代表的なST管式並三ラジオの構成は6C6−6ZP1−12Fですが、球の入手が非常に難しくなっ
ているので代用策を考えてみました。
ST管で現在でも比較的入手の容易な球は、低周波増幅などに幅広く使われた76と五球スーパー用に
使われていた6D6、6ZDH3A、42、80くらいしか無く、この中から代用となる球を考える訳で
すが、出力管42と整流管80は電流容量の少ない並三ラジオに流用することは難しいでしょう。残るは
6D6や6ZDH3A及び76なのですが、検波管については6D6がそのまま使えます。私のセットで
も初めから6D6を使っています。両者の違いはシャープカットオフ特性とリモートカットオフ特性で、
五球スーパーではAVC(オートボリュームコントロール)をかける為にリモートカットオフ特性を持つ
6D6が使われました。かつては6D6のほうが高級で値段も高かったのです。また、感度はやや落ちま
すが6ZDH3Aを検波管に使うという手もあります。一球ミニラジオでも同様ですが、検波管に三極管
を使ったセットはよく見られます。一方、整流管については適当な代用管が無いのでダイオードを使うし
かありませんが、直流電圧が高くなるので二百オーム程度の抵抗を入れると良いでしょう。外観を気にす
るのであれば、切れた12Fをそのまま挿しておけば良いのでは??(意味が無いのは承知の上ですが、
今さらST管に拘るのは見た目などの趣味の問題でもあるのですから・・・)
それはともかく、一番の問題なのは出力管6ZP1の代用管で、出力管の中では小型省エネタイプなの
で代用できそうな出力管は見当たりません。小型の並三トランスの電流容量がネックになって、42等の
中型出力管が使えないのです。まず考えられるのは三極管の76を使う方法ですが、RCAから発表され
ている特性図にロードラインを引いてみたところ次のようになりました。
Eb 250V Ec1 -13.5V RL 12k Eg1 6V Ib 5mA Po 170mW
Eb 250V Ec1 -13.5V RL 24k Eg1 9V Ib 5mA Po 370mW
出力が少ないのは仕方ないとしても、負荷12Kで半分になってしまうのは、動作点が最大プレート損
失1.4W に抑えられロードラインのカットオフ側が詰まってしまうからです。負荷抵抗の低さも響いて
いるようなので、76を使うのであれば16オームスピーカーを繋いで負荷24Kとするのが良いでしょ
う。また感度の悪いのも気になるところで、出力は0.4W 程度でも入力は10V近く必要です。並四や
高一のセットならばこの球でも何とかなりますが、並三ラジオの出力管としては不向きのようです。
つぎに考えたのが6D6を使う方法です。高周波増幅管の中でも6D6などのリモートカットオフ管は
あるていどの電流を流して動作させるので、プレート損失なども6C6より大きくなっています。注意す
るのは第二グリッド電圧で、100V程度に抑えなければなりません。動作例でも「 Eb250V Ec2 100V
Ec1 -3V Ib8.2mA Ic2 2mA 」となっていますが、実際にどれくらいの出力が取り出せるのか、出力管と
しての動作例がないので特性を測ってみる事にしました。
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6D6 Used Ec2 100V
\Ec1
Eb\ | 0V | -3V | -6V | -9V |
200V | 14mA | 8mA | 4mA | 2.5mA |
100V | 13mA | 7.5mA | 4mA | 2.5mA |
50V | 11mA | 7mA | 4mA | 2.5mA |
Eb 250V Ec2 100V Ec1 -3V Ib8.2mA
Ic2 2mA Eg1 2.1V RL 12k Po 150mW
Eb 250V Ec2 100V Ec1 -3V Ib8.2mA
Ic2 2mA Eg1 2.1V RL 24k Po 260mW
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図にすると一目でわかるのですが、76と同様に最適負荷(50kぐらい)に較べRLが低いので出力
はあまり取れません。しかし電力感度が良く並三ラジオ用の出力管として使えそうです。16 ohmスピー
カーを繋いで負荷を24Kとした場合に、動作点を下げればもう少し出力は上がりそうですが、リモート
カットオフ管でカットオフ側まで使おうとすると歪が多くなるので、この辺りが良いと思います。ラジオ
の検波管には、もっぱら6BA6などのリモートカットオフ管を使い、6AU6等のシャープカットオフ
管はオーディオセット用にまわしてしまうのも、これらの事が理由です。
実際に出力管として動作させるには第二グリッド電圧(Ec2)の供給方法に工夫が要るようです。そ
れは6AR5などの動作例にあるように、出力管の第二グリッド電流は振幅時には大きく変化するからで
す。6D6のEc2は100Vですから、プレート電圧から抵抗で降下させた場合には、電流による電圧
変動の不安があったのですが、高周波増幅回路では抵抗で電圧降下させているので、6D6では電流変化
が少ないと考え、同様の方法にして念の為にブリーダー抵抗を追加しました。
どうしても電圧変動が大きい場合は安定化電源にしようかとも思っていたのですが、検波管を発振気味
にして大入力を加えた状態でもEc2の変化は数ボルト以内でしたので、これで良しとしました。出力は
少なくなりますが16 ohmスピーカーを繋げば0.3W近く出ますし、感度も低下せず、ソケットも6Z
P1と同じUZ型なので、並三ラジオでの6ZP1の代用管には6D6が良いと思います。
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