みやぎ高校演劇24号
情熱と熱意 村岡利信
平成18年度活動報告 毛利理恵子
リーダー研修会報告 大石和彦
総合研修会報告 伊東 俊
   
   
   

 

情熱と熱意

           宮城県高等学校文化連盟演劇専門部長
           宮城県高等学校演劇協議会長
           宮城県宮城広瀬高等学校長
                             村岡利信

 平成十八年度も宮城県高等学校演劇協議会としては、充実した活動ができました。これも、熱意溢れる各校演劇部の先生方の指導と部員の演劇にかける情熱による
ものと感謝いたします。
 各校の演劇部では文化祭公演や単独公演などがあったりしますが、中でも県高校演劇コンクール (主催宮城県高校文化連盟演劇専門部・宮城県高校演劇協議会)は、どの高校にとっても、自分たちの作品を発表する大切な機会です。今年度も十月に地区大会(予選)が開催され、十一月に名取市文化会館を会場にして二日間、県中央大会(県大会)が開催されました。各地区代表の生徒の思いを感じさせる熱のこもった個性的な演劇が上演されました。審査の結果、角田高校と宮城広瀬
高校が東北大会に出場することになりました。
 県中央大会の審査員の一人であった藤田博先生からは、「舞台の上では、芝居を演ずるのではなく、人間を演ずる」との話がありました。人間を演ずるとはどういうことか、そのためには何を考え、練習し、何を目標に生活すべきかという興味深い課題をいただきました。
 作品を創り上げるためには、仲間と一つの目標に向かって、何ケ月も自分たちの劇を練り上げる。一度、創っても、また、何度も手直しをしていかねばならない。多くの時間とエネルギーを必要とし、仲間との意見のぶつかり合いもいも乗り越えなければなりません。
 しかしながら、苦しいことを支え合い、乗り越え、さらに成長するという体験は得難いものです。そのような経験を共有できる人がいるというのは大きな喜びであり、恵まれたことだと率直に思います。
 各上演の間の三十分間に演劇部員がリーダーのかけ声のもと、舞台装置の撤去と次の舞台装置の仕込みに、一致協力して秒単位の準備を進めているのを見ると、各部員の演劇にかける情熱と力量を感じます。
 今年度もまた、演劇部員の育成と技術向上のために、リーダー研修会と総合研修会が開催されました。プロの演劇人や技術者から、直接、高校生が指導を受けるというのは実に素晴らしいシステムです。
 演劇が成立するためには、舞台装置、照明、音響、演技演出、メイクアップなど、基本的な知識と経験が必要です。近頃は脚本の創作も大事な技術です。そのような基本的な技術の上に立って、独創的で人の心を打つ印象深い演劇が創られます。
 このような大変な手間のかかる地道な指導を長い間続けてこられたのは顧問の先生の高校演劇にかける熱意です。演劇部員の情熱と先生方の熱意が今日の本県の演劇活動を支え、演劇コンクールを発展させてきました。
 研修会の講師の先生方、地区大会及び県大会で審査員として丁寧に講評していただいた先生方、名取市文化センターをはじめ施設の方々には親切に生徒を指導していただきありがとうございました。
 近年、少子化の影響もあって、演劇部員が減少していますが、今後とも質の高い高校演劇が宮城県で上演されることを心より願います。そして、演劇を大いに楽しんでください。
 二年間、宮城高校演劇にたずさわる機会を与えていただきました。ありがたく思います。

 

平成18年度 活動報告

                                 宮城県高等学校文化連盟演劇専門部
                                 宮城県高等学校演劇協議会
                                                    事務局長 毛利理恵子

