思いでの獣医解剖学講義ノート

(注)すべての文章の著作権は日本獣医畜産大学獣医解剖学教室に帰属しています。

醍醐正之 日本獣医畜産大学名誉教授

もう、腸がないな-


Notice:Copyright by Dept. of Vet. Anatomy, Nippon Vet. & Anim. Sci. Univ.

Special thanks to Professor Masayuki Daigo, MD, Ph.D

ANATOMY 解剖学

系統解剖学 比較解剖学 局所解剖学 組織学 発生学

歴史

 15世紀においてレオナルド=ダ=ビンチによってイタリアに流行した生体をありのままに観察すると言う現実論的精神は、1543年アンドレアウス=ベサリウスのファブリカと呼ばれるすばらしい人体解剖図によって実現した。次いで、17世紀後半における顕微鏡の発明は、肉眼解剖学的研究と同時に、生体の微細構造を究明しようとする顕微鏡による組織学的研究へと発達したのである。

 日本における家畜解剖学は1867年(明治20年)に駒場農学校獣医教師ヨハネス=ルードウィッヒ=ヤンソンと同じくその助教の田中宏が家畜医範を発行して以来120年の歳月が流れた。その間、家畜解剖学は激動する歴史の変動を経て、明治から昭和にかけての近代戦の時代における馬の解剖学から、第二次世界大戦以後の産業動物と愛玩動物を中心とする家畜の系統解剖学ならびに比較解剖学へと発展した。また組織学と発生学(胎生学)も光学顕微鏡の時代からさらに電子顕微鏡による超微細構造による探求や、組織科学的探求へと進展した。そして日本における家畜解剖学も今日ようやくにして世界の最高レベルに達し、その発展を見るに至った。

解剖学とは

 解剖学は生物体の構造について研究する学問であるが、解剖学をその研究方法に従って分類すると一種類の動物の構造をその系統に従って順序に説明する系統解剖学と、各動物の局所についてそこにある構造を一括して説明する局所解剖学(外科解剖学、臨床解剖学)があり、さらに各種の家畜および家禽などの構造を比較研究する家畜比較解剖学の3つに分類することが出来る。その他に、健康な動物体の構造体を研究することを健態解剖学という。また病体の構造について研究することを病態解剖学と言い、病理学の一部として扱われる。また解剖学はその研究に使う器具と、研究範囲によってそれを肉眼解剖学と顕微鏡解剖学とに分けられる。顕微鏡解剖学は系統解剖学の各系統に属する器官の組織構造の他に解剖学総論として動物体を構造する細胞と組織について研究するが、この部分を特に組織学Histologieと言う。さらに組織学を細胞学と呼ぶ。また解剖学は成長した動物の平均的構造を対象として説明しているが、その他に動物体が両性の生殖細胞の結合に始まって、だんだん発達する過程を研究する発生学を含めて、同時に勉強することになる。

 以上の他に広い意味で解剖学の分野に属する学問として動物体における外観の特徴を説明する外貌学(人:形態学)、人体の構造を動物の構造と比較する比較解剖学、発生の発達順序の原因を探ってこれを実験的方法で解明しようとする実験発生学(発生機序学)がある。また人体をいくつかの性質に分け、その特徴を説明する体質学や、人種による構成の異同を研究する人類学の一部である体質人類学がある。さらに芸術家に必要な人体を解剖する芸術解剖学や、体表解剖学、投影(X線)解剖学および放射線解剖学がある。また近来は位相差顕微鏡、電子顕微鏡の発達によって光学顕微鏡では不明瞭だった細胞の一つ一つの微細構造を解明できるようになった。その結果、組織培養や組織化学などの成績と同様に、解剖学の範囲を益々増大させている。

 要するに家畜解剖学をまとめると、系統解剖学における約11種類における家畜、家禽、魚などを対象とした比較解剖学があり、さらに獣医学に固有の臨床解剖学がある。そして組織学、発生学に付随して細胞組織の微細構造を研究する電子顕微鏡学となって、これらの学問すべてが家畜学の守備範囲となっている。その他、家畜解剖学と密接な関係がある人体解剖学、人類学、古生物学、生理学、組織化学、薬理学、病理学、生物学などがある。

系統解剖学

1、骨学-----骨格形について

2、靭帯関節学-----靭帯と関節について

3、筋学-----約200対の骨格筋(主に随意筋)について、筋膜、腱、腱膜について

4、血管学、脈管学-----血管系、リンパ系について

5、内臓学-----内臓について

6、神経学-----中枢神経、末梢神経について

7、感覚器-----視覚器、平衡・聴覚器、味覚器、触覚器、嗅覚器について

家畜体の概要

 家畜は動物学上において、人間を含む他の哺乳類、爬虫類、両生類および魚類とともに脊椎動物に属し、これらの諸動物と共通した体制を持っている。第一に特徴とすることは、体の中軸に脊柱という骨格があって全身を支えていることである。椎骨という短骨が前後に(人:上下)一列に並んで脊柱を形成している。脊柱で最も原始的な形態は脊索であるが、これらは分節の構造を示さない一本の棒状のものである。脊索はどの動物でも発生の初めには共通に形成されているが、脊索の大部分はその後消失して、その一部だけが椎骨列の間に残る。椎骨は初めから分節を作り、最初に脊索の周りを軟骨として取り巻いて発生し、その後、骨に移行する。次に脊索を直接取り巻いてできた椎骨の主要部は椎体と呼ばれる。そして上下に並んでいる椎体の部分が人体では理論上、体の最も奥にある構造であるが、家畜の椎体は前後に並ぶから、脊柱は体の背側部に位置して、その体軸(脊柱)を形成している。これに対して、体の最も表面にあるものは皮膚であって、これが外界との境界となって、いろいろの性質の外力に対して身体の内部を保護している。また皮膚は、周囲の状況を知るための感覚器官として、また体温調節器としての皮膚の役割を負っている。人および家畜は空気中に住むので、皮膚の表面は大体が常に乾燥している。そして皮膚に毛が生えていることが哺乳動物の特徴である。

 家畜の体の外形を観察すると、体幹と体肢とに区別される。体幹は頭、頚および胴からなり、多くの動物ではさらに尾があるが人体では尾は皮膚の上に隆なりを形成している。胴は胸、腹および骨盤に区別される。頚の背側部は背、また骨盤の背側部は臀と呼ばれる。胴は体の中で最も太い部分であるが、人の場合では前後の幅が狭く、動物では背腹の幅が左右の幅より大きい。胴の内部で脊柱の腹側に大きい空所があるが、これらは体腔(胸腔:胸郭、胸椎、肋骨、胸郭の中にある肺、気管支、気管支動脈・静脈、心臓、食道の一部、胸膜で被う。腹腔:背骨の下、胸の後ろ、腹膜で被われる。胃、小腸、大腸、肝臓、膵臓、泌尿器、膀胱、腹腔内蔵はすべて腹膜で被われる。)と呼んで、その中にはいろいろの内臓が包括される。すなわち、消化器系、呼吸器系、泌尿生殖器系および脈管系の中心を形成する部分である。

 消化器系と呼吸器系は頭の前部で、口および鼻を経て、外界を交接する。また消化器系と泌尿生殖器は胴の後端中央の後肢の付け根の間で、肛門および外陰部と交接して、外界と交接している。また脊柱の内部には椎骨に囲まれた前後に細長い管があるが、これは脊柱管と呼んで頭蓋骨の内部にある管、頭蓋腔に続いて、その中に神経系の中枢である脳、脊髄がある。これらを骨によって囲まれた部屋にあって保護されている。そして脳および脊髄からは、末梢神経である脳神経(12対)と脊髄神経(人:13対)ならびに自律神経系が出て、全身の皮膚、筋肉、内蔵に分布している。中枢神経系の発達を動物発生学上で見ると、多数の感覚器が頭部に集中していることでわかる。すなわち、視覚器、味覚器、嗅覚器、平衡聴覚器など、これらが脊髄の前端部が特に大きくなって脳というものを作った理由の一つとも言える。しかし、霊長類の特色である非常に大きな脳の発達は、頭部における感覚器の集中が原因で形成されたものではない。

 血管系の中心を成すものは心臓であって、これから出る動脈とこれに帰る静脈は体の末端において樹枝状に分かれていて全身に分布している。血液は心臓から動脈に入り、血管の中を流れて、多くの器官の内部で毛細血管となり、細胞組織に栄養を供給するとともに酸素を送り、静脈血となって心臓に帰る。すなわち、血管は動物体内における物質の運搬道である。そして毛細血管の部分で、その血管壁を通過して組織液となり、各組織を満たし、毛細リンパ管は集まってリンパ管系を形成するが、このようにリンパ系を流れる液体をリンパと呼んでこれらのリンパ系統は血管系に付属している。

