活動のまとめ

4. 2000年度 活動のまとめ 「宮城が東北を抜けた」
3. 1999年度 活動のまとめ 「われわれの演劇を」
4. 1998年度 活動のまとめ 「自分らしさこそ」
5. 1997年度 活動のまとめ 「芸術は模倣から始まる」

2000年度 活動のまとめ


 宮 城 が 東  北 を 抜 け た
 

平成十二年十二月十六・十七日に、秋田県大曲市で開催された第三十三回東北地区高校演
劇発表会に於いて、古川女子高演劇部が最優秀賞に輝き、宮城県高校演劇史上初の全国大
会出場が決まった。

 東北大会は各県代表二校の計一二校の競演であり、最優秀の学校一校のみが、東北地区代
表として、翌年八月の全国大会への切符を手にすることができるの、である。折しも平成十三年
度は、福岡が全国大会の会場である。

 古川女子高は、平成一一年度の県大会に於いても本県代表の座を射止めて東北大会に出場
し、優秀賞を受賞している。同校演劇部の面目躍如といったところであろう。

 大会では異口同音に、同校が全国大会でもトップクラスの受賞を得るであろうとの絶賛の声が
聞かれた。大いに期待して声援を送りたい。

 長年、東北大会の次点に甘んじてきた宮城県が、東北を抜けて、全国大会で優勝するというこ
とも決して夢ではなくなったのである。

 さて、全県的な高校演劇状況をお知らせすることも本記事の役目と考えるので、若干述べさせ
て戴く。

 本県百余校の高校の中で、現在高校演劇協議会に加盟しているのは五十余校であり、部員
数約六百五十名、顧問数七十余名で活動している。

 また、ここ二十年の間に、加盟校は二十校ほどの増加を見ているが、昨今の部活動離れの傾
向のご多分に漏れず、演劇部員の数は頭打ちである。

 本協議会も、各校の演劇活動の隆盛の一助となるべく、地区大会や県大会のコンクールだけ
でなく、総合演劇研修会やリーダー研修会、あるいは顧問対象の審査員研修会や舞台技術研
修会等々を実施している。

 これら各種行事の運営に当たっては、各校顧問の文字通り献身的な尽力が、その下支えとな
っていることは言うまでもない。

 更に、平成一一年度からは、生徒審査員制度が発足し、県中央大会の審査に生徒が加わっ
て、これまで二回の大会を経ている。

 本県高校演劇の伝統である、生徒顧問同席による各校代表の年次総会に於いて、真摯で熱
のこもった議論の末に実施に移されたこの制度は、現在見事に機能していることも、報告してお
きたい。

 最後に、サイコセラピーという演劇療法を引き合いに出すまでもなく、演劇活動は全人的影響
を与え合う活動であり、時間とお金とエネルギーは要するが、私達に生きる力を育む素晴らしい
活動であることを強調しておきたい。                         

                                       (文責  大石 和彦)                    

 

1999年度 活動のまとめ


                   
われわれの演劇を 

演劇専門部としては、生徒も参加する春の総会から始まって、高校演劇リーダー研修会、高校
演劇総合研修会、審査員研修、コンクールと、実に活発で充実した活動を、先生方の創意工夫
と生徒たちの厚い八ートで続けている。

 ☆生徒審査員スタート

 出来るだけ多くの作品をみせて貰おうと思いながち、地区大会、県大会と都合のつく限り足を
運んだが、宮城の高校演劇は非常にレベルが高く、充実している。ここで痛感したことは、当た
り前のことだが高校演劇の主人公は、生徒であり、それを支えている顧問だということである。

 生徒と顧問が全人を集中して創り、拍手を送る、それが高校演劇の本流。宮城の場合、今ま
で非常に素晴らしい多くの審査員の指導を受け、触発・啓発されてきて、それも非常に大事な
部分ではあるが、本流ではない。

 今、改めて本流に返ることを目指し、生徒審査員制度がスタートした。

 各地区二名ずつの代表十ニ人がニ日間、十ニ作品を観た。我々顧問側の心配や不安は、恥
ずかしくも下種の勘繰りであった。真剣に観、感性豊かに反応し、上演校に暖かい応援を送っ
た。最後に上演校に送ったメッセージは、やさしく、暖かい配慮がなされ、舞台に立つ人、そして
それを観る人のつながりの暖かさを感じるに充分であったと思う。

