズ「チョーカー」です。「チョーカー」は、各日限定数で、変えた人はラッキーでした。


第1部

ステージには緞帳はないがフットライトが客席に向いているため死角になっている。 開演時間になって初めて見えるステージの模様だ。ステージ中央に黒地に白の十字、 十字のまん中に「ART NUDE」の文字。下手奥にはキーボードとギターが配置され、 上手奥にはパーカッションブース。ステージ中央前にはバーチェアのような背の高い椅子にマイクスタンド、脇には譜面台が置かれている。意外にシンプルなセットだ。 ミュージシャンが席についていよいよ開演。

下手から登場した石井は、黒のサングラスにモーニング風の後ろだけ長くなっている黒革の上着、 その下には黒のピタTシャツ、黒のぴったりしたスラックスに銀の握りのついたステッキを持っている。 例によって首にはシルバーのチョーカー、同じく腰にはシルバーのバックルも光っている。 下手と上手で投げキッス、やってくれるわぁ。

登場と同時にイントロが始まりステッキを投げ捨て中央の椅子に腰掛けるとマイクをひきよせる。 これは『夢の中』だ。マイクスタンドの角に左手をもたせかけて歌う姿が妙になまめかしい。
続いてボサノバのようなリズムで始まった曲は『抱いて』。 CD「H」のアレンジとは全然違う。 押さえた感じでエッチっぽいというよりはもっと大人な風情がある。 後半のキーボードソロも大人っぽい。ライティングは例によって赤。

「チョーカー」

曲が終わって開口一番「こんばんわぁ、石井竜也でぇす(ホスト声)」それまでとは まるっきり違う展開に思わず笑ってしまう(緊張の緩和ってやつですね)。 「今日は私にとっても似合わないコンサート。いつもはわあーとやってますが、今回は 一部はメロウでアダルトに迫ってみたいと思ってます。また二部にはイタリア生まれ のアメリカ育ちのジーナ嬢というモデルさんも登場しますんで、男性の方はくれぐれ もおひねりなど投げないようにお願いしますね。アートパフォーマンスってやつですよ。 アートネーチャーじゃありませんからね。・・・親父ギャグいっちゃったなぁ、もう。」

「メンバーを紹介しましょう。 キーボード&バンマスはジュリアーノ勝又、パーカッションはクリヤマトヨジ、 またの名をフランソワーズ・栗山といいまして生粋のフランス人でございます。 ギターはミヤノヒロキ、またの名をアラン・ホイ・ミヤノといいまして香港からのお客様、 彼はまたシタール弾きでもあるという、すばらしい人ですね。 このほかに二部にはマリーザという日本人も登場しますんでですね、 みなさん最後まで楽しんでいってください。」


「まぁ米米CLUBが解散してからこの1年2年というものは自分自身を振り返る時期 でもありまして、昔を振り返りますと学生時代はみんな貧乏でですね。 でもワタシはやっていけたんですね。なぜかっていうとBONという友達がいまして、 米米でベース弾いてた、そのBONがですねバイトをしていたんで、金回りがよかったんですね当時。 僕はBONがいたからやっていけたんです。 でBONに「女の子紹介してやるから、3000円で」とかいってディスコ行って7000円ぐらい 使わせちゃうというそういうことをやっていたんですね。その頃の感じの曲ってことで。」

というくだりから次の曲『HI TENNSION LOVE』へ。スローなテンポでコンガなんか入っちゃって 全然別の曲のように聞こえる。

一番を歌い終わってすぐまたMC「・・・といった曲なんですけども。なつかしのディスコサウンド、 チョッパーバシバシに仕上がっておりますんでCDもぜひ買っていただきたいと思うんですが。 ディスコ、もうサラリーマンが頭にネクタイ巻いて踊ってたりしましてね。 最近のクラブはいけませんね、なかにぼーっとしてずーっと立ってるヤツがいたりして。 リズムが細かくてノレないんですね。その点ディスコはみんな踊れちゃう。 条件は一個だけ『バカ』ってことだけですからね。」 「でワタクシ、ノスタルジックディスコサウンドというものを打ち立てましてですね、 来年のライブ、『ディスコ』というテーマでいこうと思ってるんです。 ボディコンとか、かび生えてるんじゃないかと思いますけど。扇子もいいですね、 大中かなんかで買ってね。持ってきていただけるとまた盛り上がるんじゃないかと思う んですけどね。」


「チョーカー」箱アップ

「ディアフレンズという番組をやってまして、いろいろな人と会って思ったのは、 『こんなバカでも売れるんだな』ということ。 それから『俺が一番かっこいいな』ということですね。 それから自分を掘り下げていくとなんか人とは違う、偏ってるなということを感じましたね。」


