晴耕庵の談話室

NO.109


標題: 英国は「イギリス」でよいのではないか

OPINION

2005/12/26


ロンドン憶良様


ドイツ在住のK.M.と申します。
突然の電子メール失礼します。
「右側通行・左側通行」をグーグルで検索してたどり着きました。

コモンウェルスをはじめとした英国の過去の遺産のことなど、
非常に盛りだくさんのホームページですね。勉強になります。
自身4ヶ月ほどバーミンガハムのちかくのSHREWSBURYという町で
英語を勉強したり、友人のいたロンドンを幾度となく訪問したり
とかで、イギリスという国には何かしら愛着があります。

ただ日本と同じ島国というだけの理由ではなく、です。
しかし、やはり侮れない国ですね。
北海油田のことはさておき、本国にはあんまり資源がないにも
かかわらずスペインやポルトガルとちがい、いまだに世界の
キープレイヤーを演じているその秘密は何なのか、
というのは、同じ資源小国の日本としては絶対にまじめに学ぶ
べきところが多いと思います。

EUには積極的に参加しつつも、かたくなに(国民の圧倒的多数の
否定を背景に)ユーロ参加を拒み続ける姿は、再び英国ポンドの
台頭を夢見るイギリス、という風に解釈しても問題ないのでしょ
うか。

このあたりが大陸ヨーロッパ国家から最終的には信頼されてない、
というか、信頼されてない事すら利用しようという老獪な戦略が
垣間見れます。

「イギリス代表というチームのなかったワールドカップWC」の
トピックスですが、少し憶良さんと違う意見をもっています。
(「オクラ」だけ入力しても変換されないんですよ。)

日本語で言うときは、ワールドカップのときを除いては、すべて
を総じて、「イギリス」でよいのではないでしょうか?
なぜかというと、同じような事例はいくらでもあるからです。

ご存知かと思いますが、フランス語の「ドイツ人」はALLEMAGNEで
ALLEMAGNEとはフランス国境のあたりの地域を限定して表すもので
あるし、ほかにも、フィンランド語で「ドイツ人」はSAKSAと言っ
たりして、本来はドイツのSACHSEN地方をあらわすものです。

ロシア語でも中国のことをKITAI(契丹)といったり、ひどいのに
なると南米で東洋人のことをまとめてCHINOって言ったりもします
よね。

  このあたりきりがないのでやめておきますが、定着しているものは
もう仕方ないかと思います。
「イギリス人」とよばれるスコットランド人には申し訳ないけど、
それはそういうもんだと理解してもらうほかはないです。

若輩者のたわごとですが、もしよかったら意見など聞かせてもらえ
ればうれしいです。
ホームページのほうはまだ半分の読めてないので、これから読ませ
てもらいます。楽しみです。

ではよいお正月をお過ごしください。


                  K.M. ドイツより


ANSWER

2006/1/4


K.M.さん

明けましておめでとうございます。
メールありがとうございました。

ドイツ在住とのこと。実は昨年グラスゴーでの世界マスターズ・
レガッタからの帰途、クルーと別れてフランクフルト経由ケルン
を往訪、二泊して近郊の世界遺産を楽しみました。
ドイツもまた学ぶべき点の多い国ですね。

イギリスという表記は、あなたのおっしゃるとおり、今となっては
他に置き換えがたい固有名詞になっています。
「定着しているのは仕方ない」ことなのですが英語を学ぶ早い段階
で、連合王国という表現や概念を教えておいた方が、これからの若
い方の国際化に役立つと考えています。

アメリカ合衆国という表現で、アメリカが独立性の強い州の連邦制
であることが示されるように、英連合王国とか、イギリス連合王国
のような表現を、マスコミでも常用するのも少し進歩かなと思います。

百科事典などではイギリス(連合王国)と表記され、イギリスの
表記がイングランドを示すエゲレスの誤った使い方から来ていると
説明されています。

「イギリス」という表現が、連合王国を示す時と、「イギリス史」
のようにどちらかといえばイングランド史を示す混乱が併存してい
ますが、「へそ曲がりロンドン憶良」は、英文学者やマスコミなど
がもう少し和製英語の乱用と慣用化に歯止めをかけて良いのではな
いかと、「ごまめの歯軋り」をしています。

