処刑人  ★★★+★

【1999年 : アメリカ・カナダ】
 監督:トロイ・ダフィー/音楽:ジェフ・ダンナ
 出演:ショーン・パトリック・フラナリー(コナー・マクナマス)    ノーマン・リーダス(マーフィー・マクナマス)、
    ウィレム・デフォー(ポール・スメッカー)、
    デイヴィッド・デラ・ロッコ(ロッコ) 他

神の啓示を受けて悪人を処刑する兄弟を描いたバイオレンス・ムービー。
サウスボストンの精肉工場に勤める双子の兄弟コナーとマーフィーは敬虔なカトリックで、故郷を離れた今も教会に通い日々の礼拝を欠かさない。そんな彼らの楽しみの一つは馴染みのバーで仲間たちと騒ぐことだが、聖パトリックの祭日に街も湧くある日、店の取りつぶしのために乗り込んできたロシアン・マフィアと喧嘩になる。その場は勝ちを得たふたりだったが、翌日住まいのアパートまで乗り込んできたマフィアたちに殺されそうになり、正当防衛から逆にマフィアたちを殺してしまった。
事情を聞いた警察からも情状酌量で放免されたコナーとマーフィー。だがその晩、寝床代わりに借りた留置場で不思議な啓示を受ける。曰く、「悪なる者を滅ぼし、善なる者を栄えさせよ」。それが神の声と信じたふたりは、世にはびこる悪人たちを自らの手で粛清する決意をするのだが・・・。

ええと、まず何はともあれ兄弟が素敵です。いくら双子設定だからって、同じ服装、同じグラサン、対のタトゥーでおそろいの仕草。いるかそんな兄弟!(悶)
ストーリーを一見しただけでも相当無茶な兄弟ですが、どちらかといえばいくらか冷静なお兄ちゃんがショーン・パトリック・フラナリー。なつこい仕草に短気な性格、ちょっとやんちゃな弟にノーマン・リーダス。見栄えは相当いい二人組です。
FBIのちょっとヤバイ捜査官、ポール・スメッカーを演じるのはベテラン 、ウィレム・デフォー。これがまたものすごい。あっぱれ。さすが。兄弟の親友ロッコを演じたのは監督の弟の友人だそうで、役名はそのまま本名のデイヴィッド・デラ・ロッコ。5年も前に俳優引退してたのを引っ張ってきたんですってよ。
兄弟の故郷がアイルランドということもありまして、私の好きなケルト系の音楽がたくさん使われてることもポイント高いです。その他モロモロの理由から★一個オマケ。
あまりに過激な銃殺シーン満載ということで本国アメリカでは公開延期にもなっちゃった曰く付きの作品ですが、諸外国では意外にウケがよくてただいま続編制作中。しかしあんまりのんびりしすぎて主役がすっかり年くってきました。 20代後半の設定だというのにお兄ちゃんなんかもう40目の前です。どーすんの!
とか言いつつも、続編がものすごく楽しみなB級娯楽作品。



 ショコラ  ★★★★

【2000年 : アメリカ】
 監督:ラッセ・ハルストレム/音楽:レイチェル・ポートマン
 出演:ジュリエット・ビノシュ(ヴィアンヌ)、
    ジョニー・デップ(ルー)
    ジュディ・デンチ(アルマンド)、
    レナ・オリン(ジョセフィーヌ)
    アルフレッド・モリーナ(レノ伯爵)  他

因習を頑なに守り続ける村へ訪れた不思議な母娘が、チョコレートを売りながら人々を幸せに導くファンタジックストーリー。

ヒューマンドラマが得意なラッセ監督なだけに人々の細かい描写は相変わらず丁寧。
とはいえ全体的にはおとぎ話を思わせる世界観なので、彼の感性によってちょっとリアルさが足されたのかなあという程度です。 難をいえば、せっかくフランスが舞台なんだからフランス語で作ってほしかったかも。それだと役者がごっそり違っちゃいましたか?
いろいろ問題ある男たちも登場しますが、この作品に根っからの悪人は誰もいません。自分が正しいと思う方向に突っ走ったために、ちょいとボタンを掛け違えただけなのです。
主人公のヴィアンヌもまた、きまりごとにとらわれない陽気さで村人の心を開いていく一方で、母として生きる上ではさまざまな葛藤を抱えています。誰もが悪人ではないし、誰もが完璧なわけではない、そういう登場人物たちをチョコレートという魔法(かつては媚薬としても使われていた古代からのスパイス)によってまとめあげているのでしょうね。

