TATUYA ISHII 2002 ART PERFORMANCE
ART NUDE in Zepp Tokyo 2002/03/23
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一曲目は【蒼い朝】。二曲目は【SCENARIO】。特に"蒼い朝"は「Art Nude」では、よく歌われた選曲。 イントロで正直、「また、これか…」と思った。しかし、石井竜也が歌い始めると、息をのんだ。 なんと、円熟を増していることか。 一曲目に"蒼い朝"を持ってくる自信! 今回は、 これまでの何倍も凄いと実感させられる瞬間だった。 "SCENARIO"は、金子隆博のSAXが大人の空間を印象づける。 三曲目は、このツアー直後に発売されるアルバム「浪漫」から【KISS】を披露。 「お忙しい中、お集まりいただき、ありがとうございます。 今日は最終日でして、この『Art Nude』という催しの最後…という触れ込みでお送りいたします」観客(笑) 「今日が本当に最後の……という触れ込みでお送りします」観客(爆笑) 「言い方ですから!このところ天気がいいですね!!」 観客「エーーー!!」 暖かい日が続き、桜も思いきり早く咲いたのに、 よりによって、最終日は大雨がふったりして冷える、冷える。 しかも、いつになく、石井竜也の入りは遅く、入り待ちさん達は大変だったとか。 「桜も咲いて…ドヨーンとした曇り空に映えて」(爆笑) 「グレイとピンクって、色の相性がいいんですよ。服とかも合わせますよね、皆さん」と、 この後も、世相など徒然に話はすすみ、冒頭3曲の曲紹介へ。 「"KISS”は、こんな時代…俺について来い!と男もなかなか言えない時代に、どこまでかっこいい事を言えるかという ことで作った曲です。愛して、守っていくから!! 幸せにはなんないかも知れないけど…笑」と、いい話なんだから、オチつけなくても(笑) 「料理とかも、作っている人は自分で味わかんなくなったりするでしょう。曲作りも一緒で、作ってるときは良さが分かんなくて。石井竜也のコンサートを、俺見てみたいね。歌って、もの凄い速さで、そっち行ったりしてね。 ということで…なんだっけ? メンバ紹介をしたいと思います!!」と、やっとメンバ紹介に入った。 浅野さんは”朝の”イントネーションだわ、大儀見さんだけ呼び捨てだわ、相当に、変なテンションである。 「今日は、ゲストもありまして、ツアー中にも関わらず駆けつけてくれました。 ミュージック・フェアで共演した、上妻宏光さんです、どうぞ!!」湧き上がる大拍手。 「津軽三味線を聞きやすく、ぐっと引き寄せてくれた方ですよね。さて【游−YUU−】という上妻さんの曲と【京都慕情】を やって見たいと思います」 もう、最終日の思いもよらない贈り物に、期待のため息があちらこちら湧き上がった。 津軽三味線の音色に、体が左右にゆれる石井竜也。”京都慕情”にのる津軽三味線に、日本の様々な古都の風景が頭をよぎる。 最高の一曲を、ライブで聞けたこの日の観客は、幸せものです。 この後、本来の「Art Nude」の流れに戻り、【予感】に聞き入る。歌い終わり、しばらく沈黙。 |
開口一番、 「……ライブ前にサウナなんて、入るもんじゃないですね…」観客(爆笑) 「もんのすごい汗かきますよ。昨日(このライブの)打ち上げがありましてね。芸能人ですから、凄んごい店ですよ。 なんたって俺のですから。イタメシでね、金ガンガン使いますよ。そんじょそこらの、650円のワインじゃないですよ。 もう、本当に1000円!2000円!! ですから」(爆笑) 「もう俺、盛り上がって、俺ゃべりまくって、声ガラガラ。で、サウナに行ったら、フラフラですからネ」 サウナでは、他人同士の不健康自慢とか、筋肉ナル男さんの様子など、人間観察が面白いらしい。 でも、あんまり観察していると、時に自分がじーっと見られたりして。で、目が合って「ニコーッ」と微笑まれたりもするらしい(笑) 「危険な場所ですね、サウナは」 |