 体の運動器には骨格と筋肉がある。骨格は受動的に筋肉の働きを受け、能動的に運動できる筋肉はおよそ200対ある。

 体肢は主として運動を司るものであって、その内部には神経および血管がある。

 体幹は運動器の他に、胸腔および腹腔における内蔵と脳と脊髄とを包括し、体肢に比べて生命の保持には最も深い関係を持っている。

骨学 Osteologia, Osteology

骨の外形

 骨は外形によって1)長骨Os longum(上腕骨、大腿骨など)、2)短骨Os brere(手根骨、足根骨など)、3)扁平骨Os planum(肩甲骨、頭蓋骨の大部分)、4)含気骨Os pneumaticum(額、上顎洞、副鼻腔、鳥類の骨は骨髄内に気管支の枝が肺の外に膨れ出た気嚢を形成している)

頭骨Ossa cranii

頭蓋骨-----7種。頭蓋腔の中に脳がある。別名、脳頭蓋。

顔面骨-----顔面頭蓋。11種。内部に口腔を形成。味覚器、嗅覚器がある。口腔内蔵が中にある。

頚骨 第一頚椎-----環骨、環椎という。頭部を支えている。

   第二頚椎-----軸椎。

脊椎
頚椎 胸椎 腰椎 仙骨(椎) 尾椎
Vertebrae cervicales Vertebrae thoracicae Vertebrae lumbales Vertebrae sacrales Vertebrae coccygeae
7 18 6 (5) 15-18
7 13 6 (5) 18-24
7 13 6 (4) 24
7 14 7 (6) 21-23
7 13 7 (3) 16-21
7 13 7 (3) 21
7 12 5 (5) 3-7

胸郭-----背側は胸椎、側壁は肋骨、腹側は胸骨によって囲まれる。不正円錐形の一種の篭の形を示している。

骨表面の形態

 新鮮な生の骨の表面はすべて結合組織の骨膜によって被われるが、関節面には骨膜がない。骨膜を欠く部分では骨形成機能がない。そしてその部位は薄い硝子軟骨によって包まれる。すなわち、骨膜は関節包(嚢)に移行するために関節面を被わないのである。従って、軟骨の表面は結合組織によって軟骨膜を形成している。そこで筋肉、腱、靭帯などは骨や軟骨の表面に直接付着するのではなくて、結合性の骨膜、あるいは軟骨膜に付着している。骨膜は内外の2層からなり、知覚神経と血管に富んでいる。

 骨内膜は長骨を縦断した場合の長い空洞である髄腔<造血機能(骨髄を満たす)>の内面を被う膜で、骨髄に似た薄い膜である。骨膜も骨内膜も骨形成能を持ち、その最内層には骨芽細胞が並んでいる。その細胞は骨組織の新生と再生を行う。そして骨折などの場合に骨膜は骨芽細胞を供給し、それらの回復を図っている。また幼獣(児)では、骨端と骨幹(体)との間に骨端軟骨という軟骨の層があり、骨の長さの成長はここで行われる。成長して発育が止まるとき、この骨端軟骨は骨組織に変わり、骨端と骨幹がつながってしまう。そして、骨端軟骨のあった部位は骨端線としてその後を留めているが、骨がこのようになった生体では体長の成長は全く行われない。骨成長のためのホルモンや、栄養素の効果もなくなってしまう。

骨の組織構造

 骨の構造は乾燥した晒骨を研磨標本とするか、あるいは脱灰(固定した骨を2.5〜5.0%の硝酸水溶液に一昼夜漬ける)した骨をパラフィンあるいはセロイジンで包埋し、ミクロトームによって切片とし、さらい染色して観察する。骨は2種の構造からなる。一つはその外層を形成している厚い緻密質からなり、その他は長骨の末端などを作る海綿質からなる。そして長骨における髄腔と、海綿質を作る骨梁の間隙は、骨髄に伝搬される。しかし、頭蓋骨の一部と、肩甲骨および寛骨には海綿質が少なく、2枚の薄い板状の緻密質が両側から密接し、内部に海綿質がある。

1、緻密質

 緻密質は外部から害を受けやすい部位において発達している。部分的には太い筋肉や靭帯の付着部において、その厚さを増大させている。緻密質を作る骨単位をオステオンと呼び、中心管、オステオン層板、骨小腔、骨小管からなる。その他、オステオン間には介在層板があり、緻密質の骨膜よりには外環状層板、骨内膜の側には内環状層板がある。

2、海綿質

 海綿質は特に長骨の上・下端に発達するが、多くの扁平骨による2枚の緻密質の間や、短骨の内部にもある。海綿質は形の異なる骨片や、薄板が多方向に交差して、迷路あるいは方眼を形成したものである。頭蓋骨における扁平骨は内外2層のかなり厚い緻密質からなり、内部にある海綿質は軽くて堅い構造であり、板間層と呼ばれる。

 海綿質も緻密質と同様に力のかかる部位で発達し、大きく、そして隆起、くぼみ、陥凹となって特徴を示すが、薄板や大腿骨などの長骨上端において最も観察される。海綿質における間隙の多くは、赤色骨髄により満たされるが、長骨の骨端部と、肋骨、椎骨、並びに多くの扁平骨と短骨にも、一生涯を通じて赤色骨髄からなる。

 赤色骨髄には赤血球を産生する働きがある。長骨の骨体は大部分は脂肪からなる黄色骨髄からなる。病弱なものや、老齢な動物の骨髄は脂肪組織が蓄積し、粘液性となり、紅黄性を呈する。これらは膠様骨髄と呼ぶ。

骨の細胞的要素

 骨を結合組織として見るとき、結合組織および支持組織の特徴として、細胞と豊富な細胞間質とに区別される。前者の細胞は骨質の中に埋まっている骨細胞である、その他に、骨が新生する場所には骨芽細胞という骨を作る細胞があり、また骨の消失していく場所には破骨細胞という骨を吸収する細胞がある。骨組織の細胞間質は、膠原線維とその間を満たしている基質である。基質をコンクリートに例えれば、線維はそれに埋め込まれた鉄筋である。基質は圧力に耐え、張力に耐えて鉄筋コンクリートは強固なものとなっている。基質は若干の特殊な有機成分とともにカルシウム塩の無機質からなる。骨は絶えず造成と吸収が行われ、その収支の違いによって骨の形は年齢的に変化している。基質のCa(全灰分の80〜90%)はリン酸カルシウム、CaCl2(7〜10%)からできていて、血中のCaの間に平衡がある。これらの調節には色々なホルモン、ビタミン、酵素が関係している。

1)骨細胞

 骨質には骨小腔と呼ばれる小室が点在し、その中に骨細胞が閉じこめられている。細胞の位置は普通、2枚の層板の間に挟まっているが、1枚の層板の中に埋まっていることもある。骨細胞は普通、骨層板に挟まった卵円形でスイカの種の様な形をしている。骨細胞は層板を貫いて、多数の細い突起を出している。この突起を入れている骨室の管を骨小管と呼ぶ。骨小管は別の層の骨小腔から出る骨小管と連絡している。骨質の中に放射線方向の運河系を作る。そのように細胞質突起を入れている骨小管は、酸素や栄養をハバース管から末梢(骨髄方向)へと浸透させている。

 骨細胞は骨芽細胞が骨質造成のために最初に到来した細胞で、骨芽細胞が自分で作った骨質により閉じこめられて骨形成能力を失った細胞である。骨細胞の物質代謝は比較的速く、骨中に無機質をほ保存したり、血中にそれを放出している。またコラーゲンの合成を行う。また骨細胞には水により骨細胞周囲腔から骨小管を経て血液中に電解質と、非有機性の無機物等を放出するポンプの作用があるとされている。そしてこれらの水は骨小腔とその表面にある骨質を通過するフィルターの作用により骨細胞周囲腔に達するものと考えられる。

2)骨芽細胞(骨細胞の活性型)

 骨芽細胞は骨を作るために存在する細胞である。相当大型の20〜30μの大きさで、骨の発生において成長、再生など骨組織が作られる場所には必ずこの細胞が集まっている。すなわち、骨形成、骨化と呼ばれる現象は骨芽細胞なしには行われない。骨形成細胞である若い骨芽細胞はやがて自らの働きによる骨化に伴って、その中に包埋されて骨細胞となる。骨芽細胞は間葉細胞から形成される。骨質を作る骨形成層は、次の2層からなる。^骨膜の外層(線維層)_骨膜の内層(骨母細胞)は骨芽細胞に分化している骨細胞を含んでいる。