今危険な建築のマンションが話題になっていますが、これも「マン
ション」の誤用でしょうね。「トルコ」は相手国の抗議で消えてし
まいました。日本の英文学者は、自らの行動で、マスコミ作の和製
英語の改正に取り組んで欲しいと願っています。

誤用の慣習化の典型例としてイギリスを上げ、それが民族問題(ア
ングロサクソン対ケルト)や宗教問題(カトリック対国教会)など
のの多面性の理解を遅らせていると思っています。
「へそ曲がりロンドン憶良」の意識と行動(HPでの展開)をご理解
ください。

                      ロンドン憶良

追記
(ご指摘のように、オクラだけでは憶良が出ずに、私も嘆いています。
ヤマノウエノオクラは山上憶良と出るのはさすがです。日本語転換ソ
フト作成者がオクラに憶良を入れて欲しいものです)


OPINION

2006/1/5


ロンドン憶良様


あけましておめでとうございます
返信ありがとうございます。
あれからいろいろ調べてみたんですが、やはり、日本における
「イギリス」のようなものは無数にありますね。

フランスにおける「ALLEMAGNE」とか、イタリア、ポルトガル語
などにおける「inglese(だったっけ?」とか、「スイス」も元
はスイス国内のひとつの州だけを指す言葉だったらしいですね。
もちろん、何の問題意識も持たずに先例踏襲主義を続けるのは
おろかなことですが、無理に標記などを変えてしまうと、余計に
混乱したりする可能性もはらみますよね。

ドイツではUKって書いて手紙送ったらウクライナのほうに行った
りするという話もききますね。 車輌のナンバープレートの表記では
ウクライナはUAですがね。

しかし、やっぱり国の表記は「慣習に基づいてできる限り簡潔で
正確」が旨ですので、ここで国家システムを理解させるのは少し
無理があるように思います。

イギリスってヨーロッパの中でもかなり特殊ですし。
このあたりは釈迦に説教ですね。
とにかく、あんまり「国名」の中でゴチャゴチャいらん解説したり
するのって気の利いたジョークを後から解説して見せるようなもの
だと思います。

考えてみれば、「連合」も「王国」も「states」も「帝国」とか
「共和国」と同じでただの一般名詞なので「イングランドスコット
ランドウェールズ、北アイルランドの連合王国」のことをさすとき
に「いぎりす」と言う(言わせる)のはなんというか奥ゆかしいと
さえ感じます。

またドイツのことで申し訳ないんですが、ドイツ人がドイツのこと
をドイツ人に説明したり批判したりするときには、「deutschland」
とも言いますが、どちらかというと「bundesrepublik」というほう
が多いですね。

オーストリアでもテレビの討論などで自国を指すときは
「bundesrepublik」といいます。

話がそれてすみません。

また、輸入語については、
「『言葉』はその言葉が取り入れられたときの時代背景や、文化の
強弱、人や文化の流れなどを記録する機能もある」
という考えがあって、むしろ妙に「本国での使われ方」を気にして
修正するべきではないと考えます。

英語圏で「サムライ」が足軽も騎馬兵も武将も用心棒も座等市もひ
っくるめる(少なくとも大衆のレベルでは。もちろんきちんと研究
してる人はちゃんと違いを認識していますが)ように、好きなよう
に解釈してOKという野が私の考えです。

まあ、国の名前と物品は分けて議論すべきでしょうね。
私は自身続々生まれる和製英語(特に最近はIT用語)に悩まされる
ことも多く、「ええかげんにせえよ、日本語しゃべれや」と思うこと
も頻繁にあるのですが、それでも、「勝手な解釈の和製英語」はやめ
る必要はないと思います。

それではまた楽しくおしゃべりしましょう。

                  K.M. ドイツより
                  

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