村山秀樹の辛口名盤紹介

March 8, 2001 Last Up Dated


通称村山先生こと村山秀樹氏(ベーシスト、チャーリーパーカー研究家)がこのHPの掲示板に寄稿してくださった、名作、名盤とされるアルバムの紹介を氏、独特の辛口解説で綴るページとして連載することにしました。最近の話題作から古典の名盤までの紹介コラムをお楽しみください・


Vol.10. Verse MD up to #28

2001年3月7日投稿

いつも MD 5枚単位で感想を書いていますが、今回は素晴らしいアルバムから収録できたので、途中経過報告。

#25 まで編集した段階で一休みしようと思っていたのですが、うっかりレコード屋を覗いたら、Ella の George and Ira Gershwin Song Book (Verve)の中古 なんてのを見かけて、つい衝動買いしてしまった。これは、全53曲(最新の Polygram 編集では別テイク等が追加されているかも知れない)入っていて、その半分以上が Verse 付き、というもの。このアルバムだけでしか聴いたことのない曲も何曲かあり、編曲/指揮は Nelson Riddle のすばらしいアルバムである。この中から、以前オムニバスから収録済の数曲を除いて、20曲程度を収録。オムニバス盤を聴いていて思ったが、Ella の Song Book シリーズは全て入手したい。ライブ盤の派手さとは異なる素晴らしい世界が展開されている。ただ、このシリーズ、最近の Polygram 編集盤は追加曲が多く、以前のを買うと損した気持ちになるのがちとつらい。

その他、Carol Sloane のこれも Gershwin 集 (Sony) から、同じくオムニバスから収録済の1曲を除いて、数曲を録。Gershwin 集に駄作はなく(Sarah Vaughan も Chris Connor も素晴しかった)これもまた素晴らしい。曲の解釈(テンポ設定など)が他の歌手と異なる Carol Sloane の独自の世界。伴奏のトミ・フラも素敵。LP 時代に、これと同時に確か歌手10人のアルバムが Sony から発売されたが、どれも素晴らしいものだった記憶がある。他の人も CD でも出ていると思われ、今後さがしてみることにしよう。

それと、Eydie Gorme の MCA(Decca?) 時代の3枚(LPをそのままCD化したもの)も有名無名のスタンダード(スタンダードで無名というのも変な話だが)を、収録曲中の約 1/3 を Verse 付きで丁寧に歌っている。Things We Did Last Summer なんて Verse が付くと、なお更素晴らしい。Eydie Gorme なんて、The Gift (Recado) と「恋はボサノバ」(Blame It On The Bossa Nova) だけの人と思ったら大間違い。

また、Sammy Davis Jr. が Mundel Lowe(g) だけのバックで歌ったアルバム(Decca) からも数曲。このアルバムは、ローリンド・アルメイダだけのバックで歌った Reprise のアルバムと並んで素晴らしい(これ、今 LP が行方不明)。

その他、Salena Jones のイギリス時代の比較的見かけないアルバム2枚からも数曲。Verse 付きの Someday My Prince Will Come なんてのもあり、Chorus に入ると Bossa になるのも新鮮。コードは後半は Miles Davis コードではなく、原曲通り。

他に、淳ちゃんからいただいた、Irene Kral、Kevin Mahogany、Chaka Kahn (Verse を歌ってますぞ)なども各1曲収録。今回は初めて Verse を収録できた曲が結構多く、早くも愛聴 MD の仲間入りをしそう。ということで、#30 までは続きそうです。#30 まで行ったら、また配布予定。そう言えば、#25 までのものもまだ配布未完了あり、今度お会いした時に。