 これらの内・外層併せて骨を形成することから骨形成層と呼ぶ。骨芽細胞は卵円形、または不規則な形の細胞で、一般に上皮細胞のように一列に並んでいる。その中には多量のリポ核酸の存在があり、蛋白質合成を促せる細胞である。このことは電子顕微鏡で粗面小胞体の著しい発達を認めることによって裏書きされる。そしてゴルジ装置やミトコンドリアも良く発達している。骨芽細胞はコラーゲン、すなわち骨の膠原線維と基質の特殊な有機質を分泌している。後者の有機物質はムコ多糖類を主体とする物質と考えられており、それらが細胞の外に分泌すると、石灰質が沈着する。骨芽細胞はアルカリ性フォスファターゼが細胞外に分泌されると、その場所にリン酸イオンが増加し、それがCa2+を招いて石灰化が起こる。

3)破骨細胞

 破骨細胞あるいは破軟骨細胞は、骨祖細胞という骨芽細胞の先祖ともいうべき細胞から分化するか、おそらくは内皮細胞からも分化する細胞である。あるいは骨芽細胞の融合から派生し、骨表面に移動してその溶解と骨基質の再吸収のための加水分解(消化)酵素を分泌している。しかし近来の研究によると、破骨細胞と同時に骨細胞も骨の再吸収を行うと言われており、血管の内皮細胞が骨の破壊能力を有することは知られている。

 破骨細胞は数十個から数百個を超す程の核を持つ大きな細胞である。細胞体の長径はときに50μmを超えるが、しばしば棘のような突起を持つ不規則な形の細胞で、骨の表面に付着してゆっくりしたアメーバ運動を行う。この細胞はしばしば自分が壊したと思われる骨質の窪みの中に収まっている。これをハウシップ窩(の窪み)と呼ぶ。

 破骨細胞は発達した細胞突起からなる刷子縁を持つ。これによって骨質との接触面積は大変広くなっている。この刷子縁を作っているmicrovilli(微絨毛)の間には、骨の無機成分の一つであるハイドロキシアパタイト(水酸化リン石灰)の結晶が見られ、これらは食べ込みによって水解小体に取り込まれ、そこで酵素によって分解される。活動時の破骨細胞は、約100個の骨芽細胞を合成したものを、たった一個で破壊することができる。破骨細胞は上皮小体ホルモン(パラソルモン、PTH、Parathormone)の影響を直接受けて骨粗鬆症はこのホルモンの過剰分泌による広範囲にわたる骨の破壊である。

骨の成長

 骨は軟骨と違って実質そのものの増大による内部からの成長である間質性成長はしない。すなわち、雪だるまを転がして大きくするように、外面に骨質を加えていく方法が骨の唯一の成長の仕方で、このことは骨端軟骨における成長でも骨膜による成長の場合でも同じであり、このような成長様式を付加成長という。John Hunterは骨の成長をアカネによる生体染色によって研究した。動物にアカネの根を食べさせると骨が赤く染まるという現象を利用したのである。ブタを使った多くの実験によって骨質は外側から追加されて、内側の髄腔側から吸収されていく結論を得たのである。その後、岡田による鉛を用いた生体染色法は画期的な進歩をもたらした。鉛はアカネの色素と同様に、石灰化しつつある成長中の組織に沈着する性質がある。酢酸鉛を動物に注射した後に、その動物の骨組織の顕微鏡標本を作れば、注射した時刻に石灰化を起こしていた部分が明瞭に示されている。この方法によれば何月何日の何時頃に、どのオステオン層板が形成されたかということまでわかる。近年は今まで抗生物質として使用されてきたテトラサイクリンが同様の目的に使用されて、テトラサイクリンは鉛のように毒性がないことから患者に投与して骨の形成や、カルシウム代謝の異常を調べるのに用いることができる。生検で得られた患者、あるいは患畜の骨の小片を研磨標本としてこれに紫外線をかければ、投与時間時に石灰化しつつあった骨層、すなわちテトラサイクリンの沈着部位が蛍光を発するのでよくわかる。

長骨の成長

 長骨の長さの成長は骨端軟骨における軟骨細胞および軟骨基質(間質)の新生、変性、吸収、骨組織による置換という一連の現象によって起こる。この骨端軟骨は動物が思春期となって成長ホルモンである下垂体前葉ホルモンの分泌が低下すると、骨組織により完全に置き換えられてしまう。骨端軟骨による閉鎖は人においては女性は男性よりも2年ほど早く起こり、一度閉鎖した成長体は二度と回復することはない。骨の太さの成長は骨膜によって行われている。すなわち骨膜、形成層、あるいは骨芽細胞が外面から骨質を付加していくが、一方、骨の内面である髄腔側では破骨細胞により髄腔が拡大され、緻密質があまり厚くならないように形の調整が行われる。このような働きは成長中における骨の多くの場所で行われる。骨の形、良い成長は骨芽細胞の協調作用による絶えざる調節によって完成されるわけである。

短骨や不定形骨の成長

 手根や足根などの短骨には骨端軟骨のような成長体は存在しない。骨膜によって骨の外面から緻密質が加えられ、海綿質側からそれが吸収されると言う過程によって骨が成長するが、外側にある緻密質が非常に薄いのが特徴である。しかし、成長軟骨体の存在するものもあって、例えば椎骨では椎体の前後両端部に骨端軟骨があり、これによって成長している。

頭蓋骨の成長

頭頂骨など湾曲部の扁平骨の成長

 この場合も、骨の成長は同様に付加的に行われるが、成長するにつれて骨が湾曲する曲率が変わっていかなければならない点が他の骨格と異なる特殊な状態といえる。これらの変化は骨質が外面から作られ、内面から吸収されると言う単純な方法でも達成できるが、事実それが実際に起こっている骨形成の主体であるといえる。また縫合の所で骨が伸びるかどうかは定説がない。

筋学

 筋学は筋および補助器官について説明する系統解剖学の一部門である。筋系はいろいろの形の収縮単位からなるが、それら随意あるいは不随意によって多くの神経刺激によって活動を起こす。また栄養は血液の運搬によって行われ、さらに循環や呼吸、消化、分泌、排泄および運動のための原動力を生み出す。筋細胞(線維)は特殊の分化の結果、高度の収縮性を獲得したものであって、筋細胞は細長く伸びて筋線維を形成しているが、筋線維が結合組織によって集められたものであって、その機能によって随意筋と不随意筋とに区別される。また筋線維はそれらの構造によって平滑筋、伸筋、横紋筋に分類されるが、筋学においては専ら横紋筋について取り扱う。横紋筋はそれらの付着する部位によって骨格筋、関節筋、皮筋(皮下筋、動皮筋)に分けられる。筋の運動は筋線維の収縮作用によるもので、収縮したとき移動する方を付着(停止動点)と呼び、固定している方を起始(保点)という。

筋組織

 発生学的に外胚葉から形成される一部の平滑筋を除いて、中胚葉から分化した間葉を基礎として発生している。そして筋肉は脊椎動物だけに存在するのではなくて、無脊椎動物の昆虫、甲殻類、ミミズなどでは体の表面までも体節の境が良くわかる。宗族発生学的には体節構造は著名であって脊椎の両側に40個余りが対を成して表れる。その後、この部位から筋肉と皮膚の結合組織が発生する。筋組織は筋細胞(線維)とそれらの間(基)質からなるが、筋細胞は細長く伸びた、いわゆる筋線維で、それらの長軸に対して収縮性を有するものである。

 筋線維は全て同一方向に収束して組織を作り、収縮作用を行う。これらの作用を筋運動と呼び、全ての神経の支配下に行われる。

 筋細胞の主な収縮作用は筋細胞の中に含まれている筋原細胞と呼ぶ細線維の収縮によるものである。すなわち動物界を通じて、筋細胞の収縮と弛緩は化学的にはアクチンとミオシンという2種類の蛋白質分子の結合と分離によって起こり、形態的には電子顕微鏡で見られる。ミオフィラメントという線維構造の存在を特徴とする。筋細胞はそれらの収縮効果を高めるための方法として細い線維状を呈するので、筋線維と呼ばれる。線維という名称ではあるが、結合組織に属する膠原線維、弾性線維などの線維とはその性質が根本的に違うことを忘れてはならない。そして収縮を行うのは筋線維そのものであるが、それらの筋細胞に酸素とエネルギーを供給し、調整を行うには血管と神経の分布が必要である。また収縮したときの力を伝達するためには一定の結合組織要素が必要である。従って、筋組織は筋線維だけの純粋な集合ではない。また筋細胞内に分布する筋原線維には横紋のあるもの、ないもの、不随意筋である心筋の3種類がある。