○高校演劇の実情
 協議会加盟高校の演劇部員総数がついに四百人を割った。ここ数年の間に二百人も減少したことになる。今年度は加盟四十七校のうち七校が、部員不足などの理由でコンクールヘの参加を辞退した。学校の統合により、演劇部そのものが消滅
した高校もあるという。活動している生徒たちは実に生き生きとしている。それは以前と変わりはない。しかし、観客数は減少しているような気がする。会場の都合で地区大会が平日開催を余儀なくされていることとも大きく関係があろう。県によっては教育活動の場合は会場費が無料同然のところもあると聞く。その意味では行政に対する更なる働きかけも必要であろう。
 一方で明るい話題もある。角田女子高と統合した角田高校が初の東北大会出場を果たした。もちろん角田女子高の演劇部が母体であるが、男子部員が加入したことで一味違った劇が出来上がったことは間違いない。今後の共学化により、演
劇部の活動が活発になることを願っている。
 また、来る四月の末に若林・太白地区の三校(南・東・向山)が、合同公演を行う。合同公演には二倍・三倍のエネルギーが必要であるが、得られるものも大きいはずである。若林・太白地区は部員不足に悩んでいる高校が多く、何とか盛り上げたいという思いから今回の公演を企画したようである。何よりも、部員たちの意欲が学校全体に伝わり、仲間の輪が広まれば嬉しい限りである。このような地道な活動が他の地区でも見られるようになり、高校演劇全体の活性化につな
がればと願わざるをえない。
 十九年度は十二月に名取市民会館で東北大会が行われる。県全体で盛り上げて、宮城の演劇を東北に発信できる絶好の機会にしたい。

○大会関係
@地区大会
仙台青葉地区 (十月七日〜八日 広瀬文化センター)
  審査員 石原 哲也   絵永 けい   窪田 篤人
仙台泉宮城野地区 (十月十四日〜十五日 広瀬文化センター)
  審査員 佐々木久善   笠原  彰   佐々木 真
仙台若林太白地区 (十月十八日〜十九日 若林文化センター)
  審査員 砂拉 三駄   寺沢 幹緒   木村まゆみ
北部地区 (十月五日〜六日 ドリームパル)
  審査員 石川 裕人   秋 亜締羅   生田  恵
南部地区 (十月十四日〜十五日 えずこホール)
  審査員 朝日 雅宏   水戸 雅彦   狭守  勇
東部地区 (十月十四日〜十五日 かなんホール)
  審査員 升 孝一郎   井伏銀太郎   伊東  俊
A中央大会 (十一月十一日〜十二日 名取市文化会館)
  審査員 藤田 俸   なかじょう のぶ   近江 正人
  出場校  利府    第二女子  古川黎明  仙台育英 
        第三女子  黒川    古川     白石女子 
        宮城広瀬  第一女子  塩釜女子  角田
最優秀賞 NHK賞・・・・・角田 (東北大会)
優秀賞 東北放送賞・・・宮城広瀬 (東北大会)
優秀賞 白石女子・・・・・優良賞 他九校
創作脚本賞・・・・・・・・・・ 仙台育英
B東北大会 (十二月二十三日〜二十四日 秋田市文化会館)
   角田・宮城広瀬が優良賞を受賞

○研修会関係

@リーダー研修会 (七月二十二日〜二十三日 奥松島ユースホ  ステル一泊二日)
  講師 わらび座
A総合研修会 (七月二十五日〜二十七日 青年文化センター)
  内容  舞台基礎 照明 音響 装置 身体訓練 
       演技演出 ボイス講座 演技術 メイクアップ 
       創作脚本
  講師  金野倫明 加藤俊夫  米澤 牛  石川裕人  
       杉内浩幸 八巻寿文 伊藤祥司 館林敦士 
       西岡志麻 佐々木真
B舞台技術顧問研修会 (八月十八日 名取市文化会館)
  講師 (会館職員)

○会議
@総会 (五月十九日 中央市民センター)
A全県顧問会 (九月二十二日 中央市民センター)
B理事会
    第一回 五月二十二日  第二回 六月十五日
    第三回 七月十二日   第四回 九月六日
    第五回 十二月八日   第六回一月十七日
    第七回 二月二十日
    第八回・会計監査 三月十六日
                        (中央市民センター)
                            
