黄昏でない英連邦の絆


(前頁より)



日本もかつて台湾、満州、朝鮮などの植民地を持っていた。これらの国々
は戦後独立し、自治国家として見事な発展をしている。しかし、連邦を形
成するような親密関係にはない。むしろ憎しみとか恨みといった心の傷が
まだまだ深く残っている。

植民地政策が、政治的には支配・被支配の関係にあり、経済的には搾取・
被搾取の図式であったことは、紛れもない事実である。それだけであれば、
植民地側には憎しみだけ残る構図であるはずだ。英国の植民地政策に
は、独立後も連邦を形成したいと考えるだけの何か魅力があるはずである。
それは何であろうか。経済的な必要性からであろうか。英国の植民地政策
には何か学ぶべきものがあるのではないか。

英連邦加盟の国々を見ると、英国の植民地政策は必ずしも厳しかっただ
けではなさそうだ。本国だけの利益を図るだけでなく、政治機構の構築、
教育制度の確立、医療施設の整備、宗教の普及、上下水道の整備、農
業開発、鉱山開発などを通じて、植民地であった国々自体の発展のため
にもインフラ(Infrastructure)の投資をし、国家形成に貢献しているように思
われる。植民地の人から敬意を持たれる思想、態度、教養といった無形の
ものが好感を持たれている要因ではなかろうか。

憶良氏は、家族を日本から呼び寄せるまでの半年間、ロンドン北郊のゴー
ルダスグリーンに下宿していたことがある。
もと台湾政府の外交官であった家主のCさんは、親日的で、多くの日本人
がお世話になっていた。そこにはシンガポールから来た三人の青年男女
が下宿していた。彼らは、極めて真面目で礼儀正しく、建築学や看護学を
懸命に学んでいた。

「何故近代的で豊かな自由の国アメリカの方に留学しないのか?」
との質問にたいし、彼らの答えはシンプルだった。
「英国のほうが私たちには身近である」

虐げられた植民地の民という先入観で聞いてみた憶良氏は、どうも愚問を
呈したようだ。英国と旧植民地の間には、教育面では太いパイプがあるよ
うに感じた。こういった信頼関係があればこそ、独立後も友好関係を保とう
とするのであろう。

これに対して日本には、日本語で腹を割って話せる盟邦の国々はあるの
か?皆無ではないか。
日本は世界の精神世界では常に孤独な存在であることを忘れてはならな
い。いつポシャるかもしれないのだ。
他国を、興味本位に軽々しく「黄昏」とか「斜陽」などと言ってはならない。





最近、航空業界の世界的規模での業務提携が報じられている。

UA(ユナイテッド・エア)は、LH(ルフトハンザ)、NH(全日空)など各国の
代表的エアラインと「スター・アライアンス・グループ」を形成中である。

これに対し、BA(ブリテッシュ航空)はAA(アメリカン・エアライン)、CP(キ
ャナディアン航空)、CX(キャセイ・パシフィック)、QF(カンタス・オーストラ
リア航空)などと「ワン・ワールド・グループ」を作っている。

この報道を見て、憶良氏は「空の英連邦(The Commonwealth)健在かな」
と感じた。
UKの航空会社はThe Commonwealthに呼びかけまとめる力がある。
日本の航空会社はどちらかのグループに参加せねば生き延びまい。
皆さんは航空業界の世界的規模での業務提携に何を感じていますか?


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