 横紋のない筋原線維が集合してできた筋線維を平滑筋線維と呼ぶ。横紋を持った筋線維が集まった筋線維を横紋筋線維と呼ぶが、筋線維の収縮性は神経の支配下に行われるが、神経の種類によって意識的に運動する筋と、無意識下に運動を行っている筋がある。前者を随意筋、後者を不随意筋と呼ぶ。平滑筋と心筋は長時間にわたる運動や緊張に適するのに対して、骨格筋は強力で速い収縮をするが、疲れやすいと言われる。

筋形質

 筋原線維の収束によるコーンハイム野における筋原線維の空隙は筋形質と呼ぶ細胞体にあたる液体用物質で満たされる。また筋形質にはミオグロビンも含まれる。ミオグロビンはヘモグロビンに類似し、酸素との結合力の強い蛋白質で、安静時における筋線維では酸素と結合してこれを保持する筋線維が収縮して酸素の必要性が高まるとミオグロビンから離された酸素が使用される。また筋形質の中に含まれるミトコンドリア、ゴルジ装置、グリコーゲンなどは形態学的にも重要なものである。特にグリコーゲンは平滑筋線維には少ないが、横紋筋線維の中には多量に含まれていて、エネルギー代謝のための筋の収縮という生理的機能の上に重要な関係があるものとされている。

骨格筋

 骨格筋は白色筋と赤色筋とに分けることができる。赤色筋線維は一般に直径が小さく暗調で筋原線維が少なく筋形質が豊富で、多量のミオグロビンとミトコンドリアを含み、多くの毛細血管が分布するのに対して、白色筋線維は直径が大きく筋原線維が多く明調で、筋形質とミトコンドリアは比較的少なく、ミオグロビンの量も毛細血管の分布も比較的少ない。そして筋形質小胞体の構造も比較的単純である。組織化学的にもいろいろの酵素活性や、脂質の量が違うことで区別できる。例えば、赤色筋線維はコハク酸脱水酵素の活性が高い。このように赤色筋線維と白色筋線維はそれぞれ違う特徴を有し、代謝機能の上でも違いがある。そして一般に赤色筋線維は酸化系酵素による嫌気性代謝が活発である。そして体型を保つのに必要な筋に多く、持続的収縮に適しているのに対して、白色筋線維は敏速な運動に適するが、解糖系の酵素による嫌気性解糖に多くのエネルギーを使うので、疲れやすく単発で速い収縮に適すると言われている。

 家畜および人の筋肉は一般に白色筋線維と赤色筋線維およびその中間形である中間線維からなる混合筋で3種類の筋線維がいろいろの比率で混在する。筋肉の示す赤色調は赤色筋線維と中間線維の数が多いことによることと考えられる。例えば、ニワトリの大腿部の筋は赤色筋である。胸筋は白色筋に属する。

 筋線維は細胞膜(筋鞘)に囲まれ、その外側に基底板と同じ構造の外板、および微細な膠原線維(コラーゲン)がある。普通の光学顕微鏡で観察するとこの部位は銀好性線維の網工で包まれている。両生類の筋線維構成を腓腹筋を用いた研究によると赤色筋線維はヒキガエルが45.6%、トノサマガエルが36.4%であり、白色筋線維はヒキガエルが30.4%、トノサマガエルが42.8%である。中間線維はヒキガエルが24%、トノサマガエルが24%である。その結果、ヒキガエルは赤色筋型、トノサマガエルは白色筋型といえる。

筋線維の化学的成分

 人体と家畜体には大小約400種(200対)の骨格筋があるが、それらは体重の50%を占めている。筋の主要成分は、水75%、蛋白質20%である。その他、少量のヌクレインキサンチン、ハイポキサンチン、レシチン、コレステリン、グリコーゲン、脂肪、K、Na、Mg、Ca、P、Feなどから構成される。

死後硬直

 筋は動物の死後、蛋白質の分解によって線維層を生じる。そしてだんだん筋肉が収縮すると共に最後は持続性収縮を来して不透明となり、硬くなるが、この現象を死後硬直と呼ぶ。それらの原因はいろいろあるが、死後に蓄積する乳酸などによる酸の増加により筋質の一部が凝固するためと考えられる。死後硬直を起こした筋は、その後再び柔らかくなるが、これを死後硬直の溶解という。これらの現象は腐敗ではなく、一種の酵素作用による化学的変化であると考えられる。一般に狗では30分、ネコでは15分、新生児では遅い。

骨格筋の化学的収縮

 骨格筋の収縮は運動神経(下降性神経)刺激伝導によって起こるが、筋線維と神経の連絡は運動神経の終末が数本に分枝し、それらの先端に運動終板を形成し、各筋線維に移っている。その場合、グリコーゲンは筋収縮のための源として重要な意義を有している。すなわち、筋肉が運動を始めると、グリコーゲンはブドウ糖(グルコース)と乳酸とに分解される。そして休んでいるときの筋肉は、中性か弱アルカリ性であるが、筋肉が運動を起こすと酸性に傾くのは乳酸の生成によるものと思われる。そしてこの乳酸が水素イオンのために複屈折質横盤部の荷電量が増加し、この部位の表面張力が増大する。その結果として、急激なる収縮現象が起こる。従って、筋の収縮は横盤部の収縮により起こるものと思われる。そして乳酸は酸素の供給があれば再びグリコーゲンに合成され、その結果、筋の水素イオン数は減少し、複屈折横盤部の荷電量も減少する。酸素は筋収縮のための分解作用には必要ではないが、それらの回復のためには絶対必要なものとされる。

ミオフィラメントと筋の収縮

 筋原線維がさらに細かいフィラメントの集合であることはドイツの組織学者Kolikerによって唱えられていたが、電子顕微鏡によってそれが実証された。

 フィラメントはアクチンとミオシンという2種類の蛋白質からなる。このアクチンとミオシンの結合がどういう形で起こるかについて、A. F. HuxleyとH. E. Huxleyがフィラメントの滑り込み説(1953)を提唱し、今日広く受け入れられるようになった。この学説によると、アクチン分子の連鎖による細いフィラメントはミオシン分子の束による太いフィラメントの間に滑り込むというものである。すなわち、H. E. Huxleyによればミオシンには棘状の手が付いていて、これが舟の櫂のように動くと、細いフィラメントがずれ動いて筋肉の収縮が起きるという。このミオシンの手とアクチンの間にどのような化学反応が進行して滑り込み運動を引き起こすかに付いては、現在盛んに研究が続けられている。

内臓学

胸郭=胸壁の骨格的基礎。内面に膜がある。胸膜(肋膜)。

胸椎

肋骨

単層円柱上皮:イヌの小腸、大腸など。人の胃。

重層扁平上皮:食道、反芻動物の胃。

漿膜と腹膜

 体腔の表面、および体腔に面する臓器の表面は全て腹膜、胸膜(肋膜)、心膜(漿膜性心膜)などと称する膜で被われている。この3つを一括して漿膜という。腹膜は腹腔および骨盤腔表面を被い、反転してさらに腹腔と骨盤腔にある諸臓器の表面を包んでいる。その中で体壁の内面を被って腹膜(腹膜腔)を形成する膜を壁側腹膜と呼び、壁側腹膜が体軸(脊柱)あるいは骨盤腔の側壁で合一し、二重の腹膜ヒダとなりいろいろの内蔵を包む腹膜を腹側腹膜という。例えば腸のように臓器が腹壁から離れて存在する場合に、腹膜は腹壁から離れて腸の表面に達し、腸を包んで腹壁と連絡している。そのために体軸と腸との間には2枚の腹膜が合わさって腹膜ヒダを形成するが、これらのヒダを腸間膜と呼ぶ。2枚の腸間膜内には体軸のところで進入した血管、神経、リンパ管が含まれ、それらは腸に存在する。すなわち壁側腹膜と内臓を包む臓側腹膜との間隙が腹腔(腹膜腔)で、その内部と腹腔の表面には腹膜から分泌された少量の漿液が含まれ、摩擦が起こることを防いでいる。