「大学2年の春から3年の秋ぐらいにこったものと言えば、女性の首の付け根のぽっこりフェチ。 あの女性が下向いてたりすると首の付け根の骨がぽっこり出て、 それ見るとなんか背筋がぞくぞくするというか「おれは今フェティシズムに浸ってるんだぁ」 ってかんじがしてね。 それが3年の秋ぐらいかに終わって、次が女性のひざの裏側とくるぶしフェチ。 膝の裏側の筋みたいのがもうたまんなくて。 現在はですね、女性の腕ぽっこりフェチです。この手首の外側の骨、これ、まめ状の骨 って書いて豆状骨(とうじょうこつ)っていうんですが、これがね。 とくに今の季節、長袖を着てるじゃないですか、それで時計とか見るんで袖を引き上げるとこれが 「幕が上がっていく」感じがしていいんですね。それと太ってる人のもいいですね。 脂肪の下に隠れていてそれメスで切り裂いて見たくなっちゃったりして。 腕の骨ぽっこりフェチもそろそろ終盤に近づいてまして、最近は男性の腕ぽっこりフェチに 移行しつつあるんですよ。あの骨の上の皮膚に太い毛がはえているのがまた動物的でね。フェチ、フェティシズムというのは、普通の人と違う目線で人生を見れるということで、 違った目で人生を見ると人生が楽しくなると思うんですね。(まとめにはいってるな)」
「というわけで今度「DEEP」というアルバムを出すんですけど、次の曲はその中の1曲で、 アコースティックにあわせて今回再アレンジした『again』という曲です。 それから「H」というアルバムに入っている『蒼い朝』という曲と2曲続けておき聞ください。」

「チョーカー」正面アップ

2曲歌い終わって「このごろ自分がこわいような気がするんですよ」と始めるが 「(途中から勝又さんに向いて)なんか今日オレにやけてねぇ? (客席へ)おれココ (頬骨)が出てるからにやけるとコレ(サングラス)があがっちゃうんですよね。(笑い) (気を静めて)当然のように紅白ははずされ(笑)、去年はじめて紅白みたんですよ。 和田アキ子さんに「夢」って曲かいたじゃないですか、だから見たんですけども。 あれは生々しいですね。あのパターン、あの「負けてられませんよぉ」って。去年の 司会SMAPの・・・キムタクじゃなくて(客席から「中居くぅ〜ん」)そうそ中居 くんが『負けてられませんよぉ』とかいうと、かれの普段のしゃべりじゃなくなって るんですよね。あれをみてぞっとしました。」

「次は新曲で『オータム』って曲なんですけど、僕はもともと秋が好きなんで作ったん ですけども。今は冬なんですが、冬に秋の歌聴いてもいいじゃないですか。 それでは「オータム」、聴いてください。」

独りの寂しさが痛切に感じられる歌詞で胸がきゅぅ〜んとなっちゃいました。 『青い朝』、アルバムHに入っているけど、アレンジが変えてあって伴奏はほとんど ピアノのみ。ライティングも凝ってて後ろの白い十字の上にブルーの編み目模様の光 が当たってきれい。

