思 い つ き コ ラ ム U



LUXのSQ−38Dが6BQ5を採用してリバイバルされましたが、

以前の出力管6R−A8の代用管がないものか検討してみました。





同じ様に入手困難な球の代用管では

 以前LUXのA3600に使用されていた出力管8045Gの代用管について、森川忠勇先生

が詳細に解説されていて、主にGE6550を推奨されていましたが、これは後でLUX自身も

A3550として製品化していました。そこで同様に入手困難なLUXのSQ−38Dの出力管

6R−A8の代用管について、友人が入手に苦労していたので、検討してみることにしました。

条件としては、6R−A8のように 300Vで 15W近く出せる三極管あるいは五極管の三結(以後

三極管)となるのですが、それらを以下に列記してみたいと思います。


SQ−38Dでの6R−A8の動作条件は

 まず電源トランスのB電圧が 135Vの倍圧整流なので、固定バイアスで 320Vから 330V前後の

電圧が掛かっています。6R−A8にとっては少々きつい電圧のようで、弱い球という評判の一

端になっていたようです。出力は減りますが、自己バイアスに変更して実質のB電圧を下げて使

用する方が、長寿命が期待できるでしょう。また専用トランスのようでヒーター電流に余裕はあ

りません。


S T 管

 ST管では2A3があるのですが、今では球も高価ですし、ドライブ電圧もヒーターも大きく

違うので、代用させると言うよりも、全く別の回路に成ってしまいます。スペース的にも、とう

てい収まらないでしょう。

G T 管

 GT管では大出力管の 6G−B8(8417)を軽く動作させるという手もあります。300V

での動作例はないのですが、三結の平均プレート特性図をながめると、少なくても 12W以上は出

そうです。しかしもともとが大出力管なので大電流を流しますし、狭いスペースでは放熱が問題

になりそうです。

 次に6BX7を考えてみたのですが、双三極管の為プレート損失が少なめで各ユニットを別々

に動作させると思ったほど出力が取れません。しかし両ユニットをパラで使うと、動作条件とし

ては6R−A8に近くなります。ヒーター電流が 1.5 Aになりますが、(要追加ヒータートラン

ス)外観もGT型としては小型なので、ソケット交換の為のシャーシ加工をも辞さない気があれ

ば一応の候補にはなるでしょう。

9T9 管

 9T9管は、ピンは9MTと同じでバルブの太さがGT管ぐらいある球なのですが、テレビの

垂直出力用、垂直発振用の6EW7という複三極管が使えそうです。オーディオ出力管としての

特性表がないので、動作させてみないと確かなことは言えないのですが、最大定格と垂直出力動

作時の内部抵抗を見るとなかなか良さそうです。ただし、SQ−38に使う場合は、垂直発振用

の片ユニットを遊ばせておくという、かなり変則的な使用法になってしまいます。

M T 管

 一般的な球では6R−B10、6R−A6が良さそうですが、今ではこれらも6R−A8以上

に入手困難でしょう。

 最後にテレビの垂直出力用の球でオーディオ用にも広く使われていた6CW5が、6R−A8

の代用管になるとの情報がインターネットのホームページに載っていました。さらに三結時の特

性図も載っていて6R−A8に近い特性になっています。しかし6CW5の最大定格は250Vから

275Vとなっているので、前記のように330Vでの動作はかなり無理を掛けることになります。自己

バイアス動作として多少オーバーしたとしても実質300V以下で使用するようにしなければ球を痛

めてしまうでしょう。


と言うわけで

 今まで検討したように、なかなか最適な出力管は無かったのですが、LUXが新SQ−38を

五極管の6BQ5でリバイバルさせるのは、賢明な選択だったのかも知れません。しかし私も含

めて、三極管信仰に浸りきった今日の管球オーディオファンに、このアンプが受け入れられるか

は、いくぶん不安に感じるところです。どうしても三極管を使うなら、6CW5あたりなのです

が、三結動作の最大定格が一般的ではないのと、球の供給量の問題で、商品としての責任を負う

メーカー製のセットでは敬遠されたのでしょう。

 MJ誌99/12月号に新SQ−38Dの回路図が載っていましたが、電源電圧 280Vの自己

バイアス動作になっていました。これならばさほど無理をかける事もなく6CW5が使用出来そ

うなので、我々が自分で改造する分には第一候補になると思います。


今後の課題

 上記で第一候補に挙げた6CW5の三結は、最大定格電圧をオーバーする動作となるのが唯一

のネックなのですが、テレビ用の球はオーディオ用の球よりも概して丈夫に出来ていますので、

定格オーバーがどの程度球の寿命に影響するのかを、実験用のセットを組んでの長時間動作で試

してみたいと思っています。





6G−A4の場合は


 ついでに6G−A4の代用管についても検討してみました。普通に考えるならば6BX7の片

ユニットが同じ特性なのですが、(6G−A4は6BX7の片ユニットを独立させたもの)先に

述べた理由で同等の出力は取り出せません。また両ユニットをパラ接続にすると一本あたりヒー

ター電流が1.5Aとなり倍も必要です。300Vから350V前後で 10Wの出力ならば 7591の三結で

も 12Wほど出せそうです。とりあえずソケット周りの配線とバイアスを変更すれば、同等に使え

ると思います。さらに 340Vならば6L6でも 10Wの出力が出せます。6L6ならば類似管の種

類も多いので入手や保守には苦労しないと思います。

 またMJ誌99年1月号にTV用の垂直出力管6CK4の製作例と、同管及び6AH4GTの

規格が載っていましたが、その製作例は 310Vで 10W近い出力を出していて6G−A4と同等の

動作をしていました。これらの球は欧米でしか生産されなかったらしく日本の規格表には載って

いないのですが、入手が容易であれば6G−A4の代用管には最適のようです。




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