今回の打消し回路は、差動電源式SEPPアンプの出力にマッチングトランスを繋いだ時と同じよう
な様式の回路で、接地ポイントが違いますが、電源の中点とPP回路の中点が同電位ならOPTにDC
が流れる事はありません。
これを図に示すと右のようになり
ます。増幅回路に流す電流と定電流
回路に流す電流が等しければ、図の
P点と電源の中点電位は等しくなり
DCループは二つの電源を繋ぐよう
に大回りで流れます。
一方、電圧を上げて単電源式とし
出力コンデンサーでDCを遮断して
トランスを繋いでも回路は成立しま
すが、今回は打消しの有無の比較が
出来るように、さらに既存のセット
にも追加できるように、二階建ての
電源としました。
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この上の図で注目して頂きたいのは、増幅回路の電源電圧350Vに対して上側の定電流回路の電源
電圧が200Vと大幅に低くなっている事です。この事が「前章の打消し方式よりも省エネ」と謳って
いる理由で、今回の方式では増幅部の電圧と同じ電圧でなくても打消し動作が可能となっています。な
らば、もっと下げても打消しは可能と思うかも知れませんが、確かにプレート電圧が一定ならば20V
もあればトランスにDCが流れなくなりますが、実際には信号が入る度にプレートが振幅し電位が変動
するので、そのプレート電位の変動に追従出来るだけの電圧が必要になります。
では打消しに必要な電圧はどのように求めるのか、以下の特性図を見るとプレート電位P点は負荷線
のA点とB点の間を移動しますが、カットオフ側のB点まで移動するとプレート電圧は500V付近ま
で達する事になります。当然、定電流回路の動作もこの電圧変化に追従しなければならないので、静止
時の電圧320V(350V−カソード電位30V)からカットオフに達する電圧までの「差の電圧」
約200Vを上回る電圧が定電流回路の電源電圧として必要になります。
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