腹膜ヒダの種類

1)腸間膜

 小腸と大腸を吊し保定するが、部位によって前腸間膜(十二指腸間膜、空腸間膜、回盲腸間膜、回腸間膜など)および後腸間膜(結腸間膜、直腸間膜)と呼ぶ。

2)大網

 胃の大弯から起こり、2枚の漿膜が合わさって、網嚢を形成する。犬猫においては空腸、回腸を包み、これを保定している。また胃脾間膜、脾腎間膜(左腎)、横隔脾間膜、胃横隔間膜を形成するが、脾臓および骨盤腔近くまで広がり、結腸にも達する。大網の漿膜には膠原線維網血管やリンパ管を伴って発達し、さらに多量の弾性線維も混在する。その血管には多くのマクロファージ、リンパ球、形質細胞、肥満細胞などが見られる。大網の各部にはマクロファージ、リンパ球、単球などが血管壁に集まり白色塊を作るが、これらは乳斑(Milky Spots)と呼ばれている。栄養の良い動物においては大網に脂肪の沈着が多い。大網が細菌や異物によって刺激を受けると乳斑の細胞であるマクロファージがこれを食べ込み(食作用)、細胞が増加し、乳斑は大きくなる。また大網には家畜によって脂肪組織が沈着し、板状、あるいはレース様を呈する。動物の腹腔内に墨汁を注射すると、墨汁の粒子は乳斑の細胞であるマクロファージに捕らえられ、点々と黒く見られる。人および家畜の肥満によって腹が出るときは大網の組織が増加している。特に大網にある細網内皮系の細胞(網内系、RES)が脂肪を食べ込み、これらを脂肪細胞化すると言われている。

細網内皮系(RES, Reticuloendotheriocytus stellatus)

 ドイツの病理学者、Aschoffは間葉に由来して、大型で、異物の食べ込み能力(食作用)を有する細胞群が、体の特定の部位に分布し、生体を外敵からの防衛にあたっていることを提唱し、これらを細網内皮系と命名した。この細胞は大食細胞(組織球、マクロファージ)と多核白血球(小食細胞)など食べ込み能力を持つ細網細胞と、若干の内皮細胞を主体としている。食べ込み能力とは変性したり、破壊された細胞片や異物、病原菌などを取り込んで処理することである。また細網内皮系の細胞が抗体の産生に関係していることは事実であるが、それらの機構については明確ではない。

3)小網

 胃の小弯および十二指腸の基部と肝臓を結ぶ肝胃間膜と肝十二指腸間膜でできたものを小弯という。

4)間膜

 腹膜ヒダはところどころで肝腸間膜を形成し、腹腔内の諸臓器を互いに連結し、また体壁と結合している。これを間膜と呼ぶ。

5)骨盤腔の腹膜ヒダ

 尿生殖ヒダが雄ではダグラスヒダ、雌では子宮(広)間膜と呼んで、生殖器の大部分を保定している。また膀胱は外側膀胱索、正中膀胱索、恥骨膀胱索など3対の腹膜ヒダと1対の膀胱円索(胎児期の臍動脈の遺残)で連結されている。

腹膜の構造

 腹腔内面を被う中皮は極めて扁平で単層の扁平上皮からなる。普通の染色では細胞の境がはっきりしないが、硝酸銀で染色すると多角形の細胞境界が明瞭となる。中皮細胞は組織培養において、あるいは炎症の影響などにより自由細胞(組織球、マクロファージ、リンパ性遊走細胞、形質細胞、肥満細胞、酸好性白血球など)などに転化することができると言われる。中皮の内層は浅い漿膜下組織層と深い緻密質など固有層からなる。漿膜下組織は内蔵の表面を被う場合も腸間膜子宮間膜などの間膜を形成する場合も弾性線維の分布が多く、進展性に富む。そして線維芽細胞の他にリンパ球、単球、マクロファージ、その他の自由細胞も多い。またところどころに太い血管、リンパ管、神経、脂肪組織などが見られる。内蔵に分布する血管、リンパ管、神経などは漿膜下組織内を走るから、漿膜腔(腹腔および胸腔など)内を血管、神経などが走ることは絶対ない。間膜においても血管、リンパ管、神経などは2層の中皮に挟まれて、結合組織である漿膜下組織内を走る。漿膜下組織は部位によって異なる。すなわち壁側腹膜である横隔膜の後面は最も厚い。臓側腹膜においては中空性器官のもののほうが実質性臓器(器官)のものより腹膜が厚い。

縦隔

心臓を境に、縦隔前部、縦隔中部、縦隔後部<縦隔の背側部・腹側部(右側部・左側部)>

縦隔陥凹=右肺の副葉を収容する陥凹(これの左側の遊離縁=大静脈ヒダ)

肝臓の機能

 肝臓は体中最大の腺で、その機能は外分泌(胆汁を分泌)と内分泌(毛細血管へ)の両方である。外分泌である胆汁は胆嚢の中に貯蔵されており、胆管により十二指腸に注がれる。そして内分泌物質は血流中に放出されるホルモンで、脂肪と糖および各種の含窒素産物の中間代謝を行っている。その他に肝臓は生物体における物質代謝の中枢と考えられ、その営む機能も極めて多方面にわたる。しかもそれらの相互の関係が複雑多岐であるにもかかわらず、急激な循環障害のために致命的な変化を来すことも少ない。人体(動物体)において肝臓は動脈硬化の起こり方もその程度が最も軽い臓器の一つである。従って、梗塞の最も発生しにくい器官であり、突然血管破裂を起こすことも少ない。そして機能的にも予備力と再生力が非常に大きいことで知られている。

 肝臓の完全摘出は数時間にして死に至らしめるが、再生能力は盛んである。ラットではこの2/3を肝切除を行っても、3週間以内に元に戻ると言われる。肝臓は生体においては、わずかであるが動く器官である。その位置は肝臓そのものの活動や、肝葉の発育によっても移動する。特に反芻動物においては、その後ろにある第三胃による圧迫による、あるいはそれのさらに後ろに接触する第一胃内容物の多少と、それらの体軸(脊柱)よりも3/5右側にあるが、牛の肝臓は大部分が左側にある。第一胃による圧迫により、ほとんどが背中軸より右側に存在している。

腎単位(ネフロン、Nephron)

 腎単位は腎臓における構造上、および機能上の最小単位であって、腎小体と尿細管からなり、腺の終末部に相当する。腎小体は動脈血(腎動脈)から尿成分を分離する濾過装置であるが、尿細管は尿成分の調整(再吸収と分泌、排泄)を行い、集合管は尿を腎盤あるいは腎杯に導く管である。腎単位は片側の腎臓に80〜200万個(人、ネコ:30万個)を数える。

腎小体(マルピギー小体、Malpighi)

 約300年前に不完全な顕微鏡下でこの小体を発見したマルピギーの名を取ってマルピギー小体と呼んだ。腎小体は腎皮質の各所に存在し、糸球体と、それを包む糸球体嚢からなる。糸球体嚢は直径約100〜200μmの楕円形の小さい袋であって、糸球体嚢の一端の陥凹部は血管極と呼んで、この部位から細動脈が進入する。糸球体嚢に入る細動脈は腎動脈の末梢終末部位で輸入管と呼んで糸球体嚢を包む袋の中で細分枝を出して、毛細血管である糸球体を作る。糸球体を作る毛細血管は約10本の曲索からなるが、それらの毛細血管は再び集合して細動脈となり、糸球体嚢を出る。糸球体嚢を出る細動脈は輸出管と呼ばれる。一般の血液循環においては、末梢血管が分枝して毛細血管となり、さらにそれらが集合して静脈に移行するものであるが、糸球体においては一般と異なって細動脈が毛細血管となり、糸球体嚢を形成した後に静脈とならず細動脈となって糸球体嚢を出ることである。すなわち糸球体は細動脈下に介在する毛細静脈性毛細血管の集合である。腎小体嚢は外葉と内葉の2層からなる袋で、内葉は糸球体を直接包んで合胞体となり、核が突出する。そして内葉と外葉とは、糸球体嚢の一端の輸入管および輸出管の出入部位の周りで双方に移行する。また糸球体嚢の外葉は血管極の反対にある尿細管壁に移行しているので、糸球体嚢の内葉と外葉との間隙は尿細管の内腔と交通している。また尿細管の起始部を尿管極という。

 糸球体嚢の内・外葉の上皮はいずれも単層扁平上皮から構成されるが、内葉の上皮細胞である扁平上皮細胞は糸球体の毛細血管に接触している。これらの糸球体の内葉を作る上皮細胞と、毛細血管を被っている内皮細胞との関係を電子顕微鏡によって観察すると、毛細血管の内皮細胞は、その核の存在している位置では肥厚しているが、その他の部位では非常に薄く、多数の円形の小孔が細胞体を貫通している。すなわち遊走毛細血管を形成している。そしてこれらの小孔の数が一般の毛細血管のものよりも多い。

 毛細血管の内皮細胞の外側には、ほぼ一定の厚さからなり基底膜の連続層があるが、他の部位に存在する毛細血管の基底膜よりも少し厚い。基底膜の外側には、糸球体嚢内葉の上皮細胞が存在するが、これらの細胞は細胞体の核のある部分で、糸球体嚢の内腔に向かって突出している。またそれらの領域から数本の細長い突起が毛細血管の基底膜に沿って伸びているが、この突起から多数の小突起が、櫛状に突出している。

