常夏の島は暑かった A |
第五場 スポットでAとBの二箇所に照明のエリア。 スポットAナオトとドラ。 |
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ドラ |
(自分を指さして)ドラ、ドラ。 |
ナオト | ドラ?ドラっていうのか、お前。オレはナオト。 |
ドラ | オレワナオ? |
ナオト | 違う違う、ナ・オ・ト。 |
ドラ |
ナ・オ・ト。 |
ナオト |
そうそう、で、あいつがフミヤ。 |
ドラ | フミヤ。フミヤ。 |
ナオト | うまいうまい、お前の弟は、何て言うんだよ。(指さして)あいつ。 |
ドラ |
(指さして)ポポ。ポポ。 |
ナオト | ポポ、かわいい! |
ドラ | ポポ、かわいい! |
ナオト | (食べるまね)くう。くう。 |
ドラ |
ケチャ、ケチャ。 |
ナオト | そうか、ケチャか。(寝るまね)ねる。ねる。 |
ドラ | トンテ、トンテ |
ナオト | そうかそうか。 |
もうひとつのスポットBの中に、フミヤとポポ。 | |
フミヤ |
あっち向いてほい。 |
ボポ | あっちゃむいてほほい。 |
フミヤ | やられたあ。よしもう一回だ。あっち向いて、ほい。 |
ポポ | あっちやむいてほほい。 |
フミヤ | なんだ、まただあ。よし、今度こそリキ入れるぞ。あっち、む−いて、ほ−いっ!ちょっとずるいよ。 |
スボットA。ナオトとドラが相撲を取っている。 スポットB。コマツがカチョウに報告している。 |
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カチョウ | 日本人の高校生が三人?なんでここにいる?あとの二人は何者だ?いずれにしろ、この五人は邪魔になる。まず、誰かひとり、こっちの手に入れるんだ。そしてそいつから詳しい情報を引き出せ。その上で、そいつを徹底的に利用するんだ。いいか、コマツ、ここが正念場だ。 |
コマツ |
はい。あの、それでしたら、シュウイチというおとなしそうな少年がいます。よくみんなから離れて、一人海を見てるんですよ。ホームシックですね。 |
カチョウ | シュウイチ、というのか。よし、それでいこう。コマツ、チャンスを見逃すな。ここでへマしたら、ただじゃおかねえぞ。そんなことになったら、ギタギ夕のゴタゴタの、こうしてこうしてこうしてやるぞ。 |
コマツ | (しりごみしながら)そんな馬鹿な。 |
スポットA。みんな集まって来る。 楽しそうにお喋りしながら食事。 |
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ナオト |
うんめえ。缶詰、もっと開けて。 |
シュウイチ | ナオト、もっと行儀よくしてくださいよ。 |
フミヤ |
いいじゃないの。こういうところで食う時は、野性的に食わなきや。 |
ナオト | おかわり。 |
ポポ |
(おかわりしながら)この人たち、よく食べるんだな。 |
ドラ | うん、こっちにもおかわり。みんなで食う、楽しい。 |
フミヤ | なんだって? |
ドラ | みんな、くう、たのしい。 |
ナオト |
んだんだ、楽しいよなあ。(ドラとポポ、突然立ち上がる) |
ポポ・ドラ | ほあ−っ、あああああああああっ、ほっほっほっほっほっほ(どきっとする三人を尻目に、踊りだす)ズンズントットズンズンドット |
シュウイチ | なんですか、これ。 |
フミヤ | これは日本でいう「ごちそうさま」らしい。 |
シュウイチ |
食べてすぐにおどるの? |
ナオト | いいじゃん、オレも入れてもらおう。(踊りだす)フミヤ! |
フミヤ | おっと、賛成(踊りだす) |
ナオト | シュウイチ! |
シュウイチ |
え−っ、そんな恥ずかしいこと。 |
ナオト | ばか、誰も見てるわけじゃあるまいし。ほら、立てよ。 |
シュウイチ | 僕は、いい! |
ナオト | どした? |
シュウイチ |
もうこの島に来て、一週間になるんですよ。どうするんですか。 |
フミヤ | お前何言ってるの。どうにもなんないよ。 |
シュウイチ | だって、夏休みはもう柊わりだし、このままじゃ、勉強、大幅に遅れてしまいますよ。ナオトは、日本に帰りたくないんですか。 |
ナオト | 帰りたくったって、手段がねえだろう。まさか、あのボートをまた使おうってんじゃねえだろうな。死ぬぞ。 |