「小さい時の話をしていいですか。大学時代にですね…」もう、今日のビューティは、サウナ効果で、もう話とびまくり。 「全然、小さいときじゃないですね!(笑)面白い人がいましてね。あだ名が”ベートーベン”っていいまして、髪型がこう…」 と、ロンゲの左右わけを、手振りで表現する、クスクス。 「5つ位、上の方でね。ある日 『ネー、石井くんさー、あのさ、あのさ、コンサート行かないっ!?』っていってきたわけですよ」 ベートーベンさんの部分は、声高で、巻き舌で、ちょっと早口な田中邦衛?って感じが、すんごい可笑しい。 「『俺、約束があってですね』、断ったら、 『約束あんの、だれっ?! だれっ?!』って、 『いやー、彼女とー』って言ったら、 『彼女いるんだあ。彼女って、あの、あのっ、挿入とかするわけ?』」 もうー、会場は瞬間、サアーーと引く、引く。でも、笑う。 その様が、かなり嬉しかったらしいビューティ、 「こんなに、大勢の前で笑いものにしていいのか(笑)。もう、突拍子の無い事、言う人でねー」と、嬉しそう、嬉しそう!! 「みんなで飲み会とかあってね、遅れてきたんですよ。遅れてきたら、普通、端のほうに座るじゃないですか。 けど、真ん中に座るんですよ! そうすると、ルックスが特殊なんでね、周りの女の子達も引くんですよ。 そしたらね、 『何、今日、セイリ?生理?』 凄いっしょ!!(笑 ヒャッヒャッ) いまね、テレビでそっくりな人がでてて ”さんまのカラクリTV”!! ソックリ!!!なんですよ、もう俺、TVの前で思い出しちゃって。可笑しくて可笑しくて!」 (注.加藤純の事と思われる”さんまのカラクリTV”のホームページに、お悩み相談コーナーがあるので、参照ください 笑) 「絵を描いてる人なんですけど、ヌードデッサンあるじゃないですか? するとネッ、必ず足のほう、足のほうに、陣取るって有名でネ。ある時、他の学校と合同でね、自分の場所が取れなかったんですね!! 怒っちゃってネ。 『人間、自分の場所ってもんがあるんだよー、テリトリーがさあ!!』 最終日なのに、こんな話でいいのかなー!!」 と、でも、めちゃ嬉しそうにいいながら、浅野さんの方を振り向くビューティ! 浅野さん、あわてて、頷くんだけど、それを見る前から、また目線は前へ戻ってる。同意の意味なーいじゃん。 「聞きたい!? 聞きたい?!」客席、大拍手。 「ある時ねー、その先輩が俺のアパートに泊まりにきたんですよ。当時、松戸に住んでてね。 『石井くんさー、泊まりに行っていいかなー? 相談あんだよ。』で、千代田線で来ましてね。 まじめな人でねー、 『……石井くんさー…オンナ欲しいんだよ。オンナの人は、どーやったら、付き合ってくれんのかなー』 俺も、適当だから、『”恋人”って書いて毎日それ、読んだらどうですか?』って言ったら 『そっかー!』ってスンゴイ関心しながら、 ”変人”って書いちゃって…!(ヒャッ!! ヒャッ!! )」 可笑しくって声になって無い。しばし、やっと立ち直る。 「で、夜になってね、 『石井くんさー、お腹すいてない? 俺、スンゲー料理しってんだよ! たまねぎ一個、あればいいんだよお』 俺、イヤーーーーな予感がしたんですよ。けど、たまたま、あったんですよ! で、なべにお湯沸かして、まるごと一個いれるんですよ。 たまに爪楊枝さしたりしてね、一時間くらいたっても硬いままなんですよ。 『固てーなー、じゃー、レンジに入れよう!』 って、 いれたら”バーーーン”って爆発して、レンジの中、たまねぎが層なしちゃって。 そういう先輩がいたって、そんな話なんすけど、 思い出しちゃって、もう、俺、絶対!! みんなに教えなきゃって思って!!」 |