 そしてさらに他の領域から出た小突起と組合わさって基底膜に接触している。これらの小突起をタコ足突起(終足)と呼ぶ。すなわち糸球体を作る動脈性毛細血管の中を流れる血液中の液体成分は内皮細胞の小孔と基底膜、および内葉細胞のタコ足突起などの間隙を通って濾過され、糸球体嚢の内腔に流出するものである。

 このように糸球体の毛細血管を流れる血液はその液体成分の一部が濾過されるために輸入管は輸出管よりも形態的にもはるかに太くて優勢である。また輸入管も輸出管もともにその血管壁には平滑筋を備えている。輸入管はそこに存在する平滑筋によって糸球体に送る血液量を調節するが、輸出管もそこに存在する平滑筋を収縮させることによって糸球体内部の血圧を調節している。糸球体嚢の中に濾過される尿成分は仮尿(一次尿)と呼ばれるが、左右腎の糸球体から出る仮尿は約170〜180l(人の一日)そして仮尿の中にはまだ動物体に必要な成分が多量に含まれているが、これらの成分は尿細管で再吸収され、一部のものは集合管において吸収され、膀胱から尿道を経て排出される。尿の量は人で一日平均1500mlである。

血液中の液体成分の濾過機構

 すなわち血液尿関門(糸球体濾過膜)においては基底膜が重要な役割を果たすものと思われる。すなわち液体成分の基底膜の通過は物理的な濾過現象によって行われると思われるが、この場合に血球はもちろんの事、蛋白質のような高分子の物質を除く血液の液体成分が毛細血管から糸球体嚢の内腔に濾過される。基底膜は内皮細胞の外側にある厚い完全な連続層で、中央部の緻密層を挟んで内および外の疎性層からなり、糸球体尿(原尿)の濾過に最も重要な役割を果たすものと思われる。また研究者の計算によれば、左右腎臓は1.5m2に及ぶという。そしてその濾過面を通過する原尿の量は24時間に170〜200 l(人)といわれる。しかし人における一日の尿量は2 lぐらいであるから原尿の99%までが尿細管で再吸収されることになる。

脈管学、脈管系、Angiology

 血液は心臓から動脈に送り込まれ、静脈を経て心臓に戻る。これがウィリアム・ハーベイにより唱えられた血液循環説であるが、その後、末梢動静脈管を連絡する毛細血管がマルピギー(1661)によって発見されることにより血管系が閉鎖した循環道であることが解明されたのである。しかしながら、閉鎖性血管系が脊椎動物に特有の体制であっても多くの無脊椎動物においては解放性血管系を形成し、それらの毛細血管の末梢が細胞組織に解放している。

血液循環

 人体および哺乳動物の各部を構成する器官、ならびに組織は絶えず新陳代謝を行い、消化管から吸収した栄養と肺から取った酸素を組織に運搬すると共に、組織の中に生産された炭酸ガスを肺に放出し、老廃物を動脈によって腎臓に運搬して、これらの目的を達成するために体の中にはいろいろの太さの管があって相互に分枝を出し、また結合して網眼を形成し、全身を経過する一つの管系統を構成している。これらの系統を脈管系、あるいは循環器と呼んでいる。そしてこの中を流れている液体の成分は、血液の場合は血管系と呼び、リンパ液の場合はリンパ系と呼んで、脈管系はこの2種類に大別される。血管系はそれらの中枢となる心臓と、そこから末梢に向かって血管を流す動脈と、それと反対に末梢から心臓に向けて血液を返す静脈がある。そして末梢において、動脈と静脈とを相互に連絡して網眼を形成する毛細血管などに区別されるが、機能的には大別して体循環または大循環と、肺循環または小循環の2つの系統を構成している。体循環は心臓と身体各部の間を流れる循環系であるが、肺循環は心臓と肺との間に成立した循環系である。

 また特殊な循環系としては門脈循環と心臓壁に分布する循環がある。門脈循環は腹部内臓の中で胃腸、膵臓、脾臓、十二指腸から集めた静脈血を直接、後大静脈に注ぐことがなく、一本の門脈という血管(静脈)を経て、肝門部から肝臓の中に入り、小葉間静脈を経て毛細血管(類洞、洞様毛細血管)となり、中心静脈を経て肝静脈から初めて後大静脈に流入するものである。

 次に心臓壁の循環は、左心室から出る大動脈幹から直接起こった左右冠状動脈が心筋壁に分布した後、毛細血管となり、そして大・中・小・最小の心臓動脈となり、いずれも毛細血管の血液を集める。そしてその血液の多くは右心房の冠状動脈洞を経て右心房に開口するが、一般的に最小心臓動脈だけは直接右心房に開口している。

血液循環を行う器官

心臓:脈管系の中心として血液循環の原動力であるポンプの作用を行う。そしてその律動的収縮って血液を全身に循環させる。

動脈:動脈は血液を心臓から末梢に向かって遠心的に送り出す管を言う。従って動脈には当然、心臓の鼓動に一致する摶動(脈摶)が認められる。ただし、肺動脈と臍動脈の中を流れる血液は炭酸ガスと老廃物を多く含んだ静脈血である。

静脈:静脈とは毛細血管、あるいは時として末梢動脈から集めた血液を心臓に向かって求心的に送り戻す管で、摶動を認めない。このように動脈と静脈の区別はその中を流れる血液の方向によって区別し、その中に含まれている血液の性質とは関係ない。例えば、前述のように肺動脈の中には静脈血が流れるが、肺静脈の中には酸素を含んだ動脈血が流れる。また胎児の時代に母体の胎盤と連結している臍動脈の中には静脈血が流れ、臍静脈の中には動脈血が流れる。

毛細血管:細動脈から細静脈に移行する間にある極めて細い網眼状の血管系で、それらの大きさは5〜10μmの大きさで、赤血球一個が体を細く伸ばして通り抜けられる大きさである。毛細血管壁には平滑筋が無く、一層の内皮(細胞)と、その外側を包む基底膜からなる。これらの内皮は甚だ薄いが、それが分布する毛細血管によっては、それらの内皮に小孔があり、また細胞間隙によって血管外にある細胞が組織を潤すことができる(それらは内分泌系、または腎臓系の毛細血管と肝臓の毛細血管、および脾洞などがある)。すなわち血液と組織との接触は毛細血管壁においてのみ行われるもので、動脈と静脈は単に血液の通路にすぎない。心臓から出た動脈は、初めは太くて血管壁も厚いが、心臓から遠ざかるに従って各器官に至るが、樹枝状に分布する。そして全身に分布しながら次第に細くなり、ついに毛細血管となる。毛細血管は網眼状に各組織内を流れた後、再び集まって細静脈となり、大静脈から心臓の右心房に帰る。一般に細動脈に近い前半の毛細血管は動脈性毛細血管と呼び、細静脈に近い後半の毛細血管は静脈性毛細血管という。

上皮組織と毛細血管との関係

 上皮組織と毛細血管壁であるが、両者が直接接触していることはない。それらの間には必ず接合組織が介在している。従って腺細胞が分泌物の素材を取るのはその周りにある結合組織の組織液からであり、内分泌腺が分泌物を放出するのも組織液においてである。また小腸の上皮細胞から吸収された物質が血管やリンパ管に入る場合も、それらの間に介在する疎性結合組織の組織液の中にでなければならない。

リンパ系

 リンパ系は毛細リンパ管、リンパ管、リンパ節からなり、静脈系の補助器官の一つとして役立っている。血液が動脈から静脈性毛細血管を流れる経過中に、血漿成分である液状物質と蛋白質が血管壁から組織間隙に漏出する。研究者によると一日に血中蛋白質の50%が血管から漏出すると言われる。これらの血管外に出た蛋白質と組織液の一部は細胞の栄養として使われ、すぐにも毛細血管に入るが、もしも異物があればそれも一緒にリンパ管に侵入する。そしてリンパは最終的にはリンパ管、リンパ節を経て頚静脈か前大静脈に流入する。組織液を入れる場所は結合組織腔とも言われる。

 次にリンパ管と静脈との結合がいくつかの臓器の中に認められる。すなわち頚基部に主要なる連絡道があるほか、小腸の絨毛内にある中心乳び腔と後大静脈間を通る交通路の連絡がある。リンパ管は脳とか脊髄、脾臓、骨髄、骨格筋の内部には存在しない。粘膜と皮膚にはリンパ管の分布が多い。肝臓に分布するリンパ管は蓄積されたか、あるいは新しく合成された蛋白質を血中に運搬する一つのルートになっており、蛋白質を豊富に含んだリンパを胸管(リンパ本幹)を経て静脈(鎖骨下静脈)に運搬する。静脈に対してリンパ管の弁は、その数は静脈のものより多く、普通は2尖であるが、1尖のものもある。リンパ管における弁間の距離は1〜2mmであるが、最も大きいのは3mmぐらいである。また太いリンパ管の外膜には毛細血管の分布が多く、脈管の脈管の分布もあり、リンパ管の中膜の中に侵入している。