美人なのかそうでないのかよくわからないジュリエット・ビノシュ、陽気な時は溌剌と顔が輝き、打ちひしがれている時はそこまでやるかというすっぴんぶりで不思議な女主人を演じ分けています。そんな彼女と惹かれ合うジプシーにジョニー・デップ。彼がいなければこの映画の魅力は半減です。と、ジョニー贔屓の私は信じて疑いません。カッコエエおっさんになってくれてありがとう。
人にも自分にも厳しいけれども、それゆえにどこかコケティッシュなレノ伯爵にアルフレッド・モリーナ。あのチョコレート暴食シーンは迫力モノです。胸ヤケしませんでしたか?
ジュディ・デンチは言わずもがなの存在感です。その娘役にキャリー・アン・モス。この人といえば「マトリックス」のトリニティなわけですが、こうやって普通のお母さんの役をやるとそれはそれで結構似合うことにちょっとびっくり。あと、レナ・オリン演じるジョセフィーヌ。すごく魅力的でした。心が強くなるにつれてどんどん綺麗になってく過程が気持ちよかった。彼女はラッセ監督の奥様でもあります。
この作品を見るとチョコレートを食べたくなる、という話をよく聞きますが、結構見てるだけで胸いっぱいです。でも最後のシーンがとても好き。音楽との絶妙な組み合わせで、ほかほかと心和む作品です。



 ジョー・ブラックをよろしく  ★★★☆

【1998年 : アメリカ】
 監督:マーティン・ブレスト/音楽:トーマス・ニューマン
 出演:ブラッド・ピット(ジョー・ブラック)、
    アンソニー・ホプキンス(ウィッリアム・パリッシュ)
    クレア・フォラーニ(スーザン・パリッシュ) 他

青年の姿を借りて人間界にやってきた休暇中の死神と、そうとは知らず恋をした人間の女性とのファンタスティック・ラブストーリー。
・・・・う〜ん、なんと間の抜けたあらすじだろう。でも本当だから仕方ない。
天下のブラピ作品の中で、ストーリーはともかく彼の映りが群を抜いて美しいと評判の一品です。ブラピファンは見るしかない。ピーナツバターのスプーンをくわえて嬉しげにコドモ笑いをする彼が見られます。
死神が休暇中ってナンダとか、ネクタイ結べないのに国税局を知ってるのはナゼダとか言ってはいけません。ファンタジーファンタジー。
アンソニー・ホプキンスの威厳ある芝居がこのちょっとアホそうなストーリーをきちんと締めています。彼と娘たちとの別れのやり取りはうっかり胸に沁みるかもしれません。すべてレクター博士あればこそです。(役名違います。)
クレア・フォラーニはいくぶん女狐ちゃん系ではありますが、スタイル抜群で知的な感じがようございました。 ブラッドさんに関しては最初に褒めちぎっておいたのでもういいでしょう。爽やか好青年な人間の彼と、まばたき少な目の死神な彼、一粒で二度おいしい仕様となっております。
それにしても180分は長尺すぎる。もう少しトントン話を進めてくれた方が見やすい作品になったかと思いますが。



 スウィート・ノベンバー  ★★

【2001年 : アメリカ】
 監督:パット・オコナー/音楽:クリストファー・ヤング
 出演:キアヌ・リーヴス(ネルソン)、
    シャーリーズ・セロン(サラ)、
    ジェイソン・アイザックス(チャズ)、
    グレッグ・ジャーマン(ヴィンス)、
    リーアム・エイケン(アブナー) 他