Vol.9. Verse MD up to #25

 
2001年2月12日投稿


Verse MD はその後も編集を続け、現在 #25 まで終わりました。これで延べ550曲程度になりました。
#21-#25 のハイライトは、びび の好意で #25 に Maxine Sullivan のVerse を含む素晴らしい歌を #25 のほとんどを占める 18曲も収録できたこと。今回初めての曲や比較的珍しい曲というばかりでなく、歌唱そのものが新旧共に素晴らしいことです(びび、感謝)。「月光価千金」なんて曲(この邦題を知っている人が今時どのくらいいるか?)がこんな素敵な Verse を持っていたなんて、しかもそれをこんなにチャーミングに歌われたら、もうかなわん、です。この人が’30年代のデビューだったなんて信じられないほどモダンです。
もう一人の、非常に心落ち着く大好きな歌手、Barbara Lea の Prestige のもう1枚からも収録。それから、Billie Holiday の後期 (Verve 時代)からも数曲収録(個人的には聴くのがつらいのも有りますが)。
また、録音時90才を越えていた Doc Cheatham (tp/vo) の Verse つきのほのぼのとしてしまう素晴らしい演奏(一曲、Verse のみ歌、なんて珍品 (Dinah) もあり)も収録できた。共演の Nicholas Payton も素晴らしい。これはアルバム全曲が素晴らしい。他にインストとしては、W.Marsalis の Startdust、Yago からのヒントで収録した Bud Powell の Tea For Two など。
それと、重箱の隅と言われればそれまでだが、美空ひばりの Stardust や、日本語による Love Letters(Verse も日本語、でもやっぱり日本語は非常にベタつく)、江利ちえみの Again (実はこの江利ちえみのアルバムは、他の Verse 無しの曲が素晴らしかったのだが、残念)など、改めて聴くと、ここ数年来のビジュアル系歌手ブームが何なのか、と考えさせるようなものも、邪道とは思いながら敢えて収録しました。なお、不本意ながら、この種の未熟な歌手の歌も数曲収録。
それと、これも Verse としては本筋ではないが、Mel Torme のライブから、20曲近くに及ぶ Fred Astaire メドレーに、おそらく Mel 自作と思われる Astaire を称える歌詞をつけてイントロとして Verse 仕立てで歌ったものも収録。これは、メドレーそのものも素晴らしいが、しゃべりも加えて、ステージングとはあるいはエンターテインメントとはどうあるべきか、というのをつくづく感じさせる素晴らしいもの。Mel の作曲能力と共に、バックとの一体感も特筆物。他に男声歌手は、Tony Bennett も比較的たっぷりと収録。
最早、初めての曲なんてのは少なくなりつつあるが、それでも色々捜している内に感動的なものに出会えます。上記はその一部です。まだ All Of Me の Verse 付きには出会えていません。


Vol.8. Joni James / Sings Victor Young and Frank Loesser (DIW)

2000年12月13日投稿

長年廃盤のままだった Joni James のアルバムを、数年前 Disc Union がJoni James と個人契約を結んで、大量に復刻した CD の内の1枚である。Joni は、自分の全てのアルバムをレコード会社から引き取り、自分の管理としたために、長い間レコード会社は Joni のアルバムを出せなかった。

Joni は50年代のいわゆるアイドル的存在で、清純派の見本のような歌い方をする。声は非常に澄んだ清楚な声で、言葉はクリアできれいな発音である。メロディは一切崩さず、原曲に忠実に歌い、Scat/Ad-lib などもってのほか、フェイクさえしない。

レパートリーはいわゆるスタンダードから大甘のポップス/ノベルティ・ソング、ハワイアンからウエスタンまで幅広く、バックは多くの場合ストリング入りの大きな編成で、50年代後半以降は当時のヒット・ポップス風のバック/アレンジも聴かれる。古き良き時代のアメリカン・ポップスの一つの典型のような存在である。

で、このアルバムであるが、2人の大作曲家の曲を6曲づつ歌っている。Victor Young の曲には、My Foolish Heart, Stella, Ghost of a Chance などが含まれ、Frank Loesser の曲には、Slow Boat, If I Were a Bell, Spring Will Be a Little Late This Year などが含まれていて、ジャズ・ファンをも満足させる曲が含まれている。

バックはストリング入りのオーケストラを中心に、曲によってかなりバラエティのある贅沢な編成である。アレンジはこの種のスタンダードの典型のように、バッチリ書かれたもので、バックの奏者のアドリブによるオブリガートの類もほとんど無く、ジャズ的雰囲気は薄い。もう一つ、コード進行はほぼ全曲がいわゆるモダン・ジャズのインストのコードとは異なり、より原曲に近い(あるものは更に簡略化された)コードになっている。モダン・ジャズのコードに慣れた方には違和感もあろう。

Joni は清楚にきれいに、安定した歌唱を聴かせる。音程はピタリで、ビブラートも古さは一切感じさせない(30年代のバンド・シンガーに感じるような古色蒼然たる印象は一切無い)。高音部はファルセットも使っているが、違和感は無い。
上述のようなインストで良く演奏される曲などを聴くと、あまりのメロディのストレートさに戸惑いを憶える方もいよう。しかし、ストレートに歌っただけで聴かせるということもどんなに難しいことか。また、難しい転調のある曲も、さりげなく(その難しさを感じさせずに)、崩れることなく歌っている(これは別アルバム、Jerome Kern の曲で顕著)。単なるかわいこちゃん歌手、と決して侮るなかれ!!!