シュウイチ |
それでも。帰んなきゃならないんだ。帰んなきゃ。いいよ。もう‐…(走って退場) |
ナオト | 何考えてんだか。 |
フミヤ | あいつ、一人にして大丈夫かな。 |
ポポ | コノシマ、キケン、ナイ。キケン、ナイ。 |
フミヤ | そうか、危険はないか。 |
第六場
昼の浜辺。 |
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カチョウ |
シュウイチ君だね(言いつつ、二人はシュウイチをはさむようにして座る) |
シュウイチ | はい。えっ!(驚いて立ち上がる)目本語! |
カチョウ | ま、すわんなさい。 |
シュウイチ | 日本人!なんでここに? |
カチョウ | まず、すわんなさい。 |
コマツ | 座れって言ってるだろうが。 |
カチョウ | コマツ君、乱暴な言葉遣いはいかんなあ。私は嫌いだよ。 |
コマツ | はっ、申し訳ありません。 |
カチョウ |
君は、今ニュースやワイドショーでおなじみの、高校生三人組が海へ出たきり行方不明ってやつの、つまりその高校生の一人だね。 |
シュウイチ | はあ、そうかもしれませんけど……なんにしても……助かったあああ!…‐…これで無事日本にかえれる! |
カチョウ | ぷ、ふ、ふ、ふ、ハ、ハ、ハ、ハ。よ−し、よし、おぢさんがいくらでも助けてやるぞ。だが、しか−し、君はこの島のことずいぶんと詳しいようだから、この島についてわかっていることをすべて話してほしいんだ。いいかい、これは大切なことなのだよ。 |
シュウイチ |
いいですよ。驚かないで聞いて下さい。 |
コマツ | そう言われると緊張するなあ。三人しゃがみこむ。ぼそぼそ話をする。 |
カチョウ | 驚いた。こんな島に原住民がいたとは。しかも二人だけ。両方とも男とは、ちとやっかいだな。 |
コマツ | そうですね、私はあまり好きではありませんが、彼らには立ち退いてもらうのが一番でしょうね。 |
シュウイチ |
立ち退きって、あなたたちは、いったい……。 |
コマツ | 私たちは観光会社のものです。私たちの仕事は、まだ見ぬ島を発見し、そこが観光地に向いているかどうかを調査することでして。 |
カチョウ | そして我々は今日、正に楽園とも言えるこの島を発見し、世界で初めて足を踏み入れた、はずだった。君たちがいなければ、な。ま、そんなことはどうでもいい。コマツ君! |
コマツ | は、はい。 |
カチョウ |
仕事の内容を変更。原住艮の少年たちの説得を最擾先とするそして、君、シュウイチ君。 |
シュウイチ | はい。 |
カチョウ | 君にも仕事してもらいたい。原住民の少年の一人を、ここに連れて来てほしいんだ。ただし、われわれに頼まれたことは口にしないでくれ。できるね。 |
シュウイチ | そ、それは…! |
カチョウ |
帰りたかったら(とすごむ)、日本に帰りたかったら、言う通りに働いてくれたまえ。われわれの船以外に、帰国の手段はないのだよ。わかってくれるかな。 |
コマツ | 課長、なにも、少年相手にすごまなくても。 |
カチョウ | すまん、つい、な。だが、しか−し、私はこの島に賭けているのだ。引き下がるわけにはいかん。いいかな、ここがリゾート地として生まれ変われば、皆が幸せになれるんだよ。地元の人間も潤うんだ。未開地の開発に一肌脱いでくれんか。それで、君らも日本に無事帰還できる。日本では家族が君のことを心配してるだろうな。君の帰りを、待ってるだろうなあ。 |
シュウイチ |
くすん。わかりました。やってみます。 |
カチョウ | よし、よく言った。それでこそ男だ。手荒な真似はしたくないんだよ。だから君に頼むんだ。期待してるぞ。 |
コマツ | (こそっと)あんまり無理するなよ。 |
カチョウ | 今、何を言ったんだ? |
コマツ | はい、がんばれ、と。 |
カチョウ | そうか。 |
二人、退場する。 | |
シュウイチ |
さてと、引き受けてしまったけど、これって、ポポやドラを裏切ることになるのかな。でも、仕方ないよね。ぼくたちが日本に帰る方法は、あの人たちの船に乗せてもらうしかないわけだし。それに、ほら、立ち退きって言っても大企業の人だから、ドラやポポの生活もちゃんと保証してくれるはずだし。でも、あの二人、いまの生活が一番幸せかもしれないし、やっぱりそっとしておいてあげるべきなのかもしれないし…… |