歌い終わって照明が落ちると風の音がしてくる。 今年の春にイタリアにいってきたんです。なんかいろいろ悩んで精算することがありすぎて、 広い草原とか行ってみたいなとかおもって。フィレンツェの南にシエナというところがあって そっからまた更に行った片田舎に、夏には一面のひまわり畑になるというところがあって、 オレが行ったのはまだ早かったからそこは一面の草原になっていて。 こう丘があって丘をずっと登って行くんですね。登り詰めると突然地平線が開けて。 それがずぅーっと先まで続いてて緑に太陽が当たってパースがつかない、 えっと距離感がつかめないんですよ。それで風が見えるんですよ。 風の先端が葉っぱをこう(手のひらを自分の方に向いて小刻みに震わせる) 震わせると葉っぱが銀色に光って、それがどんどん(手を身体に引き寄せてくるしぐさ)近づいてきて足許まで来るとようやく風がふきすぎる(頭の横から後ろへあおるしぐさ)という。 ああいう景色はいっぺんでいいから見るべきだと思いますね。とくに日本人は見た方がいいと思います。
またそこを降りていくと小さい壁がはげたような家がいくつかあって、そこを抜けると 広場になってるんですね。広場の真ん中に噴水があってオレはコーディネーターの 友達と座って話してたんですよ。で、気がつくと噴水の向こう側に人が座ってるんですね。 その人がうちのおじいちゃんに似てるんです。でコーディネーターの人に話してくれって頼んだら、 そのおじいちゃんが家具職人なんです。で「どっから来たんだ」みたいなこと聞くから 「日本からだ」っていうと「ジャポネーゼか」とかっていって。 それで「日本にはいったことあるか?」って聞くと「ローマにしか行ったことがない」って。 それでオレ「かわいそうだな」って感じたんですけど。今から考えると すごい思い上がりだなって思うんですけど、そんときはそう思ったんですね。 そんで、そのおじいちゃんが自分の工房に連れていってくれて。工房の中にはいろんな家具が 雑然と置かれてて、おじいちゃんはそれをひとつずつ説明してくれるんですよ。 「どうだ、この家具はなんとかで、村長の家のなんとかに置いてあったんだ」とか言って。 それで「どこ直したんだかわからない」っていうと、修理専門の家具職人さんなんで 「どこ直したかわからない」ってのが最高のほめ言葉なんですね。 そうすると子供みたいな顔して歯を出して、それもきったねぇ歯なんですけどね。 それみてて「うちのおじいちゃんみたいだな」ってまた思って。本当に全然不幸せじゃない。 目の前にあるちょっとした幸せを見つけられる人が、本当に幸せなんだ。 お金で幸せを買ったって所詮そんなのはその場しのぎでしかないんだって感じました。
それでその工房を離れたあともう一回行ってみようとまた丘の上まで戻ったんですけど、草原の上に夕焼け雲がこうかたまってて。遠くにあるからかたまって見えるんでしょうね、 ずーっと並んでて、その雲が黄色というかオレンジ色というかそういう光に包まれてて 輝いてるんですよ。それを見たときに「あぁオレこの景色を見るためにここに来たんだ」 っていうか、悩みもふきとびましたね。 そんときに湧き出るるように出てきたきたメロディがあったんですよ。 いつもはこう頭んなかに覚えててスタジオ行ってやるという感じなんですけど、 そんときはメロディと詩がわきでてきたんです。そのときの歌を歌いたいと思います。 『草原の日、風』聴いてください。

「草原の日、風が吹いた」。リフレインの多いシンプルな歌詞だけどそれだけに情景が 目に浮かぶ気がして胸が暖かくなりました。なにより彼の話っぷりに熱があった。 どうにかして見たものを伝えようというもどかしさすら感じたもの。段取りMCでない 石井さんの想いみたいなものがこもってた。きっとみんな感じたんじゃないかな? (じゃなきゃこんなに再現できるはずないじゃない。)

「チョーカー」横アップ

次は『ワンダーランド』、ACRIというユニットで作った曲。 CDでもアコースティックギター1本の伴奏だったけど、今度もそう。 イントロにフラメンコギターが入ってるのがCDとの違い。草原の次は海なんですね。

「米良さんと対談したとき『はりつめたときの〜♪』(もののけ姫の曲をひとくさり) ってやったら『(裏声で)まぁ私と同じキーで歌えるじゃないのぉ』っていうんで、 『米良さん、おれのことプロデュースしてくださいよ』っつったら、 『(裏声で)まぁ私にプロデュースして欲しいなんて、ほかのところプロデュースしちゃおかしらぁ』 ・・・まずいなぁ(客席に)みなさんが言わせてるんですからね」
「アルバムACRIに入ってる全部裏声の曲があるんですけれども。 一部で気持ち悪いというハガキをいただきまして。そんなになかったんですけど、 80通ぐらいもらいまして、くやしいんで今日は地声で歌ってみようと思います。」
「(客席から)え〜聴きたぁい」・・・「え?・・・でもキーが違うから・・・」と へどもどしてる間に勝又さんが最初のところのキーをチェックしてしまう。 しかたなく歌い出しワンフレーズ歌ったところで、「では」すかさず「(客席から)歌ってぇ」 「両方やってぇ」の声。
「いやできないですよ。練習してないし、キーだって違うし」(バックではキーボードとギターの コード調整がすすんでいる)
「(やってぇの声に)でも間違うかもしれませんよ。いつも間違ってんじゃん、ってそうですけど。 ・・・こんなことになるとは・・・」(このあたりで腹をくくったらしい)
「これ一部の最後になる曲なんですけどね。いま後ろじゃ『わかりもしねぇくせにまったくよ、 できるわけねーじゃん』とか思ってるんですよ。こっちの人(パーカッションを指して)は 関係ないですから。叩くだけですから」などと調整時間を作り出すべく 必死のつなぎMCをする石井氏であった。

そうこうするうち「できた? じゃ」
歌い出すも不安げで自信がなさそう。ワンフレーズ目の終わりの高音部が上がりきらなくて 瞬間的に「大丈夫か」とはさみつつも最後まで歌いきった。
えらい! 勝又さん&宮野さんも数分の調整で伴奏できるなんて、やっぱプロだわ。 宮野さんは途中2小節くらいソロもあったんだよねー。うーん、さすが!!


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