 審査をしてくれた生徒自身も多くのおみやげをもって、各演劇部に帰っていったのではないかと
思う。

 審査の場面でも、充分にその役割を果たし、選ばれたニ校、塩釜高校と古川女子高は東北大
会ですぱらしい活躍をし、二校が宮城の代表であることを客席にいて誇らしく思いました。

 来年も、生徒審査員の参加により、宮城の県大会が、宮城の高校演劇が、更に豊かにれ発展
してくることを期待いたします。

 ☆創作脚本賞に結実

 宮城の高校演劇のここ数年の待徴として、生徒の創作作品の増加がある。生徒自らが書き、
自らが演出し、自らが舞台に立つのである。

 これこそまさに芝居の醍醐味ではないかと思うが、そうなってきた背景には意欲の高揚だけで
はない、厳しい事情もあることと思う。たとえば、女子だけ数人の演劇部では、既製の作品から
というのはなかなか困難である。仮にに登場人物が満たされたとしても、"いま"の私たちの芝
居とはほと遠い世界でしかないなど、いろいろな背景から創作が増えてこいることと思うが、いま
自分たちが感じていると、それを出発点として、芝居を創ることは決して間連っていない。一番
確かな出発点に立ったと言っていい。

 今年の県代表はニ校とも生徒創作の作品であった。そして、古川女子高は、宮城県としては史
上ニ度目の"東北大会創作脚本賞"¶を受けた。

                          宮城県高校演劇事務局長 川名又一

1998年度  活動のまとめ


自分らしさこそ

 演劇には、いろんな制約がある。とりわけ、高校演劇には更にいくつもの制約が加わります。

 イ、上演時間は一時間以内であること。

 ロ、準備と後片付けと併せて三十分以内であること。

 ハ、舞台上に登場する人物はすべて高校生であること。

 二、スタッフもすべて高校生であること。ただし顧問が補助することは許容する。

 この四つは、コンクールに参加するときには必ず守らなければならないルール上の制約で、そ
のほかにもいろいろある。部員が少なくてなかなか上演までたどり着けない学校、女だけ、男だ
けの学校、予算が少なくて、運送費が無く大道具が作れない学校。

 少しでもそういういろいろな制約がクリアされて行くことが望ましいのは確かだが、いろんな制
約、ハンディを、どの演劇部も即マイナスにしてはいない。男のいない学校が女だけにしか作れ
ない世界を創るとき、そのハンディは逆に武器となる。高校生たちが、またそれと苦楽をともにし
ている顧問が、ハンディを武器に変えていくつもの素晴らしい舞台を創ってきた。今年も、宮城の
高校演劇はそんなすばらしさをいくつも見せてくれた。

☆ハンディを武器に

 県内を六地区(東部、北部、南部、若林太白、泉宮城野、青葉)に分割して、コンクール地区
大会が行われる。各地区それぞれに少しずつ特色を持って行われているが、全体を通して、年
を追うごとに目立っているのが、生徒の創作作品の増加である。今年は、地区大会参加五十作
品中、顧問創作二、生徒創作十五、生徒と顧問の共同創作が五。自分たちの演劇部が抱えて
いるハンディを何とか乗り越えようとする熱意。自分らしさを失わない舞台作りはどうすればいい
のか、そんな強い思いが、生徒を創作の世界に駆り立てているのではあるまいか。こんな意欲
の中から、やがて素晴らしい作品が生まれることを私は確信する。

☆面白さとは笑いなのか

 六地区代表十一作品が参加する県大会。

 鼎が浦、岩出山、聖和学園、尚絅、多賀城、たまたま創作作品が上演五までに全部並んだ。
以後は既成の作品で、仙台高、名取高、富谷高、仙台三高、佐沼高、白石女子高、宮城ニ女高
どの学校も、楽しめる素晴らしい舞台だった。非常にレベルの高い大会で、観てくれた人は、あの
高校生の息吹を感じてくれた人は、あのエネルギーと力から、何らかのメッセージを受けとってく
れたのではなかろうか。

