神よ、助けたまえ
(前頁より)
「そう。残念ながら白人とキリスト教だ。イタリー・ローマ・バチカンはキリ
スト教徒にとっては昔から巡礼の聖地だよ。ユーロ・ダラーをどこに出す
か決めるギリギリの場面で、ジャップかイタ公かという時には、黄色人種・
仏教徒より白色人種・キリスト教が優先されるのさ」
「経済力とか将来性とかは日本が上と思いますが?」
「何でもカネで判断するから、日本人はエコノミック・アニマルと軽蔑され
るのさ。経済外要因を考えなくっちゃ。人種問題が、頭で考えるほど容易
でないのは、デモクラシーの国アメリカでさえも、いまだ解決されていない
のがよい例だよ」
「キリスト教といっても、カトリックとプロテスタントではいまだに対立してい
ますが?」
「コップの中の争いさ。異教徒との戦いとなると話は違う。キリスト教とい
う同じ精神世界にいるということは、大変重要な要因だよ」
「我々日本人の国際化はハンディキャップ・レースですね」
「そうだよ。日本人は精神世界では国際的に孤独な民族なんだよ。謙虚
に行動し、顰蹙(ひんしゅく)を買わないようにしないとね、竹篦(しっぺ)
返しを食うよ」

このパブの会話から20年近く経っても、事態はあまり変わらない。
1993年年初早々またまた湾岸戦争の火が吹いた。イラクと米英仏合同
軍の争いが、アラブ対白人、回教徒対キリスト教徒の新十字軍戦争の構
図にならねばよいが。
造物主よ、人種・宗教・階級を越えて、あまねく人々を救いたまえ!
異教徒とか異人種とかの概念が、死語となる平和な日をもたらし
たまえ!
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