裁判官のユーモア判決
(前頁より)



翌4月10日木曜日、通勤帰りの憶良氏は、地下鉄の駅で夕刊イブニ
ング・スタンダード紙をもとめて、車中ゆっくり読み耽った。憶良氏の目
は、次の見出しに引き付けられた。

『フランク卿の恩情溢れるカップ』

ボウ・ストリート・コート(つまりロンドン裁判所)のフランク卿と、裁判所
のすぐ横で泥酔し逮捕された酔っ払い男は、今日もまた二人してロン
ドン・チームの勝利を祝いあった。



54歳になるウエイター(給仕)のジャクソンは、裁判所のフランク卿に、
申し開きをした。
音に聞くロンドン名物コックニー・イングリッシユ(下町英語)である。

「ゆんべ(昨晩)ロンドンのチームが二つとも勝っちまったんで、うれし
くってさあ、ほんのいっぺえ(一杯)か、にへえ(二杯)ひっかけただけ
でさあ」

フランク卿は、いかにもボウ・ストリート・コートの裁判官らしく、威厳の
ある態度で重々しく判決を下した。
「昨夜は非常に珍しい特別な出来事であった。とくにフルハム・チーム
が、あんなにうまく勝ったからには、お前の罰金はほんの1ポンド50
ペンスだけにしておこう」




さて日本では泥酔も罰せられず、こんな粋な判決も、スマートな報道
にもなかなかお目にかかれません。
心にゆとりやアソビを持ちたいものですね。


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