 テレビに大きな影響を受けている今、とかく笑うことが面白いことだと思っている節がある。しか
し、三高の「十二人の怒れる男」を観た生徒たちは、一回の笑いもないのに最後の最後まで、咳
払い一つしない集中力で観た。突き動かされるように魂を揺さぶられ、感動した。

☆自分らしさこそ

 より主体的にというとき、その原点は自分らしく生きられるということではないだろうか。ひとり一
人が自分らしく、そんな理想を胸に、少しでも面白い舞台を創りたいものである。

                                 宮城県高校演劇事務局長 川名又一


                1997年度 活動のまとめ

                  芸術は模倣から始まる

 高等学校文化連盟演劇専門部の組織は年々充実して来ており、加盟校も現在六十校を越え、活発な
活動が行われております。仙台市青年文化センターで行なわれた宮城県高等学校演劇コンクール県中
央大会では、県内各地区から選ばれた十二作品のうち七作品が創作でした。各地区大会でも六割強が
創作劇で、昨年にも増して、顧問・生徒による創作劇への前向きな意欲が感じられ、様々な切り口から
自分達の姿・心を表現した作品が多く見られました。

 続いて開催される東北地区高等学校演劇発表会は、昨年十二月に青森県八戸市で開催され、宮城県
代表校として仙台育英高校が「ついに来た記念目」、宮城県第三女子高校が「不思議なクリスマスのつ
くりかた」を上演し優良賞を得ました。今回の発表会は、十二校中十校が今回の高校演劇大会のために
つくられた創作であり、最優秀作品には、秋田県立花輪高校「せせらぎはいつも」が選ばれました。この
作品は、今の演劇部の状況と戦争のせつなさをオーバーラップさせた劇中劇で、いかにも戦時の青春物
を思わせ、本当に分かりあいたいと想う気持ちの中から人を理解することの大切さを知っていく、という筋
書を、説得力ある演技で観るものの心に感動を与えました。

 また、昨年の夏に奈良県で行なわれた第四十三回全国高等学校演劇大会では、すべての作品が高校
演劇のために作られたものであり、十一本中十本が創作、残り一本も他校の顧問による作品で、演劇部
生徒による創作、脚色が多くあったことも特徴といえます。

 ところが残念なことに、今大会で出場校による著作権の侵害が明らかになり大きな問題となりました。
著作権を守ることは、文化活動に携わるものとして当然のことですし、生徒を指導する立場として教育的な
見地からも見過ごすことのできない大きな問題と認識しております。「芸術は模倣から始まる」とはいうもの
の演劇の場合でも例外ではありません。部活動の中で演劇をするのは生徒ですから・・・・、指導顧問が
上演許可、音楽著作権など著作権者に対する手続きをミスってしまった事は残念な結果でした。

 その他、高校演劇の主な活動行事としては、毎年七月上旬に開催される戦災復興展事業で、戦争と平
和に関する高校演劇を協力上演し、仙台市民をはじめ、各方面から大きな反響を呼びました。また夏休み
中には、県下ほとんどの部員が参加し、演劇の基礎や実技を学ぶ高校演劇総合研修会、そして、キャンプ
場で生徒・顧問ともども寝食を共にし、演劇づくりの基本を学ぶリーダー研修会がありました。さらに、秋の
県内各地区の演劇コンクール、第四回高文連総合文化祭開会式への参加上演とつづき、県中央大会が
十一月中句に仙台市青年文化センターで行われました。

 ところで、演劇の顧問の仕事に携わっていると、演劇と本気になって取り組んでいる生徒は、二年の間
に大きく成長することを感じます。ただ単に、演劇用語を覚えたとか、技術的に成長したというのではなく
自分というものを確実につくっていくのが見えます。キャスト・スタッフいずれの場合でも、自分の持てる力
を総動員して数力月間複数の人々と劇づくりをする訳で、演出や舞台監督の言うとおりにやっていれば良
いというものでもありません。ここで、自分が精一杯やってもダメを出され、考え、悩み、相談しながらまと
めていく作業を通して大きく変わるのだと思います。高校演劇の活動で「ものをつくる」ということは、どうも、
「自分を創っていく」ことと深い係わりがありそうです。

                                   宮城県高校演劇事務局長 狩野安正

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