晴耕庵の談話室

NO.78



標題:ロバート・ザ・ブルース王とスコットランド王室騎士団

REPORT

2002/8/21

ロンドン憶良様


はじめまして。ホーム・ページをゆっくりと拝読させていただきました。
ロンドン憶良さまは、”ロンドン”という雅名をおもちながらも、U.K.
一般に全く偏りなくご興味、そして、深い知識をお持ちのご様子です
ね。本当に楽しませていただきました。

ところで、ロバート・ザ・ブルース王に関しては、彼がバノックバーンの
戦いの後、加勢してくれたスコットランド人テンプル騎士やシンクレア
家の一党に感謝して創設したスコットランド王室騎士団(Royal Order
of Scotland )というスコットランドにおいてはれっきとした騎士団が、
現在も存在しているのをご存じですか?

連合条約の際にスチュアート家の流れによって連合王国冠下の一連
のDynastic Orders ( Ordeer of the Garter 等)からははずされてしま
いましたが、ロバート・ザ・ブルース王の男系の長子が代々その総長
職をひきつぐというかたちで、スコットランド王家のいわば”家宰騎士
団”として生き残り、その後、シンクレア家による叙勲対象等の改革に
より、1700年代に入団選抜対象資格が一般には「秘密結社」として
知られている高級クラブ・「フリーメイスン」内のスコットランド貴族会員
に変更された後、現在に至っています。

ロバート・ザ・ブルースの直系子孫はスチュアート朝の勃興により、Earl
of Elgin として封土を与えられましたが、現在の騎士団の総長代理
(総長職そのものの席は、スコットランド独立の際新たなる全スコット
ランド王がその玉座にすわるべく、常に空席にされているのだそうで
す。ちょっとロマンがありますね)も、エルギン並びにキンカーディーン
伯アレクサンダー・ブルースさんがひきついでおいでです。

ご本人さまはあまりスコットランド独立運動には熱心ではおられない
ようですが、EU問題とのからみもあってか周りが一生懸命彼を担ぎ
出そうとしているらしく、何年かまえに、震災直後の神戸にいらっしゃ
ったときは、スコットランド・ヤード(これが本来のスコットランド・ヤード
とでもいうべきなのでしょう)の私服警官らがゾロゾロついてきていて、
かえって目立ってしまっておかわいそうでした・・・・・・・。

エルギン伯家もここ何代か、ギリシャの神殿をはぎとって大英博物館
に寄贈しちゃって、未だにそれがギリシャとの外交問題になっていた
り、はたまた、アヘン戦争時には全英国軍総司令として、大”活躍”さ
れたり、と祖先のプライドもどこ吹く風、ハノーヴァー家の犬になりさが
って、歴史の目からみると、悪業ばかりつんでいるようにもみえるので
すが、ここらあたりで一つ、スコットランド王室騎士団の誇り高き騎士
たちとともにたちあがって、EU加盟の一独立国家となってくれたら、
応援するのになぁ、と日々ため息をつく次第です。

スコットランド王室騎士団自体は現在はその叙勲対象を、生粋のスコ
ットランド人からスコットランド系各国人、さらには、特にスコットランド
文化等に顕著な寄与をなした人物にまで広げて、騎士叙階し、かなり、
世界的な組織になりつつあるようです。日本でも、日本人の叙勲者は
今のところいませんが、東京在住の元中央大学教授のスコットランド
系アメリカ人1名、神戸在住のスコットランド系ドイツ人(日本人とのハ
ーフで、亡くなった母君は京大教授)1名が叙階されています。

騎士団のデコレイション等については、騎士団のアメリカ管区(1878
年に新設)が随分オープンにもホーム・ページをつくっているので、そ
ちらで、管区長さんのお写真をみていただけたら、と思いますが、この
アメリカ管区の管区長職は、現当主も含めて、代々、ファウラー・クラ
ンの出身者が継承しているとのこと。このあたりはさすがに律儀です。


面白いのはやはり、一般的な伝統的勲爵士団の正装としての大綬や
頚飾、星章、さらにはガーターに加えて、フリーメーソンとの関係から
か、華麗な装飾を加えた石工のエプロンが加わっている点でしょうか。
--- 歴史の積み重ねというのは、おもしろいところで反映されるもので
すね。

それではロンドン憶良さま、また、機会があったら、お便りさせていた
だきます。(ご質問等がおありでしたら、当方、今さいわい仕事が夏休
みなので、どうぞいつでもご遠慮なく。)

猛暑の中、お体には十分にお気をつけて。

(スコットランド風に) Iurs,Ayes!

                Y.H.,PhD,ThD,



THANKS

2002/8/21

Y.H. PhD,ThD,様

拝復  大変内容の濃いメールを頂き有難うございました。

ロバート・ザ・ブルース王創設のスコットランド王室騎士団が、現存
しているとは知りませんでした。

「アヘン戦争と香港問題」もそのうち掲載したいと下書きしていますが
(大風呂敷になりいつになるか?)エルギン伯家と関係するとは、まこ
とに歴史の皮肉かもしれません。

音楽好きの友人が、「フリーメイスン」のことを調べており、時折レポ
ートを貰っていますが、ここでも関係があるとは驚きです。

ロンドン憶良としては、できるだけ客観的に史実や歴史の背景などを
見るように心がけています。その意味では、イングランドからの視点
だけでなく、周辺國あるいは関係諸国などの立場にも立って、民族、
宗教などに起因する事件を、いわばオリエンテーション的な解説を
心がけています。

日本では今まで「イギリス史=イングランド史」を中心とした話題は
多数紹介されていますが、ケルト諸国など被支配サイドからの見方
が少なかったのか、おかげさまで年齢性別職業を問わずいろいろな
方に見ていただいているようです。
これからもできるだけ偏らない史観を貫こうと思っています。

今後もいろいろなご寄稿をお願い致します。
取り急ぎお礼方々、お願いいたします。

                      ロンドン憶良


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