6LM8A PP 試作レポート



 前章のアンプを思い立った時に、当初考えたPK分割式位相反転回路でも特性を採っていたので、オートバランス型への途中経過という事で、以下に纏めてみました。
 なおOPTにはチョロQトランスを使っていますが、いつも試作セットに使っていた並品トランスは、何度も使い回して換装される度に、リード線は短くなり足の爪は折られて、当バラックセットに取り付ける為に足を元に戻して折り返そうとしたら千切れてしまいそうだったので、もう一組の未使用の方の並品トランスを使う事にしました。このトランスは並品にしてはアバレの少ないものですが、6U8A類似管6LM8Aとの組み合わせで特性を採りました。回路としては以下のようにオーソドックスなもので、出力段はOPTに合わせてKNFにしています。



これも電源についてはこの回路図とは違って絶縁トランスで供給しています。一方、6LM8Aはプレート損失が6U8Aなどより一回り大きいと思われるので、B電圧はもっと上げても大丈夫だと思いますが、そうすれば出力的にも有利になりチョロQトランスの能力をよりいっそう生かせるでしょう。



 諸 特 性


歪率については、今回はさほど

重視していないので、追い込み

も十分ではなく、あまり素直な

特性にはならなかったのですが

それでも2Wまで低歪みを維持

しています。また低出力側も球

を選別して残留ノイズを減らせ

ば、もう少しは低歪みになると

思います。



無歪出力2.1W THD1.3% 1kHz

NFB  約6.9dB+KNF

DF=4.8 on-off法1kHz 1V

利得 15dB(5.6倍) 1kHz

残留ノイズ 0.66mV




 つぎに周波数特性を採ってみたところ、並品チョロQとの組み合わせなので、やはり少しアバレがありましたが、微分補正330PおよびOPTの1次側に積分補正220P+4.7kを入れたところ、以下のように盛り上がりを押さえる事が出来ました。




さらに方形波応答を観測すると、やはり補正無しではオーバーシュートが目立ちましたが、不思議な事に負荷解放でもオーバーシュートの高さには、あまり変化がありませんでした。つまり高域のスタッガ比がきちんと取れているので、たとえ多少のアバレはあっても回路としては安定しているという事かも知しれません。このあたりの事は、もっと特性の悪いトランスで試してみればはっきりするのですが、それでも少しは他の並品トランスの参考にもなると思います。個々の補正については微分補正の効果が大きいようでしたが、念のために積分補正も入れると以下のようにほぼ整った波形になったので、これで最終特性としました。




NF量が少なくて出力も少ないという事で、当初狙っていたチョロQトランスを効果的に使う、というレベルには達しなかったので、いつか6GW8のようなもっと高感度高出力な球で再度の実験をしたいと思います。

ただ、前章のオートバランス型と較べると、トランスが違うので単純には較べられませんが、私はPK分割式よりもオートバランス式の方が様々な面で好ましいように感じました。データー的に一番大きな違いは裸利得で、オートバランス式の方が2倍の利得になる分、NFも多く掛けられて有利になるのではと思います。




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