リンパ小孔(リンパ濾胞)

 リンパ節には輸入リンパ管と輸出リンパ管があるが、リンパ器官によっては輸出リンパ管だけを有するものがある。これらはリンパ小孔(リンパ濾胞)と呼んで、例えば咽頭部の扁桃の小胞や消化器系の粘膜にある孤立リンパ小節と集合リンパ小節などである。それらのリンパ管はリンパ小孔を通過することが無く、これから起こるときにある。

脈管の吻合

 動脈および静脈は一般に樹枝状の分枝を繰り返し走るが、各分枝間にはそれらを結ぶ連絡枝の存在することがわかる。このような連絡枝による結合を吻合という。吻合には直接と間接がある。普通は一般に各動脈間または各静脈間に存在するが、特定の部位において動脈と静脈が直接結合する動静脈吻合(短絡吻合とも言う)が認められる。吻合の種類には次のものがある。

1、単吻合

1)側枝あるいは交通枝と呼ばれる分枝によって2つの血管が結合する場合。

2)2本の血管が互いに角を作りながら単枝を形成する。

2、複吻合=多数の血管によって形成されるもので、次のような種類がある。

1)血管網

 平面的に大きい網眼を形成したもので、動脈の場合は動脈網、その他静脈網、毛細血管網と呼ぶ。

2)血管叢とリンパ管叢

 立体的な網眼で、特に静脈とリンパ管に多く、静脈叢およびリンパ管叢と呼ぶ。

3、怪網 Rete mirabile

 これは血管が樹枝状に分かれた後、網眼を作り、再び一本の動脈に集合する形式で、一本の動脈の経過中に介在する細動脈、あるいは毛細血管の一種を言う。これらは腎臓の糸球体、それから反芻動物の脳底動脈(下垂体周囲)などに認められる。

4、終動脈 Arteria terminalis

 樹枝状に分かれた末梢動脈が相互に分枝による吻合を形成することなく、組織間にそのまま割って、直接毛細血管に移行するものである。例えば肺動脈、大脳皮質の動脈など吻合がないから、側副循環は存在しない。従って血栓などによって梗塞など起こした場合に、これらの器官は危険が多い。

5、海綿体 Corpus spongiosa(cavanosuma)

 内皮により形成された血管周囲が結合組織性の膜で包まれたもので、一種の静脈叢である。陰茎、陰核に見られる。

リンパ管の機能

 毛細血管壁から周囲組織に滲み出た組織液は、一部は再び血管に入るが、残りはリンパとして毛細血管からリンパ管を経て静脈に帰る。リンパ管は内皮細胞の接合が緩く、そのうえ細胞間が大きく離れ、基底膜が不完全なので物質の交換が容易である。リンパ管の吸収作用は血管が吸収して残したものを始末する下水道の作用だけではなく、他に組織液を吸収して血液の量や、組成を一定に保ち、蛋白質やコロイドばかりでなくリンパ組織(リンパ節)からは生産されたリンパ球を、出血巣からは赤血球を取り込んで運搬する。しかしその反面、癌組織からは癌細胞を運んで癌の転移を引き起こしたりする。リンパ管の吸収作用で重要なものに、小腸の絨毛(腸絨毛)の中心乳び腔から脂肪を吸収する。リンパ管が心臓と直結していないために、重力は組織圧に抵抗してリンパを運ぶことが困難である(今までは動脈の摶動や筋の運動の圧迫で一方的に運搬されると言われていた)。近年はリンパ管の摶動は、多くの動物の器官で観察されるようになり、哺乳動物のリンパ管は全て摶動性があるという研究者もいる。リンパ管の摶動はラットやウサギの腸間膜で良く観察できるが、一分間数回のゆっくりとした摶動である。リンパ管の終末は、静脈に注ぐのであるが、途中に必ずリンパ節が介在している。ここでリンパが濾過されて、リンパ球を受け取り、生体の防御にとって重要な反応が起きるわけである。

心筋の構造

 心房の心筋層は薄く、特に人において光をかざすと篭の目のように透けて見える部分もある。これに対して心室の心筋層は厚く、特に左心室の厚さは右心室に比べてはるかに勝る。心室の心筋層は走り方の違う3層の筋線維に区別される。そして各層の筋線維は螺旋状に心室を取り囲んで相互に移行していることがわかる。心筋の組織構造は心筋細胞が竹の節状につながって心筋線維を形成し、それらが網状に連結して心房および心室に筋層を作る。電子顕微鏡によって竹の節である光輝線(介在板)が細胞の境界であることが知られるまでは、心房と心室との筋層は一つの大きい合胞体であるとする考えが強かった。いずれにしても収縮による興奮が竹の節を飛び越えて心筋の全系に伝達されるわけであるが、心筋全体を一連の網工であるとする考え方は依然として重要である。各心筋線維の間には疎性結合組織が分布し、その中には多数の血管と細い神経線維束が走っている。また一本一本の心筋線維の間には非常に多くの毛細血管網が発達し、心筋が非常に酸素に貪欲な組織であることを知ることができる。心筋線維における筋形質は骨格筋線維に比べて多量で特に各周囲部に多い。骨格筋と同様にミトコンドリア、ゴルジ装置、グリコーゲン、脂質、カルシウム塩などを含有するが、特にミトコンドリアは普通の細胞に比べて大きい。またミトコンドリアとグリコーゲン、脂質が骨格筋より多量である。年齢とともに現れるリポフスチン顆粒は核の周りに多く分布するが、これはリソソームの集合したもので黄褐色の色素顆粒として観察される。

毛細血管

 毛細血管は普通は動脈と静脈の間をつなぐ平滑筋を欠く血管のことを言う。一般に毛細血管網を形成するが、時にはワナ(係蹄)あるいは糸球体を形成している。その太さは5〜10μm、平均7μm前後である。赤血球が体を細く伸ばしてすり抜けて通れる太さである。そして一般の動静脈と違って、これらが枝分かれすることによってその口径が小さくなることもある。肺、肝臓、骨髄の毛細血管は内腔が広く12〜15μm、肝臓の類洞は30〜50μmに達するが、筋肉、目の網膜などの毛細血管は直径が小さく、6〜8μmしかない。そして中には口径が赤血球の直径よりも小さくて、細胞や組織が活動していないものや、閉鎖しているものもある。毛細血管の形態は器官の働きと、密接な関係があって次の6型に分類される。

1網眼型、2重複網眼型、3隆起型、4篭型、5叢状型、6洞様型

 毛細血管は普通は複雑な網工を形成するが、細動脈末端の毛細血管前括約筋が収縮することによって網状の部分の裏部位によって閉じられたり開かれたりするものである。毛細血管網全体を常に血液が流れているとは限らない。

 毛細血管壁は内皮細胞と、その外側の基底膜からなる。単層に並ぶ扁平上皮細胞が内皮管を形成し、その2層を通して血液と組織細胞の間に酸素と炭酸ガスの交換、栄養と老廃物の移動など、物質交換が行われる。従って物質代謝の盛んな組織である脳の灰白質(大脳皮質)や、横紋筋などでは毛細血管の分布密度が優勢である。

内皮の構造による毛細血管

1、無窓毛細血管(連続性毛細血管)

 これは筋組織を始め、大抵の組織に分布する型で、筋型の毛細血管と呼ばれることがある。内皮細胞がその縁で接触し、小孔の細胞間隙に見られる。これら無窓内皮細胞の外側は完全に基底膜で取り巻かれる。神経型の毛細血管は、透過性が最も低く、筋型毛細血管の透過性はこれに次ぐ。

2、有窓毛細血管

 内皮細胞の一部が非常に薄くなって、ここに多数の丸い窓(小孔 Stoma 500Å)が開いているもので、この型の毛細血管は内分泌腺と腎臓に見られるもので、腎臓型あるいは内分泌型毛細血管と呼ばれる。この型はその他に物質の透過の盛んな部位である小腸の絨毛であるとか、胆嚢、脈絡叢、その他若干の外分泌腺などにも存在している。

3、細胞間に大きい間隙のある毛細血管(非連続性毛細血管)