ポポ | シュウイチ、シュウイチ、どした? |
シュウイチ | あ、いや、あの、その、散歩。サンポ。 |
ポポ | サ・ン・ポ? |
シュウイチ |
いや、もう、いいんだ。ヘヘヘ。 |
ポポ | ヘヘヘヘ。 |
シュウイチ | あのですね、さっき、浜辺で、すごいもの見つけたんですよ! |
ポポ | (うなづいている) |
シュウイチ |
はまベ、すごいもの、見つけた。 |
ポポ | すごいもの! |
シュウイチ | そ、すごいもの、いっしょ、見に、行く、いい? |
ポポ | ウン、行く、すごいもの、行く!オーイ、みんな−、浜辺に、すごいもの、見に行くんだな−! |
シュウイチ |
わーっ、(あわててポポのくちをふさぐ。) |
ボポ | ムグググ |
シュウイチ | これは、みんなに秘密にしたいんです。ひみつ、ふたりだけ、ひみつ。 |
ポポ | ひみつ、なんだな? |
シュウイチ |
誰にも言わない、ポポとシュウイチのヒミツ。二人のひみつ。 |
ポポ | わかった。ひみつにするんだな。ひみつ。 |
シュウイチ | そうそう、やっとわかってくれたか。 |
ポポ | ドラにいちゃ−ん、ひみつってなんだ−! |
シュウイチ |
(あわててポポの口をぶさぐ)秘密を大声で知らせてどうするんですか。まったく。(ポポの手を引っ張って行く) |
ポポ | どこ?すごいもの、どこ? |
シュウイチ | え−と、もうすぐ。もうすぐ。向こうの海、見てて。 |
ポポ | どれ、どれなんだな。 |
カチョウとコマッがすぱやく近寄り、 ポポをロープでぐるぐる巻きにしてしまう。 唖然とするシュウイチ。 |
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カチョウ |
ハハハ、作戦成功!コマツ君、ただちに説得開始だ。 |
シュウイチ | どういうことですか。手荒な真似はしたくないって、さっき言ってたじゃないですか。 |
コマツ | ごめん。原住艮が暴れたら困るって、カチョウが言うもんだから。 |
シュウイチ | そんな……。 |
カチョウ |
心配するな。少しの間拘束するだけだ。 |
ポポ | どした、なんだ、シュウイチ、シュウイチ、助けてくれ。 |
シュウイチ、発作的に助けようとするが、 課長がそうさせない。 |
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シュウイチ | ごめん。こんなことになるなんて。 |
ポポ | シュウイチ、やめてくれ、シュウイチ、助けてくれ。 |
シュウイチ |
ね、やっぱりよくないですよ、この島を奪い取るなんて。そっとしておいてあげましょう。 |
カチョウ | それはその通りだ。だが、しか−し!企業は常に利益が最優先。情に流されるほど甘くはないのだ。ひっひ−ひ−ひっ! |
コマツ | 課長が本性を現した。 |
カチョウ | だが、しか−し、私もそこまで非道じゃあない。いい考えがある。フフフわが社がリゾートホテルを造ったら、お前たちには(ポポのアゴをなでて)従業員としてはたらいてもらおうじゃないか。原住民として歌や踊りを披露するのだ。親に死に別れ、民族も滅亡し、たった二人生き残った兄弟、この島を守り続けた汚れなき少年たちが、今、皆様のために、悲しき民族の歌と踊りをご披露致します!!!これは受けるぞ。どうだ、コマツ君。君はどう思う? |
コマツ |
わ、私は…‐アイデアは良いと思いますが、でも、やりすぎって感じも。 |
カチョウ | そうだろう、そうだろう。わかってくれたかね、シュウイチ君。この天才課長が考えた、これが最善の案なんだよ。 |
シュウイチ | なんという人だ。いや、人でなしだ。そうやって何もかも自分に都合よく利用して。弱い者から何もかも奪おうとする。美しいものをこわそうとする。許せない。ぼくは、絶対許さない。ぽぼ、絶対助けるから! |
シュウイチ、ダッシュで退場。 | |
カチョウ |
フッ、ガキの駄々っ子につきあってる暇はない。放っておけ。さあ、コマツ君、さっそく説得に取りかかろう。 |
コマツ | でも、課長。この子の言葉、分かりませんよ、通訳がいないと。 |
カチョウ | しまったあ!あのガキがいないと説得できんのか。追うぞ、コマツ君。 |
コマツ | 課長、この子は? |
カチョウ | 連れてこい。そいつはエサだ。おとりにしてやる。 |