サンフランシスコの一流広告会社に勤める仕事人間のネルソン(キアヌ・リーヴス)はある日、自動車免許の更新場で風変わりな女性サラ(シャーリーズ・セロン)に出会う。なにかとつきまとってくる彼女はそのうえ、この11月の間、1ヵ月だけの恋人にならないかと提案してきた。彼女の強引な態度や、一緒に住むこと、仕事を一切してはいけないなどの一方的な条件に困惑するネルソンだが、結局承諾することになる。
共に過ごすうち次第に彼女に惹かれ、恋におちていく自分を感じるネルソン。だがサラには決してネルソンに言えない秘密があった・・・。

これまで私が見た中で、いけてないメロドラマ三本指に入ってしまう作品です。これが好きだという方には誠に申し訳ない。なにもかもきれいごと過ぎて感情移入はさっぱりできず(まあ他の作品ならするかっていうと特にしませんけど)、肝心のラストにも納得がいかないという困ったちゃんな一本になってしまいました。
シャンプーの泡で髪をつんつんにされてる、ネオでないキアヌ・リーブスは妙にかわいかったし(見ようによってはキャラ的にちょっと無理があるかもしれないけど彼のことは嫌いじゃありません)、シャーリーズ・セロンの演技もあの場面以降はリアルすぎるくらいの熱演ぶり。そのあたりが救いと言えば救いかなあ。
しかし映画本編よりメイキングでじゃれ合ってる二人を見てる方がよっぽど面白かった。
というどうしようもない感想でスイマセン。



 スケアクロウ  ★★★★☆
【1973年 : アメリカ】
 監督:ジェリー・シャッツバーグ/音楽:フレッド・マイロー
 出演:ジーン・ハックマン(マックス)、
    アル・パチーノ(ライオン)、
    ドロシー・トリスタン(コーリィ)、
    アン・ウェッジワース(フレンチィ) 他
    ※【現在VHS発売のみ】

ヒッチハイクで出会った二人の男が、旅の中で次第に友情を深めていくまでを描くロード・ムービー。
6年の懲役を終えて刑務所から出てきたばかりマックス(ジーン・ハックマン)は、南カリフォルニアの田舎道で同じくヒッチハイクをしていた青年ライオン(アル・パチーノ)と知り合う。マックスは洗車店を始めるためにピッツバーグへ向かう途中、デンバーに立ち寄って、唯一の肉親である妹コーリィ(ドロシー・トリスタン)を訪ねてみるつもりだった。一方ライオンは船員生活から5年ぶりに帰ってきたところで、自分の居ない間に生まれた子供に会うため、妻のもとに向かう途中だという。意気投合した二人は一緒に洗車店を始めることを約束し、それぞれの目的地まで共に旅することにしたのだが…。

若くてピッチピチのアル・パチーノを堪能できる名作です。今でも充分男前なぱちーの、若い頃はさらに可愛くてハンサムなのですが、ともかく演技力が凄まじいので、その可愛らしい顔は一瞬にして別人に早変わり。
その痛々しいほどの変わりっぷりに感心するやらドキドキするやらで大変です。もちろん私が。
喧嘩っ早くて恰幅もよく、ちょっと横柄なオジサンであるマックスと、彼のどこを気に入ったのか、ひたすらちょこちょこと相棒の後を追っていくお人好しの青年ライオン。身長が168センチしかないぱちーのが188センチのハックマンと並ぶとまるで親子のようであります。
なんといっても、そんなマックスが寝支度のために服を次々脱いでいくシーンが傑作。脱いでも脱いでもまだ下に着ている。その様子をきょとんと眺めているライオンのこれまた愛らしいことよ・・・。(笑)
カカシはカラスを怖がらせるのが仕事ではなく、その畑だけは勘弁してもらえるようにカラスを笑わせているのだと話すライオンを、バカバカしいと一蹴するマックス。しかし「なぜ自分を相棒に選んだのか?」と尋ねるライオンに対する彼の答えは、「最後の大切なマッチをくれたし、俺を笑わせてくれたから」なのです。
苛酷な荒野の旅では火種はまさに命の灯火。それを自分の葉巻のために譲ってくれたのが嬉しかった、という彼の言葉からは、マックスが自分で言うほど粗野な人間でないことがわかります。そして、頼まれもしないのにいつも道化を演じているライオンが、それを聞いてはにかんだあの柔らかい笑顔!うーん、絶品絶品。

