晴耕庵の談話室

NO.28


OUTLINE

99/3/24
標題:シェークスピアの“Titus Andronicus”(あらすじ)

M.I.様

最近アップを済ませましたので、タイタス・アンドロニカスのあらすじを、
私なりにまとめてみました。

観客にわかるよう、パンフレットなどに見かける程度の、要約ですが
ご高覧頂ければ幸甚です。


       流血悲劇「タイタス・アンドロニカス」のあらすじ

物語はゴート族と対立抗争していた古代ローマ帝国の時代の設定である。


第一幕

ローマの神殿では先帝なきあとその長子サターナイナスと次子バシェナイス
が皇帝の椅子を争っていた。
そこえゴート族の女王タモラとその息子たちを捕虜にして、将軍タイタス・アン
ドロニコスと息子ルーシャスたちがローマに凱旋する。

人望厚いタイタス将軍とルーシャスの父子は、ローマ入場に際し、女王タモ
ラの懇請を無視して彼女の長子を神殿の神と戦死者慰霊のために犠牲(い
けにえ)とする。(第1の殺人)
(流血の悲劇はこのローマ兵士鎮魂のはずの処遇にはじまる)
女王タモラは、母としての助命懇願を聞き容れないタイタス将軍父子のこの
非情さに、心中深く復讐を決意した。

ローマの護民官を務めているタイタス将軍の実直な弟マーカスや元老院議
員たちは、空席の皇帝の椅子に、戦勲をあげ人望厚いタイタス将軍を推薦
するが、律儀なタイタス将軍は固辞し、先帝の長子サターナイナスを皇帝に
推戴する。

サターナイナスは、タイタスの好意を感謝し、そのお礼にとタイタスの愛娘
ラヴィニアを皇后にと申し出る。しかし実際は美貌の女王タモラの妖艶さに
食指を動かしていた。
一方、ラヴィニアは父タイタスには内密に、サターナイナスの弟バシェナイス
と婚約していた。タイタスの息子たちもこの婚約を支持し、ラヴィニアを皇后
にさせたい父タイタスに反対する。
怒ったタイタスは末子ミューシャスを見せしめに殺す。(第2の殺人)
面子をつぶされたサターナイナスは美貌のゴートの女王タモラを皇后にす
るが、もはや皇帝となった彼はタイタスに花嫁への付き添いを頼まず、無視
する。

「家名を汚された」とタイタスは、末子ミューシャスの遺体を先祖伝来の墓に
葬らぬと荒れ狂うが、弟マークスやルーシャスなど子供たち全員の要望に
ついに埋葬を認める。

ラヴィニアを妻にしたバシェナイス殿下は兄サターナイナス皇帝にタイタス
を寛大に扱うように進言するが、皇帝は聞き入れない。
しかし皇后となったタモラは、復讐の内心は秘めたまま、狡猾な手段として
皇帝にタイタスを慰めるよう進言し、またタイタス一族には皇帝との仲直りを
とりなす。

タモラの深謀によって両家仲直りとなり、タイタスはサターナイナス皇帝を
狩に招待する。


第二幕

女王タモラにはムーア人の愛人エアロンがいた。
エアロンはゴートに征服されたムーアの黒人としての屈折した心情と愛欲
で女王タモラを支配することに復讐の快感を覚えていた。

長子をタイタスに生贄にされたゴートの女王タモラにはまだディミートリアス
とカイロンという二人の息子いた。二人はかねてからタイタスの愛娘ラヴィ
ニアに懸想し、争っていた。

エアロンはラヴィニアに横恋慕するディミートリアスとカイロンを扇動し、狩
のどさくさに紛れて皇帝の弟バシェナイスを殺害し、その妃ラヴィニアを強
姦するよう策謀を授け、愛人タモラにはサターナイナス皇帝の判断を誤らせ
る策略の手紙を渡す。

ローマ近郊の森に一同が集まる。
森の片隅で皇后となったタモラと情夫エアロンが密会する場面を、バシェ
ナイスとラヴィニアのカップルが見咎める。
そこえタモラの息子ディミートリアスとカイロンが現れ、二人はバシェナイス
を殺害し、エアロンに教わった穴に蹴落とす。(第3の殺人)

エアロンがタイタスの二人の息子クウィンタスとマーシャスを連れて、バシェ
ナイスの投げ込まれた穴に案内する。マーシャスが落ち、助けようとした兄
クウィンタスも穴に落ちるが、エアロンは立ち去る。

エアロンはサターナイナス皇帝を穴に案内し、タイタスの息子二人がバシェ
ナイス殿下を殺害したと思いこませる。
エアロンの書いた陰謀の手紙の内容はバシェナイスを殺害すれば何者か
が報酬に支払う金を木下に埋蔵しているいう内容であった。

この手紙はタイタスの手に拾われていた。皇帝や皇后タモラとともに穴に
赴いたタイタスとルーシャス父子は、クウィンタスとマーシャスがあたかも殺
人者のように穴にいることに愕然とした。

クウィンタスとマーシャスを極刑にするというサターナイナス皇帝に助命を乞
うタイタスに、皇后タモラは心中ほくそえみながらも、皇帝へとりなしをするよ
うなふりをする。