第七場 | |
ナオト |
どうだ、いたか。 |
ドラ | いない。ポポの声、開こえた。ポポ、いない。 |
フミヤ | ふうん、どこ行ったんだろう。もう日が暮れるよ。それにシュウイチもいないし。 |
ナオト | あんなやつ、知ったこっちやねえ。 |
フミヤ |
に怒ってんのさ。 |
ナオト | なにもここに来てまで、学校だの、勉強だのって言うことねえだろう。そんなに勉強勉強言うんなら、冒険なんかするなって。 |
ドラ | 日が暮れる。ポポ帰る。いつも帰る……ポポいない。いない。 |
シュウイチ、ダッシュで登場。 | |
シュウイチ |
大変だ−! |
ナオト | シュウイチ、てめえ、今までどこに…… |
シュウイチ | ポポが、ポポが、つかまった! |
ドラ | ポポ? |
フミヤ |
つかまった?なにに、つかまったって? |
シュウイチ | だから、人間につかまってしまったんです。 |
フミヤ | 人間? 俺たち以外に人間が? |
ナオト | どういうこったよ。 |
シュウイチ |
説明は後、早く、早く助けないと。 |
カチョウ(声) | その必要はない。 |
カチョウ、コマツ、ポボを違れて登場。 | |
カチョウ |
こっちから出向いてやったからな。 |
ドラ | ポポ!ポポ! |
カチョウ | 来るな! |
ポポ | 兄ちゃ−ん! |
ナオト |
てめえ、何者だ。日本人か。 |
カチョウ | フッ、威勢のいいガキだ。いいかあ、簡潔に要約して話すから、よく聞け。 |
ナオト | なんだ、大学入試みたいな言い方して。 |
カチョウ | ふふふ、お前たちとは、ちょとちがうのだ。国立一期に現役合格したこの俺様の話をよく聞け。われわれは、この島に、一大リゾート施設を造ることに決めたあ。 |
全員 | ……… |
カチョウ | おそれいったか。この原住民が邪魔でな、立ち退いてもらいたいのだが、ここで働かせてやってもいいぞお! |
フミヤ | なんて強引な奴だ。警察が黙っていると思うのか。 |
カチョウ | 警察。こんな地球の外れの、誰も知らない小島に、警察が来ると思うのか。ここはな、まさに無法地帯なのだ。力のあるものが勝つのさ。 |
ナオト |
ヘっ、そんなおどしにだれが乗るかよ。 |
フミヤ | どうやってここに来たのか知らないけど、おとなしく帰った方がいいよ。ついでにおれたちも乗せてね。 |
カチョウ | 大丈夫、お前たちは日本に返してやるよ。だから、私たちに協力するんだな。 |
ナオト | 誰が帰りたいと言った。オレはここが気に入ってるんだ。てめえら、丸腰だろう。武器なんて持ってないだろう。見りゃわかるよ、サラリーマン。 |
カチョウ |
ふっ、確かに我々は武装していない。しか−し、我々には人質がいる。人質は、お前たちだ。もし協力しないと言うなら、我々は、お前たちをここに残して日本に帰るまでのことよ。もちろん帰っても、誰にもお前たちのことは、一言も言うもんか。君、どうする?帰りたいんだろう。 |
フミヤ | ぐっ! |
カチョウ | しか−し、もう一人人質がいる。こいつだ。ポポと言ったな。サメの餌にでもしようか。 |
ドラ | 何話してる。ポポ、かえせ。ナオト、ボポ、返せ。 |
コマツ |
課長、いくらなんでも、やりすぎですよ。 |
カチョウ | 私に背くつもりかね。心配するな。もう少しでわれわれの夢がかなうのだ。さあ、君たち、この島を引き渡してくれるかね。 |
ドラ | うお−っ!,ポポー!(飛び掛かろうとするのを、フミヤとシュウイチが懸命に止める) |
フミヤ | 待て!落ちつけ! |
シュウイチ |
暴力でなくて、他に方法があるはずです。 |
ナオト | ねえよ。ひとつしかねえよ。こんなに頭にきたのは初めてだ。ズルクて、ヒキョウで、イヤラシクて、子供を楯にする大人なんて、最低だ。カづくで奪い返してやる。 |
ドラ | 放せ。放せ。ポポ、ポポ。フーッ!フーッ! |
コマツ | 課長、彼らは興奮しきっています。とても取引できる状態ではありません。 |
カチョウ |
ムムム、やむを得ない。一時退避だ。ここは私が引き受ける。君はそのガキを連れて船に行け。閉じ込めるんだ。はなすんじゃねえぞ。 |
コマツ | そんな、子供相手にあまりにも可哀想ですよ。この子は解放してあげましょうよ。静かに話し合えばわかってくれるはずです。 |
