近頃は半導体を多用した真空管アンプが散見されますが、半導体の入手は年々難しくなっています
し、また多くの場合は選別が必要で、この作業も慣れない方にとっては案外と手間が掛かってしまう
ようです。ならば真空管のみで構成しようと思うと位相反転段の選択に迷うところで、アルテック型
(PK分割式)やリークマラード式(共通カソード抵抗の準差動式)等が有名ですが、どれも上下の
ACバランスなどに難があり、PK分割式は巻末紹介の次章で採用したのですが、高域特性が波打ち
素直な特性が得られませんでした。それでも私の駄耳では音に影響が出るほどの事ではないのですが
今回の新型OPTは全く新しいコンセプトで巻かれたトランスで、高域も低域も良く伸びているので
その特徴を存分に生かせるように、特に高域特性の良いアンプを目指す事としました。
ということで、結論から先にいうと本機ではオートバランス式位相反転回路を採用しています。こ
の位相反転回路は古くからある回路の割には人気が無くて、人によっては「上側と下側で信号が通る
段数が異なるのが気になる」という方もいるようです。しかし下側も本来は利得があるのにPG帰還
で「利得1」にしていて、高帰還により下側の歪はほとんど無視できます。さらに出力インピーダン
スも充分に低くなり出力管を理想的にドライブ出来ます。ただし、ここが工夫のしどころで、上側の
出力インピーダンスは通常のままですから、下手な球では上下の出力インピーダンスに大きな違いを
生じてしまい、これがそのまま出力段上下の高域特性の違いになって現れてしまいます。なので、こ
の位相反転管には内部抵抗の低い球を使わなければなりません。そこで本機の位相反転段には12A
T7Aを使い、上側も低インピーダンス出力を保ち素直な高域特性が得られるようにしました。また
「μ」も高く利得もある程度取れるので、本機には最適なドライブ管となっています。
出力段は次章の回路を踏襲して(紹介順序が逆で、先に次章の回路で組みました。)12BH7A
をパラで使っています。という事で以下のような回路になりました。
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