 この型の毛細血管として代表的なものは肝臓の洞様毛細血管(類洞)に見られるもので、肝臓型毛細血管とも呼ぶ。大きい細胞内の間隙は、卵円形の直径約2μmをしばしば超えるもので、比較的小さいものが集団を成すものもある。また小さい第二の形の穴も合わせ持っている場合がある。内皮細胞間の接合は部分的に緩やかで、1μmを超える大きい細胞間隙を作っているものもある。これらの毛細血管では血流と周囲組織との物質の移動も容易であって、比較的大きい分子も通過可能と考えられている。

脾洞

 内皮細胞(杆状細胞)間に大きい間隙のある毛細血管で、脾臓と骨髄、血リンパ節(ウシのリンパ節)、リンパ節のリンパ流通路に確認されている。これは洞という用語を用いて毛細血管と区別している学者もある。脾臓では杆状細胞と呼ばれる柱状の細胞が平行に走り、それの外側に向かう突起が接着するので細胞間に卵円形あるいは紡錘状の隙間が開いている。これが血管壁の収縮や拡張をして大きくなったり小さくなったり、閉じたりする。従って脾洞は内皮細胞も基底膜も隙間だらけである。この隙間の部分を血漿や血小板はもちろん、赤血球も白血球も通り抜けることができる。隙間が狭くなると最初に赤血球がせき止められ、その他の血球もその変形能力によっては通過しにくくなる。脾洞壁の隙間は脾臓の充血程度によっておそらくは脾洞の前後あるいはその一端に括約装置があって、あるいは杆状細胞そのものに変形能力があって、能動的に隙間の大きさを調節することも可能であると考えられている。

Pinocytosis 飲作用

 電子顕微鏡で観察された像から細胞の飲み込み現象を見ると、小さい物質や液体が細胞の表面に接すると、その部位の細胞膜が陥入し、取り入れられた物質は小さい窪みの中に閉じこめられる。細胞内の窪みは細胞膜から離れて細胞質内で飲み込み小胞と呼ばれる小さい膨らみとなる。飲み込み部位の細胞膜はすぐに元通りに修復される。

Phagocytosis 食作用

 光学顕微鏡で見える程度の比較的大きな個体を細胞が取り込む場合に食作用という言葉が用いられる。例えば、白血球、星細胞、組織球、杆状細胞(脾洞)などは細菌、異物、老朽化した血球を細胞に取り込む。細菌、異物が細胞表面に触れると細胞は突起を出してこれを巻き込んで細胞内に取り入れる。取り込まれた物質は食べ込み小体と呼ばれ、リソソームによって食化分解される。

動脈壁

 動脈壁は内膜、中膜、外膜の3層からできている。その中で平滑筋と弾性線維(膠原線維)の集中している中膜が動脈を特徴づけるものである。そしてこの中膜の層が主として平滑筋でできているか、あるいは弾性線維でできているかによって動脈は筋型と弾性型の2型に分類される。

1、筋型動脈の構造

 解剖学的に命名されている動脈のほとんどはこれに属し、管腔の大きさの割にはその壁が厚い。内膜は内皮とこの外側を裏打ちする薄い結合組織により構成される。疎性結合組織(線維芽細胞)は太い動脈では若干見られるが、細いものでは見られない。内膜と中膜とは厚い弾性膜によって境されている。この膜は内弾性板(膜)と呼ばれ、一般に波形を呈する。内弾性板は有窓弾性膜で、円形あるいは卵円形の窓を有する。内弾性板は内・外の2板に分かれることがある。

 次に中膜は輪走する(実際には螺旋状に走る)平滑筋層である。発達する平滑筋層の間には少量の平滑筋層があり、弾性板と弾性筋層が発達している。後肢において前肢よりも発達する。中膜の最外層で、弾性線維が発達して外弾性板と呼ばれる層を形成することがある。電子顕微鏡で筋線維を見ると、それらは基底膜に包まれ、基底膜は弾性線維と所々で接着し、膠原線維は独特の骨組みを作る。中膜の筋線維の間には消化管の平滑筋にあるものに似た接合部(ギャップジャンクション)が認められている。筋収縮の行動がここを通って伝達されるものと言われている。中膜の内部には神経要素はない。神経は中膜の最外層まで達している。

 外膜は中膜の外側にある疎性結合組織で、時には中膜よりも厚い場合がある。これは単に動脈を入れている結合組織にすぎない。外膜の細胞は線維芽細胞が主であるが、その他にはしばしば形質細胞、リンパ球、肥満細胞などいろいろの細胞が集まっているところである。また外膜にある未分化の間葉細胞は終生存在し、上記諸細胞の母体をなすものと考えるものもある。

 腎動脈は代表的な筋型動脈であるが、弾性型動脈である腹大動脈から大体、直角に分岐している。それから総頸動脈、大腿動脈、椎骨動脈、上腕動脈など弾性動脈として起こるが、次第に筋型動脈に移行する。

2、弾性型の動脈の構造

 心臓に近く、激しい血圧の変動を緩和する必要のある大動脈と、その主幹分枝、それに肺動脈のような大きい血管では中膜が多量の弾性質(弾性板)からなり、平滑筋がその間に介在する。中膜にある平滑筋量は心臓と動脈との位置的関係に深い関連がある。弾性型動脈の血流は大変拍動的であり、血管壁は受動的に血圧の変動に耐え、平滑筋は弾性質の緊張度を調節している。弾性型動脈は加齢とともに弾性力が弱くなり、その結果、末梢血管抵抗が増大して動脈血圧が上がる。これに対して筋型動脈では中膜における平滑筋線維における収縮する度合いがそのまま血管の口径の変化を意味する。弾性型動脈の中膜を電子顕微鏡で見ると、弾性板が一層ずつ交互に並ぶ。中途大以上の動脈の血管壁には脈管の脈管と微細な神経の分布がある。

3、小さい動脈

 一般に筋型動脈に属し、内膜は内皮細胞と内弾性板から構成される。中膜は主として平滑筋線維からなるが、線維間には弾性線維が混在している。外膜は縦走する疎性結合組織である場合、弾性線維が見られるが、外弾性板は見られない。

脾臓の機能

血液の貯蔵

 イヌやネコでは線維性結合組織からなる線維膜(白膜)と脾柱に多量の平滑筋線維と弾性線維があるので一般に肉食動物においては自律神経や副腎髄質ホルモンの作用で大量の血液を脾臓内に蓄えたり、それを流血(門脈系)に放出したりすることができる。しかし、人などの脾臓は平滑筋が少なく、従って収縮能力も弱いので血液貯蔵庫としての意義は少ない。脾臓の働きは細網内皮系に関与する組織の働きに属する。

血球の生成

 リンパ球、形質細胞などの遊走細胞を産生するリンパ球は脾リンパ小節の胚中心形成されて、生体が抗原の侵入を受ける胚中心にあるリンパ球は、ピロニン好性大リンパ球や形質細胞に変化しつつ、一度に赤脾髄の方に移動するが、この系統の細胞が抗体を生産するものである。

血球の破壊

 マクロファージ(大食細胞)や杆状細胞、細網細胞による細胞の破壊、特に老化した赤血球や異物の破壊処分が行われる。すなわち、脾索内の血球の流れは極めて緩やかで、滞留するのはその間に血球や異物の破壊が行われる。老朽性血球は、ときにはそのまま丸ごとで、多くはマクロファージの細胞外で小片に分解された後、マクロファージに食べ込まれる。分解された赤血球は細胞内にあるいろいろな酵素の働きにより形態的にも化学的も分解されている。赤血球はマクロファージで処理され、ヘモグロビンに分解されると、その鉄分は骨髄に送られ、そこで新生する赤血球に与えられて再びヘモグロビンの生成に利用される。

 ヘモグロビンは赤血球自身が有するカタラーゼの働きにより、ビリルビン(胆赤素)となり、これが血流に乗って肝臓に達し、肝細胞に吸収されて胆汁とともに十二指腸に排出される。胆汁や糞便の黄色はビリルビンの色素によるものである。

 魚類や両生類など下等動物の脾臓は終生、最も重要な造血器官である。これらの動物では高等動物の骨髄の働きを脾臓が行っている。

視力のメカニズム

 網膜は目をカメラに例えるとフィルムに相当する部分である。光は角膜を通過し、水晶体で焦点を絞られ、網膜に映像を結ぶ。この刺激は視神経(大脳神経)から大脳へと伝えられる。しかし、網膜はどの部分でも同じように見えているわけではない。ちょうど目の光軸上にある黄斑部の中心部の構造である中心窩は最もよく見える部分で、視力は1.0以上ある。ところが、この中心窩からほんの少し外れただけで視力が0.1以下に下がってしまう。このために病気で黄斑部に障害が起きると、中心視力が失われ、ものを視るのに大きな影響がある。

Presented by Department of Veterinary Anatomy, Nippon Veterinary and Animal Science University, Musashino,Tokyo,Japan.1998

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