<以下、ネタバレ注意>

さて、やがてある事件を機に、優しく陽気な青年だったライオンの心に徐々に影が差していきます。
噴水でのあの悲しいシーンでは、字幕こそ出ていませんが、よーく耳を澄ませるとライオンが「I Love you・・・・I Love you」と呟いているように聞こえる。そして小さく「・・・Help me」とも。
誰にでも笑顔を見せ、いつでもカカシであろうとした人懐こいライオンは、その反面なぜか家庭に留まることができなかった人です。もしかしたら彼はマックス以上に淋しい心の持ち主だったのかも。マックス兄妹を眩しげに見ていたわけも、笑わせることを覚えたマックスを複雑な表情で眺めたわけも、本当はそこにあったのかも。彼はただ愛情が欲しかったんだなあ、と、そんなことを思うとなんともせつない限りです。
事情を知らず、どちらかという大雑把な性格のマックスが、ライオンの負った心の傷を本当の意味で分かち合えるかどうかはわかりません。でも彼は彼なりのやり方で、きっとライオンの傍に居続けることでしょう。
そしてまたライオンもいつの日か、この世で一番信頼しているマックスの近くで少しずつ、あの笑顔を取り戻してくれるといいなあと思ったりしました。 ともかくこれは、私が格別好きな映画のひとつです。



 スパイダーマン2  ★★★★

【2004年 : アメリカ】
 監督:サム・ライミ/音楽: ダニー・エルフマン
 出演:トビー・マグワイア(ピーター)、
    キルスティン・ダンスト(MJ)、
    ジェームズ・フランコ(ハリー)、
    アルフレッド・モリーナ(ドック・オク) 他

かつての強敵、グリーン・ゴブリンとの死闘から2年。ピーター(トビー・マグワイア)は大学で科学を専攻する傍ら、バイトに明け暮れ、そしてひとたび事件が起こればスパイダーマンとなってニューヨークの街を飛び回るという多忙な生活を送っていた。
一方、女優の夢を実現させたメリー・ジェーン(キルスティン・ダンスト)はピーターへの想いを断ち切り、新しい恋人との未来を踏み出そうとする。そんな彼女に祝福の言葉をかけながらも、真実の姿を誰にも理解されない孤独に疲れきったピーター。そしてついに彼はスパイダーマンを辞める決心を固める。
だがそんな時、コンピュータに意志を乗っ取られた天才科学者、ドック・オク(アルフレッド・モリーナ)が出現。ピーターはスパイダーマンとしての決断を迫られるのだが・・・。

おもしろーい!すんげ面白かったです。なんとなくで劇場まで見に行ってしまいました。前作すら見ていなかったのですが、 前作のあらすじ程度知っていれば充分楽しめました。
やはりスパイダーマンが街を滑空するシーンは爽快だし、その他のアクションシーンもとてもよくできてた。なんというか、あのキャラクタならではの動きというのがあるんですよね。動物っぽいというか、軟体動物系の。それが滑らかでかっこよかった。
そして何より、心理面でのドラマ性が程良く織り込まれていた点に好感が持てました。正義をただ振り回すのではなく、中身はただの平凡な若者であるピーターが、理解されない孤独に悩みながらも頑張る姿がちょっと青春ドラマの甘酸っぱさも漂わせます。スパイダーマンと市民たちのやりとりもすっごく王道。でも不思議とやらしくないんだな。
今回であそこまで事情が明らかになるとは思わなかったので最後の展開ではちょっとビックリでしたが、これもまあ次作への布石なんでしょうかね。ピーターを見送るMJの複雑な表情とか。親友ハリーの意味深な行動とか。現時点ではまだ一部公開中なので詳しいことは書けませんけども、娯楽映画好きには迷わず勧められる作品です。ヒーロー物としてはかなり気に入った!