カチョウ | 黙れ!つべこべ言うな。この島はな、やっと見つけた、オレの夢なんだ。さっさと行け!行け!(コマツもしぶしぶその場を離れる) |
ナオト | シュウイチ、お前は、本当に助けたいと思っているのかよ。どうなんだ。 |
シュウイチ |
ぼくのせいでこうなったんだ。助けたい。助けたいよ。 |
ナオト | そうか。フミヤ、お前はどうなんだ。いつもみたいに、流れにまかせるのかよ。 |
フミヤ |
いや、違う。今度はオレの心が叫んでいる。ポポを助けたい。この島を、守りたい。 |
ナオト | オレもさ。今一番やりたいことが、見つかったぜ。この島は、ポポとドラのーものだ。だれにも渡さない。 |
ドラ |
アリガト。みんな、アリガト。 |
ナオト | じゃ、やるぞ。最初で最後の鬼退治だ。いいか、手を出すな。オレにまかせろ。 |
カチョウ | フフフ、調子に乗るなよ、こわっぱが。いいだろう、受けて立とうじゃないか。 |
ナオト | 一対一、男と男の勝負だ。いくぞ。 |
カチョウ |
言っておくが、私は強いぞ。なんせ書道六段、茶道二段(ナオトのジャプが軽く入る)うっ!最後まで聞け、バカものが。いいか英検二段、将棋一段(ナオトのジャブがまた軽く入る)うっ! |
ナオト | それから? |
カチョウ | そろばん五段(また、ナオトのパンチがくるが、さっと避ける) |
ナオト | おっ、避けたな。(ナオト、さらにパンチを繰り出そうとするが、) |
カチョウ | 最後まで聞けと言ったろうが。アチョー! |
ナオト | ぐはっ!(腹を抑えてうづくまる) |
カチョウ |
カンフ三段。 |
ナオト | 嘘だ。 |
カチョウ | 日本のサラリーマンを甘く見るんじゃねえ。アチョ−!(ナオトひっくり返る) |
フミヤ シュウイチ |
ナオト! |
カチョウ |
来るか!プルースリー直伝の腕をとっくり見せてやろうか。 |
シュウイチ | (フミヤに)よしましょう。 |
カチョウ | それがいい。フフフ、少し頭を冷やすんだな。 |
振り返ると、コマツとポポがいる。 |
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カチョウ | 何をしている。もたもたするな。早く船に連れていけ。 |
コマツ | お断りします。 |
カチョウ | なんだと。 |
コマツ |
私にも良心があります。こんなやり方には、従えません。 |
カチョウ | 貴様、この土壇場の正念場に、上司の命令に逆らうのか。すぐ連れていけ。 |
コマツ | お断りします。 |
カチョウ | うぬ−、会社に損害を与える気か。貴様は首だ。貴様の女房も、貴様の子供も、路頭に迷うんだぞ。いいのか。 |
コマツ |
課長、人を苦しめて、美しいものを壊して、それでどうして利益をあげたと言えるんですか。私は、ごめんです。 |
カチョウ | うぬっ、そいつをよこせ。(ポポを奪い取る) |
ナオト | まて−!ポポを返せ。(追いすがる) |
カチョウ |
まだ来るか。アチョー!どうだ。戦闘能カゼロめ。 |
ナオト | くそ−。(死にもの狂いで立ち上がる) |
ドラ | ナオト、アプナイ、ナオト、アプナイ、ナイナイナイナイナイナイナイナイプル、プル、ブル、プルプルプル |
フミヤ | ドラ、どうした? |
ドラ |
ポポ、ポポ、わかるか。プルプルブル…… |
ポボ | うん、兄ちやん。プルッ、ブルプル‐…… |
ドラ | いくぞ。 |
ポポ | うん。ポポッ、ポポッ、ポポポポポポ |
ドラ |
ドラッ、ドラッ、ドラドララララララララ |
ポポ・ドラ | アチャー! |
カチョーぴっくり返る。ポポの縄ほどける。 | |
全員 | 何だ? |
ポポ |
兄ちゃん、ポポッ、ポポッ、ポポポポポポ |
ドラ | ドラッ、ドラッ、ドラドララララララララ |
ポボ・ドラ | アチャー! |
カチョー、またひっくり返る。 |
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フミヤ | 原住民パワーだ! |
ポポ | ポポッ、ポポッ、ポポポポポポ |
ドラ | ドラッ、ドラッ、ドラドララララララララ |
全員 |
アチャー! |
カチョウ | (また、ひっくり返る。もがきながら)そんな、そんな、ばななあ!(手で目に見えないバナナをつかみとろうとして、気を失う) |
全員 | やったあ! |
ドウンと幕降りる。 |