             (以上敬称略)

 

リーダー研修会報告

                 リーダー研修会実行委員長
                            大石和彦

 平成十八年七月二十二日〜二十三日、第十五回宮城県高等学校演劇リーダー研修会が、パイラ松島を会場に秋田の劇団「わらび座」の四人を迎え、生徒七十八名と教員十五名の参加を得て開催されました。
 本県高校演劇研修事業の、もう一つの柱である総合演劇研修会との両輪として、リー研が今年もその役目を無事に果たせたことを報告いたします。
 リー研の課題は、年と共に変わります。草創期は二泊三日で行われ、高校演劇としての全県的研修事業を組織し成立させること自体が目的でした。第二期は、演劇を創る方法論を学ぶための時期、特に創作劇の学習に重点が置かれました。そして第三期には、客に見せる為の表現術としての演技術・演出術が課題となっていたように思います。今年と来年も、この流れの中の一つに位置づけられるのではないでしょうか。
 演劇も、その指導を仰げる人が多いとは言えず、生徒諸君も、数少ない機会を逃さず少しでも多くを吸収しようという意気込みが感じられる研修会でした。
 部員数の減少が顕著な状況を打破するためにも、演劇の楽しさをしっかりと感じ取れるような研修となるような企画・運営をこれからも心がけていきたいものです。

 

総合研修会報告

                   総合研修会実行委員長
                            伊東 俊

 平成十八年度の総合研修会は、七月二十五日から二十七日までの三日間、例年通り仙台市青葉区の青年文化センターで開催されました。以下に、理事会に提出された「第16回総合研修会の総括」の一部を掲載して報告に代えます。

アンケート結果について
(1)「大変意義があった」「ある程度は意義があった」を合わせ  て約95%という結果が出たので、生徒には好評だったと考  えられる。講座による差もそれほどなかった。
(2)持ち物をプリントで配付するなどして、事前に徹底してほし  いという意見がかなりあった。
(3)講義中心よりも、実技中心の内容を望む声が多かった。
(4)担当教員の感想でも、「事前連絡の徹底」「講師との十分  な連絡」を望む声が多かった。

来年度に向けての課題
(1)テキストについて

@ 毎年ごとの内容の吟味が必要である。特に、第2部(基礎  編)は、金野倫明先生の原稿をそのまま使っている形にな  っているが、著作権の問題もあり、このままでよいのか検討  し、協議会で責任を持って編集すべきではないか。また、「メ  イク」について、講師の先生と考え方の違う内容もあったこと  が指摘されている。
A 各講師にお願いする部分については、当日になってあわて  てコピーすることのないように、事前にテキストに組み込んで  おくことが望ましい。
B 現在は経費節減のため、版下作成と印刷を事務局が行い  製本だけを業者に発注しているが、ページ数が多いため、
  事 務局の負担が大きすぎる。なんらかの方策を考える必  要あり
C 今年から部数を400部に削減したが、それでもな  お120  冊 の残部が出ている。残部は、各地区に学校数に応じて  配付することとしたい。来年以降は、部員数に応じて印刷部  数を決めることとしたい。

講座の組み方・講師の選定・ その他
@ 今年、新設した「ボイス講座」は好評だった。次年度も継続  すべきである。
A 「演技演出」と「演技術入門」は区別がはっきりしなかった。  それぞれの講座の特徴をはっきりさせる必要がある。
B 来年度は講師を変える必要はないと考えるが、講師の先  生の予定の関係で引き受けていただけないこともある。在  仙の方で適任の方をリストアップしておく必要があるのでは  ないだろうか。
C 今年初めて、「講師の先生を囲むつどい」を設定した。いろ  いろな意見が聞けて有益だったので、来年度も続けていき  たい。