森の中では皇后タモラの二人の息子たちがラヴィニアを強姦し、悪事が発
覚しないよう残酷にもラヴィニアの両腕と舌を切り落とす。
狩から帰る途中のマークスは、森をさまようラヴィニアを発見し、その変わり
果てた姿に嘆き、その残酷な犯罪行為を怒る。


第三幕

タイタスはローマの街路で、死刑の刑場に引き立てられる二人の息子の
助命を乞うが、ローマの長老たちはもはやタイタスを一顧だにしなかった。
長子ルーシャスは抜き身の剣を持ち、裁判官たちから力ずくでも弟二人を
奪還しようとしたが、裁判官たちはルーシャスをローマから追放の宣告をし
た。

そこえマークスに連れられて来た哀れな姿のラヴィニアに、タイタスとルー
シャスは驚き涙する。

そこえエアロンが皇帝からの言葉として、タイタスか、彼の弟マークスか、あ
るいは一族の誰かの片手を切って差し出せば、息子二人を生きて返すと伝
える。タイタスは自らの手を切り、エアロンに渡す。
しかしこれはエアロンの策謀であり、すでに処刑は実行されていた。

皇帝からは生首二つとタイタスの片手が返却されてきた。
(第4.5の殺人)
タイタスは狂ったように笑う。そして一族は復讐を誓い、ルーシャスはゴート
に赴き、挙兵をするためローマを去る。

タイタスの館でマークスの息子(少年小ルーシャス)が傷ついた従姉のラヴィ
ニアを慰めようと本を持って行く。
少年小ルーシャスの落とした本を切り株のような手でめくるラヴィニアの身
振りで強姦した犯人がわかる。
タイタスは新たな復讐計画を練り神々に祈る。


第四幕 
 
少年小ルーシャスが祖父タイタス・アンドロニカスの手紙をタモラの息子ディ
ミートリアスとカイロン兄弟にとどける。
手紙にはタイタスの武器庫にある最上の武器を二人へ贈りますと書かれて
あった。
エアロンはタイタスが強姦の真犯人を察知し復讐する意味だと覚った。

皇后タモラが出産するが、生まれた子供は黒人であった。
身の破滅を恐れた皇后タモラは、赤ん坊の父エアロン自身が始末するよう
乳母にエアロンの許へ届けさせる。
タモラの息子ディミートリアスとカイロン兄弟は、母が召使のムーア人と情交
を持っていたことを知り、赤子を刺殺しようとする。エアロンは実子を守るため
、ディミートリアスとカイロン兄弟に赤子取替えの陰謀を授け、秘密を知る
乳母を殺す。(第6の殺人)

タイタスは気が狂っているように装い、一族は皇帝の宮殿に向かって数本
の矢を射かける。それは神々に報復を祈願する矢文がついていた。
タイタスは道化師に名誉回復の請願書を持たせるが、皇帝は請願を無視
し使者の道化師を殺す。(第7の殺人)

そこえタイタス・アンドロニカスの長男ルーシャスがゴート族の大軍を率いロ
ーマに進軍してくる。
市民もルーシャスに呼応することを恐れた皇帝サターナイナスは、皇后タモ
ラの進言を容れ、ルーシャスのローマ進軍を止めるようにタイタスへの説得
を彼女に依頼する。


第五幕
  
ルーシャスの部下がローマから逃亡途中のエアロンと赤子を捕らえる。
エアロンは自分の命と引き換えに、赤子の助命を嘆願し、これまでの凶行
がすべて彼の筋書きで運ばれてきたことを自白する。

皇帝の使者がタイタスの館で会談を申し込んでくる。

一方タモラと二人の息子が、復讐の女神とその供『強姦』と『殺人』に変装し、
タイタスの館での皇帝とルーシャスの宴会をすすめる。
錯乱のタイタスをたぶらかそうとするが、タイタスは三人の実体を知っており
計略の裏をかき、タモラの二人の息子を虜にする。
タイタスは愛娘ラヴィニアを強姦した二人を殺し人肉でパイを作る。
(第7.8の殺人)

皇帝サターナイナスと皇后タモラとの宴席で、タイタスは「ヴァージニアスの
故事」にならって、自らの手で愛娘ラヴィニアを刺殺する。(第9の殺人)

タイタスは皇帝と皇后が食べたのはタモラの息子の人肉パイだと教え、
タモラを刺殺する。(第10の殺人)
怒った皇帝サターナイナスはタイタスを刺す。(第11の殺人)

ルーシャスは「目には目を」と皇帝サターナイナスを刺す。(第12の殺人)

ルーシャスはエアロンの証言をもとに、タイタス・アンドロニカスの復讐が
正当なものであったことをローマ市民に一部始終を説明した。
ローマ市民はこれを承認し、ルーシャスを新皇帝に選任した。
ルーシャスはエアロンに極刑として、生き埋めを宣告した。(第13の殺人)
妖婦タモラの死体は野獣野鳥の餌食とされた。



今後のますますの御活躍をお祈りします。

                                               ロンドン憶良

            
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