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オーディオ関連のHPで真空管式OTLアン
プを紹介しているぺージは非常に少ないのです
が、それは大出力設計でなければ効率が悪く、
また電源トランスにも特注品が要求されるなど、
なかなか手軽にはトライ出来ない条件があるか
らだと思います。本機は特注部品は使用してい
ませんが、そのあたりの工夫も含めて紹介した
いと思います。
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私がOTLアンプを作ろうと思ったのは、かなり昔のことでした。その頃は真空管式のテレビ
が半導体式に切り替わる頃で、あちこちの道端や空き地に捨てられたテレビが転がっていました。
それらの真空管をせっせと拾い集めている内に水平出力管だけでも数十本は集まり、これを使っ
てOTLアンプを組んだのが事の始まりでした。ほとんどの部品が寄せ集めで、新品はシャーシ
だけという25E5を4本使ったセットでしたが、意外にまともな音が出たのを覚えています。
そのようなOTLアンプを何台か作ったりしている内に、これなら新品の部品できちんと組めば、
もっと良いアンプが出来るのではないかと思って製作したのが本機です。
まず出力管を6AS7Gにしたのは、値段が安くまたST管に似たスタイルが気に入ったから
です。また出力トランスの予算を浮かすのも狙いの一つでしたので、高価な球は使いたくなかっ
たのです。6AS7G(6080)はOTL用の球としては代表的な球でしたので、以前よりい
くつも回路例は発表されていたのですが、本機は斉藤宏嗣先生が電波技術誌に発表した回路を参
考にしました。ところで真空管式SEPP回路で特徴的なのは、「打ち消し」と呼ばれるPPの
バランスをとる回路があることです。何故これが必要かというと、出力部を見てもらえばわかる
ように、下側の出力管は普通のプレート負荷として動作しますが、上側の出力管はカソードフォ
ロワーとして動作します。PPのお互いが全く違う動作をするので、このままではバランスが取
れません。そこで考えられたのが「打ち消し」で、本機の場合は出力電圧の一部を上側のドライ
ブ電圧に加える、ブートストラップと言われる正帰還型の打ち消し回路です。国内では代表的な
打ち消し回路ですが、考案者が日本人だったので、海外で採用される事はほとんどありませんで
した。有名なフッターマンアンプも何種類か発表されたのですが、打ち消し回路はそれぞれ違っ
ていました。他にもテクニクス式や最新のネガポジ式など様々な方式があるのですが、とにかく
OTL回路は現在の真空管回路の中でも解析が難しく、雑誌等に掲載される記事の中にも誤りが
散見されるほどで、それだけ研究や追試のやり甲斐がある回路です。
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原回路の電源部はやはり特注トランスだったので、既製品で済むように設計し直しました。当
時はまだOTL用のトランスは発売されていなかったので、TANGOのMS-330を使用したのですが、
電圧が高く電流容量は不足気味なのでチョークインプット式としました。ところがそのチョーク
がビービーと鳴ってしまうのです。正負電圧それぞれは半波整流のすかすか脈流なので、これは
チョークのせいではないのですが、何とかしなければ使い物になりません。そこで前段に小容量
のCを入れたところ、コア鳴りを止めることが出来ました。またこのCの容量を増やすことで出
力電圧を微調整することも出来ます。ただしこれにケミコンは使えません、過大リップルとなり
ものの数分で破裂してしまいます。
また、一つの巻き線からドライブ段用の高電圧も取り出さねばならず、これは半波倍圧整流と
したためCだけではリップルが多いので、ここにもチョークが必要です。合計3個のチョークが
並ぶシャーシ上はOPT付きのセットの様になってしまいました。
製作のポイントとしては
1.今なら電源トランスは TANGOの MS-400をコンデンサーインプットにするのが良いと思い
ます。ただ半波整流なのでやはりチョークは必要で、MC-3-350Dが良いと思います。
2.6AS7は少なくとも10本ぐらいは用意して下さい。そして調整中はプレートから目を
離さないようにして、赤くなり出したらすぐに電源を切って下さい。この球がいったん暴
走しだしたら、グリッド電流のためにバイアス電圧での制御は利きません。バラツキも多
い球なので交換するしかないのですが、OTL以外ならまだ十分使えるので捨てることは
ないです。
3.バイアス調整は1ユニットあたり40mA、1本 80mAになるようにしますが、バイアス電圧
への反応は非常に鈍く安定するまでに5分以上はかかります。また回路図には片Ch分し
か示してありませんが、調整用のボリュームは左右別々とします。
4.私の場合は球を選別することで、上下のバランスの取れた状態で安定に動作しましたが、
どうしても不安定なときはプレートにある1オームの抵抗をカソードに個別に入れて、抵
抗値を増やすと良いと思います。ただし低RLの出力回路に直列に入る為、あまり増やす
とそれだけ出力減になります。またB電圧もいくらか下げるとなお良いでしょう。
5.発熱が多いのでシャーシに放熱用の穴を開けるなど、十分な対策をして下さい。これが不
十分だと動作も不安定になります。
6.SEPP回路では電源にも出力信号が流れるので、平滑用のケミコンにもオーディオ用を
使用することを勧めます。そして熱による劣化を避けるため、なるべく出力管から離すよ
うに配置して下さい。
7.最大出力はNF約28dB、16オーム負荷で片Ch12W程度です。
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