古 典 の 通 り 

☆2010/05/7 開始

西鶴    「世間胸算用」        3/7
      「夜の寝覚」          2011/1/28 
      「室町の物語草子」      12/4 
紀貫之      「土佐日記」          
松尾芭蕉      「おくのほそ道」       
鴨長明        「 方丈記」    
作者不詳      「竹取物語」     

 

『 世間胸算用 』  西鶴
 西鶴最後の作品。西鶴の最高傑作。庶民の大晦日の迎え方、過ごし方が、きわめて具体的に豊富な事例で描かれている。どうやってこれだけの情報を仕入れたのだろうと、まずは感心する。昔は日常品、日常の食料品を掛けで、付けで買っていたのだなあと、自分の子供時代を思い抱いて
納得しながら読んだ。そして、もっと若いときにこれを読んでいれば、と悔やんでも、もうもどらないか。短編集なのでかなり読みやすかった。それにしても、江戸時代の庶民のたくましいこと、にぎやかなこと。
『 夜の寝覚 』
 これは、長編小説だ。読んでいて、かなりびっくりした。しかも中間部分と後ろ部分に大きな欠損があり、全体として半分程度しか僕らは読めない。にもかかわらず、古典として、高い評価は崩れない。
 一人の女性の誕生から死までを追っている。絶世の美女であり、技芸にも優れ、家政もよくまとめ、大勢の家人の世話もこまやかに行い、慕われながら、次々と襲う不幸、追い詰められるぎりぎりの状況が繰り返される。、そうした中で、男の言いなりにならない、女として自立し成長していく、その心の成長・変化を実に詳細に、執拗に追い続け、書き続けているのである。徹底した心理の追求には脱帽してしまう。平安時代にすでにこのような作品が書かれていたとは。文化の爆発的な進化というものに、驚いてしまう。
 作者は、更級日記の人ではないかといわれているらしい。
『 室町の物語草子 』   
 小学館の『日本古典文学全集』の中の『63 室町物語草子集』を読んだ。13の物語草子が入っている。かなり奇想天外で、おもしろい。
 圧巻は『酒伝童子絵』だ。残酷無比な童子一味の行いの、リアルな描写はまるでホラーだ。彼らと頼光一行との闘いの様子が、これまたリアルでおもしろい。
 『御曹子島渡』や『橋立の本地』では、まるでいま流行のアニメを見てるみたいな気がした。いろんな世界が出てきて、いろんなものが登場して、空さえとぶのだ。
 そして、考えさせられたのが、『磯崎』。鬼の面をかぶって夫の第二夫人を殺してしまい、面がとれなくなってしまうだけでなく、心身ともに次第に鬼になっていく。その母親を息子が説教する。心が鬼だから、からだもそれに合わせて鬼になっていく。もとの人間に戻るには、まず心を空にしなければならない。と、その言葉に、私は深刻な真実を読んで、まじめになってしまった。 
 『ものくさ太郎』『一寸法師』『浦島の太郎』などもある。今伝わっている話と微妙に違っているのも面白い。

 土 佐 日 記 』   紀貫之                       
 土佐から京までの55日間の旅日記である。全体を通して読んだのは恥ずかしながら、はじめてである。なんとまあ、遅遅として進まぬ船であることか。当時の船旅の様子、船頭の様子が、まず面白かった。また歌がどれほど日常生活に結びついているか、こどもが、自主的に歌を詠むことの多いことから、それがよくわかる。国司の旅に如何に多くの船が伴うのかも、そこに群がる人々の、純粋な心で来るものと、目当てがあってくるものと。そしてこの日記がいかに見事に文学的な意図でかかれたものであるかも。
 古典にしては読みやすかった。えっ、これは何なんだ、という言葉が毎回出てくるのも面白かった。
 『要説 土佐日記 全』 日榮社 で読んだ。これおすすめ 。
 『 おくのほそ道 』   松尾芭蕉
 恥ずかしながら、初めて全文通して読んだ気がする。おもしろかった。なるほど、風雅の道の探求だ。風雅の道の製作でもある。この本の面白さは、その文の調べにある。歌枕をたずね、その風趣を新たにする。かくて日本人の美意識が確定した。それにしても、どこにでも芭蕉の弟子、あるいは芭蕉崇拝の輩がいるのには驚いた。超有名人だったのだ。
 
  『 方 丈 記 』        鴨 長明
 歌の道で高くとりたてられることを夢見ながら、あるいは父の地位を取り戻すこともできず、夢やぶれた、文学男である。あきらめて執筆にいそしんだ柔らかな、傷つきやすい、だからこそ身をかくした男、そんな形で彼の文才が花開いた。彼の道を邪魔した者達は歴史から消えたが、長明の名は、全国民の脳裏にある。そのことを考えると、感慨深いものがある。
 当時の都における天変地異の描写がすばらしい。火が飛び移っていく大火の様子、清盛の起こした福原遷都の、まさに災害と同じ結果の様子、大飢餓のときの死臭ふんぷんたる様子など、きわめて具体的かつ印象的だ。
 そして後半の隠遁生活の様子。なんか。必死に意地張って生きている感じがただよってきて、ちょっといたたまれない。でもこの中からいくつかの名著が生まれたというなのだ。

 
 『 竹 取 物 語 』      作者不詳
 かぐや姫の物語ですね。第一部にあたるかぐや姫の発見から成長にいたる部分と、第三部のあたるかぐや姫昇天の部分は、子どものころから、日本人なら誰もが知っている話、いわば国民的な文化である。今回面白かったのは第二部にあたる部分で、まるでアニメだなと、思った。それにしても、いつも何人ものストーカーが、おおぴらに家の周辺をうろついたり、のぞいたりでは、たまいないよ、と思った。五人の有力な婿候補者の話が面白いのだけれど、海の嵐の描写がすごかった。この第二部、残酷でもある。昔のおとぎ話は、かなり残酷でも在る。
 帝が残酷な女だ、と言いつつ姫に夢中になっちゃったのも面白い。

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