「と言うわけで、次の曲なんですけど、一月に実家に帰りまして、海沿いの堤防を歩いてたら、 釣りをしているおっちゃんがいたんですね。バケツに小魚が入ってましてね…」ここから、ニューシネマパラダイスが生BGM演奏。 「ふっと顔を見たら 『おー、石井!!』 同級生だったんですよ、凄いおっちゃん化しててね。 『座れよ、何やってんだよッ!!』 『相変わらず歌やってんだよねー、何やってんの?』 『俺は…、釣りやってんだよ』 『猟師やってんの?』 『船売っちゃって、猟師やめたんだよ』 『そっかー、じゃ、何やってんの?』 『だから、釣りやってんだよ』……… 『いろいろあるねー』、 そしたら向こうから、青年が走ってきて、おむすびと牛乳を渡してるんですよ。 『誰?』って聞いたら、 『息子なんだよ』 うわーって思って、なんでこんな開きがあるんだろうと思ってね。 また、いーい、親子なんですよ。コンビニおむすびの海苔を息子が巻いてやったりして『おやじ、貸せよ』なんてね。 『就職決まったのー?』って聞いてたら、 『ハイ、雪印』 『そっかー』」遠い目になる石井竜也。 「なんか、俺はずいぶん遠回りしちゃったのかなー、なんて。人生って人と比べるものじゃないんだけど、どっかの瞬間で、 くらべちゃうんだね。でも、二人の関係が羨ましかったですね。みな、自分なりの人生を歩んでいくんだけど、大切なのは、 いま自分が幸せだなって思うことを、高いところに設定しないことだよね。俺の仕事なんか、ステージは華やかかもしんないけど、 意外に地道にちまちま絵描いて、スタッフに、こんなのどうですかねー?なんて積み重ねなんですよ。そんな事を思いながら、 作った曲です、【透明】」 |
ニューアルバムからの新曲。当たり前のように子供時代を過ごしてしまって、今は少し後悔している、 という歌詞に、みな、それぞれの子供時代の風景を写したのではないだろうか。 第一部も終盤にさしかかる。 「解散した後、2〜3年、米米CLUBの名前を使われるのが嫌でね。でも、一年くらい前から、無性に米米の曲が聞きたくなった んですよ。夜中に聞いたりしてね。すると、すごいイイ曲が多いんですよ。料理を作ってる人が(味)分かんなくなっちゃう のと同じで、今になって分かって、米米が支持されてたのは、曲良かったんだなって、思ってます。新鮮にいま、米米の曲を 歌ってます。って事で【Eことあるさ】と、新曲の【ON MY OWN】を聞いてもらいます。 ”ON MY OWN”は、自分に向きあうって事で、いろいろ人生、壁があって、そんな時、騒いで忘れるって、 いうのもあるけど、たった一人で自分って、どんな人間なんだろうって考えて見るのも、いいんじゃないかって考えて、 作りました。じっくり、聞いてください」 米米から、なつかしのナンバー、そう92年のアルバム"Octave"に入ってるんだよね、あれから10年もたってるのか……。 あんまし好きでも嫌いでもない曲だったけど、 バブルな頃より、いま聞くと、歌詞がしみてくる。信じたくなる、ウン、名曲。夜空の向こうには、光があるよね。”Eことあるさ♪”、”ON MY OWN”も自分の道は、必ず明日へ続いているってところで、根底に流れるものは同じだと感じさせられる。 ベートーベンの話(笑)から、一転、人生まで振り返らせれる石井竜也の凄み。 観客の気持ちの高ぶりを表すかのごとく、演奏の音はうねり、ますます高まってゆくなか、石井竜也は袖に消え、 風切り音が残った。 |
第二部には、再び、上妻宏光氏も登場。後ろに控えていた老人の顔は、90度回転し卵形になって、そこにARTを描いていくのが、 今回の趣向。三味線が入ることによって、より日本的な陰影を強くしたBGMで、この日描き上げたのは、その名も「卵(らん)」。 中央に金色の丸を描き、そこから、上下に線を入れる様は、受精しているような、卵分割してるようにも見える。 バックの音楽に混じってかかるお経がより一層の生の様を思わせるのか。全体の色使いは、クリーム系だが、最後に、つけられた、 赤の絵の具が縦に、たくさんの線となって伝いおり、血となって、それもまた生と、その業を感じさせるそんな作品だった。 そして、本当に最後の曲へ。 「面白い作品になったと思います。(中央の円が)日本の国旗のように見えるし、血を流してるようにも、 みえますね。さて、これで、帰っていただくのもなんですので…」ということで、【あなたに】へ。 歌い終わっていつまでも、 鳴り止まぬ拍手の渦の中「ありがとう」の言葉。メンバが退場したあとに、もう一度だけ、一人ででてきた石井竜也は、深々と おじぎをして、「Art Nude」は幕をおろした。 |