運営上の問題
@ 細かい点については、きちんと引き継ぐ必要がある。(講師  の先生の駐車場代とか、机や椅子の確保など)
A なるべく早く講師依頼を行い、講師の先生との事前打合せ  を行っておく必要がある。特に、講座の内容、持ち物、注意  する点などは、申込の段階で、各演劇部に徹底しておく方  策を講じるべきである。
B どの講座に参加するか覚えていなかったり、参加していて  も主体性が足りなかったりする生徒も見受けられた。各校の  顧問からの指導を徹底させる必要がある。

 


「東北会に参加して」
       
 
              2006年度宮城県中央大会最優秀賞
              東北大会優良賞
               

                        角田高等学校
                                      


 私たち・角田高校演劇部は、「光源」という劇に夏から取り組み、文化祭・地区大会・県大会・東北大会と、改良を加えながら練習に励み、時間をかけて作り上げた舞台を、たくさんの方々に見ていただくことができました。県大会で最優秀賞・NHK賞という栄えある賞をいただき、東北大会に出場できたことは、私た
ち部員全員に、大きな驚きと喜びを味わわせてくれました。
 秋田で行われた東北大会では、各県の代表校・2校ずつ、計12校が上演を行い、さすがに各県で選ばれただけあり、どの舞台も、とても素晴らしいものでした。笑いを引き起こすものもあれば、涙を誘うものもあり、それぞれの学校の個性が表れていて、とても楽しめると同時に、勉強にもなりました。私たちも、他の学校に負けないよう、精一杯、上演を行いました。ここまで来る間には、たくさんの失敗やお互いの意見の違いなどから涙を流したこともありましたが、それを乗り越えて、納得のいく舞台を作り上げることができたと感じています。 
 遠い秋田での大会だったにもかかわらず、校長先生を始めとする先生方や保護者の皆さんが上演を見に来てくださいました。これまで私たちを支えてくださった顧問の先生方、家族や友人たちも含め、多くの方々に改めて感謝の気持ちをお伝えしたいと思います。ありがとうございました。
 今後は、東北大会で経験したこと、勉強したことを活かしながら、もう一度、初心に戻って、さらに素晴らしい舞台をつくれるように、部員一丸となり、活動に励んでいきたいと思っています。 

 

中身のあるもの

           2006宮城県中央大会優秀賞
               東北大会優良賞
      

              
宮城県宮城広瀬高等学校


 今回、私たちが取り組んだ作品は、宮沢賢治の代表作『銀河鉄道の夜』を脚色したものでした。その内容はとても深く、ただ台本を読んでいるだけでは到底賢治の世界を理解することはできませんでした。この作品に限らず、どんな劇を演じる上でも、台本の中身に近付く努力を怠っては良い劇はできません。私
たちは宮沢賢治の世界へ近付くために様々なことをしました。賢治の記念館へ行ったり、『銀河鉄道の夜』以外の作品を読んだり、賢治の一生を映画で観たりしました。作品の世界観について話し合ったのも、一、二時間ではありません。それでも、この『銀河鉄道の夜』という作品の全てが理解できたかというと、そうではありません。長い時間を費やして理解できたことはほんの少しでした。ですが、そのほんの少しの理解が、確実に自分たちの劇の中身になっている実感がありました。それは演劇に限らず、全ての物事に言えるのではないでしょうか。誰かに言われるままにこなすのではなく、自分の意志で考え、自分の力でやり遂げたとき、初めて自分自身の中身となるのだと思います。昨年に続き、今年も東北大会出場を果たせたことは、『銀河鉄道の夜』という作品の中に、自分たちの伝えたかった想い、中身があったという証であると思います。大会での順位よりも、自分たちが込めた想いが、観てくれた人に伝わってくれる方が大切であり、見る側に中身のある劇を届けることこそが、本当の演劇なのだと、今回の大会を含め、三年間の部活動の中で学びました。

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