5球スーパーラジオ





 本機はトランスレス式のスーパーで、トランジスターラ

ジオが一般に普及する前には、どの家にもあった戦後の標

準的な家庭用ラジオでした。

 このセットの回路は、それらと基本的には同様ですが、

アースをむき出しのシャーシへそのまま落すと、感電する

恐れがあるので、コンデンサーと高抵抗を介して接続して

います。家庭用としては十分な性能を持っていますが、裸

のままでは実験機のようなので、木製のケースでも作りた

いところです。





部品の入手方法について


 現在、スーパー用部品の入手は大変困難なのですが、秋葉原あたりのジャンク屋を根気よく探せば、

見つかることもあります。このセットの

      IFTは・・・交通博物館に近いラジオガーデンの一番奥の店(\3,000)

      コイルは・・・ラジオデパートのシオヤ無線(\1,000 新品だがチャチ)

      二連バリコンは・・・同デパート内のジャンク屋(\2,000 今は品切れ)
などで各々入手しました。この他にもニューラジオセンターのジャンク屋(国際ラジオ?)にもスー

パー用の部品があるようです。

 ところで、地方の方や、そんな時間は無いという方は、いっそう中古のラジオを入手し、バラして

使うという手もあります。完成品をまた組み直すのでは意味が無いようですが、回路の勉強と技術向

上にはなると思います。またプラスチックケースの欠けたり割れたりした物なら、6千円から8千円

ぐらいで有りますので、一つ一つ部品を集めるのと値段的にも大差ないのです。

 ただし、私の入手したラジオはケースの破損状態がひどく修復不可能だったのでバラしてしまった

のですが、いまや数も少なくなり骨董的価値も出ているようですし、なるべくなら修理して長く保存

すべきと考えます。



トランスレス式セットについて


 私は主にオーディオアンプを製作することが多いので、トランスレス式のアンプを組んだ事がある

のですが、入出力端子を電源から浮かせることが出来ないので、ACコンセントの極性により感電す

る事が何度かあって、結局、しばらくしてバラしてしまいました。その後SEPPアンプの中点非接

地式の差動電源ならば感電しないのでは、と考え製作したセミトランスレス式のOTLアンプは、ダ

イオードとケミコンをいくつも組み合わせた、かなり大がかりなセットになってしまいました。それ

でオーディオアンプとトランスレス式は相性が悪いという結論になりました。

 そこにいくとラジオの場合は、上記の回路のように入出力端子(ANT、SP−OUT)は電源か

ら浮かせてあるので、感電することなく使用することが出来ます。さらに、ラジオ用の小出力管は、

後になって開発されたトランスレス用の方が遙かに高感度に出来ています。例えば 30A5は2.1

W出力時に4.8Vの入力電圧で足りるのに、トランス式の代表管 6AR5は2W出すのに10Vと

2倍の入力が必要です。それならばと考え高感度で知られる6BQ5を使いたくても、そのままでは

電源の容量が足りなくなってしまいます。トランスレスならば高感度管35EH5でも高出力管30

M−P27でも、周辺の定数を2,3変更するだけで使用できます。このように様々な面で、ラジオ

とトランスレス式とは相性が良いと言えるでしょう。(諸先生の記事では全体の感度はトランス式の

方が良いとされていますが、トランス式でも高周波増幅管のEc2は100V程度なので感度を左右

するgmもあまり変わらないと思うのですが?)



整流管が切れてしまったら


 当セットの整流管35W4は高温動作となる為か五球スーパーの他の球より切れやすいようです。

さらに、品薄にもなっているようなので、代替策を考えてみました。

 整流に関してはダイオードで整流すればいいのですが、問題なのは残り4球のヒーター点火方法で

す。67.8V 0.15Aを100Vから抵抗でドロップさせたのでは、発熱が多くて上手くありま

せん。その上、ヒートアップするまでの数秒間は規定の数倍の電流が流れますので、かなり大容量の

抵抗にする必要があります。そこでお勧めなのはコンデンサーで点火する方法です。私はいろいろな

セットで多用しているのですが、今回のように高電圧小電流ヒーターの点火には特に最適です。ただ

地域の交流周波数により容量の変更が必要なので、転居の多い方などは切り替えられるようにすると

良いかも知れません。その他注意事項については一球ミニラジオを参照してください。ヒーター電圧

が一球ミニラジオと違うのにコンデンサーの容量が変わらないのは、交流に対しては定電流素子の様

に振舞うからです。ヒートアップ時間は多少長くて当セットで約25秒でした。また、パイロットラ

ンプは使えなくなるので、ネオンランプかLED(タイムラグがありますが、出力管のカソード電位

を利用して点火可能、図3)を付ければいいでしょう。一方、ダイオードでの整流は直流電圧が高く

なるので、100オーム程度の抵抗を入れる必要があります。なお、上記の代替策が上手くいったの

で、今回は出力管で整流させる方法は試しませんでした。





ノイズ対策について


 トランスレススーパーが広く聴かれていた時代は、まだノイズ源となる機器も多くなかったので、

電源からのノイズに弱いという、トランスレス式の最大の弱点はあまり問題にならなかったのですが

現在のようにデジタル機器を始めとするノイズ発生源が家庭用機器にも多くなると、何らかの対策に

迫られるようです。幸いにもこれらのデジタル機器用に用意されているノイズフィルターが当セット

にも有効なようなので、いくつか紹介したいと思います。


 左のフィルターは機器に組み込んで使うもので、中身はLCなのですが、国の規格にも合わせてあ

るとの事です。自作も容易ですが、もともと高価なものではなくメーカーに拘らなければジャンク屋

で数百円程度なので、はじめから組み込んでしまうと良いでしょう。まん中のはクランプフィルター

でパソコンケーブルに使われているのでお馴染みのものです。中身はフェライトコアーだけなのです

が、これでも意外とノイズ除去効果はあるようです。ACコードは細いので二重に巻いて使うとより

効果が上がります。なお、これ以上無理とは思いますが、あまり束ねると発熱して危険です。



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