ということで、ポップスを毛嫌いされてる方、Joni なんてジャズとは無関係と思っている方にも、一度は聴くことをお勧めします。ただ、ヴォーカルに刺激や興奮を求める方には、一切お勧めしません。これらが嫌いで Betty Carter が一番、なんて言っている人は、私はその人のセンスを疑います。

Joni には他にも作曲家シリーズがありますが、もう1枚、Jerome Karn and Harry Warren も合わせてお勧めします。
今なら Joni の CD がまだ Disc Union に沢山並んでいます



Vol.7. Nicholas Payton / Payton's Place (Verve)

2000年11月29日投稿

Nicholas Payton の今の時代の tp 第一人者の面目躍如たる演奏である。まず、Lee Morgan が書きそうなカッコいい Jazz Rock で始まる。Lee Morgan 的フレーズと共に最盛期の Freddie Hubbard のような切れの良いフレーズが続く。そんじょそこらの Fusion のような生っちょろい演奏では無く、わくわくする。

続いて、Wynton Marsalis, Roy Hargrove との3人による循環(サビ変型コード)。大バトルを期待したが、3人とも行儀の良い演奏で、それぞれ1コーラスのソロの後のチェースも端正なものでちょっと肩透かし、ただ内容は良い。

徐々に60年代ブルーノートの新主流派的演奏になり、Nicholas Payton も益々熱くなってくる。決してあの時代のなぞり直しではなく、80年代90年代を越えた現代の演奏になっている。わくわくする新主流派的演奏が続く中で、その頂点とも言うべき Shorter の Paraphernalia に入る。あの確か Miles In The Sky の中の曲である。この曲の他人の演奏を聴くのは初めてだが、ゾクゾクする。60年代にリアル・タイムでこれらの演奏を聴いていた時の興奮が甦る。

途中、3連シャッフル的なカッコ良い曲や、With A Song In My Heart での Roy Hargrove との火の出るようなバトル(これはすごい)、Brownie の Riff の断片を寄せ集めた曲での Wynton とのバトルなども交え、最後を Joe Henderson のBlack Narcissus に似た曲(アレンジもちょっと似ている) で締めくくっている。これらのオリジナル曲も皆魅力的な曲である。作曲家としての才能も大変なものを持っている。

サイドメンも皆素晴らしいが、中では Anthony Wonsey (p) が Hancock 的スリルを感じさせて素晴らしい。

比較のために〜的あるいは〜似という表現を使ったが、決して悪い意味ではなく、その素晴らしさの表現のために用いた。tp の演奏技術という面でも、音色面でも本当に素晴らしい。この面ではここにそろった3人の tp 奏者が現代の最高峰であることに異論を挟む方は少ないであろう。

Nicholas Payton という人は、こういう最先端の演奏をする反面、Dixie/Swing の演奏をすれば、いわゆるモダン・ジャズのフレーズ/手癖は全く出さずに Dixie/Swing 時代の奏者になりきれる希有の人である。その面についてはまた別に触れたい。


Vol.6. Paul Desmond / First Place Again (Warner Brothers)

2000年11月17日投稿

Paul Desmond が人気投票のトップに返り咲いたのを記念しての作品。一連の RCA 作品に先んずる Jim Hall との初作。バックは Percy Heath と Connie Kay の MJQ コンビ。

歴代の as 奏者の中で躊躇無く Pretty という形容詞をつけられるのは、Johnny Hodges と、この Paul Desmond が筆頭であろう。また、女性的なんて形容されることがあるが、それは Bill Evans に対するのと同様に全くの間違いである。細い
音の故であろうが、あの音で均質の音質を保ち、あれほど澱み無くフレーズを吹くには大変な技術が必要と聞いている。似た音質の白人 as がいるが、私の印象は一言で以下のようなものである。Art Pepper : カミソリ、Lee Konitz : 無機質、Desmond : やさしさ。
実は Desmond はカミソリの一面も持っているが、決して無機質であったことは無い。音質的には Parker 系の as とは両極に位置する。で、この作品であるが、スタンダード6曲と Blues 1曲が収録されている。いずれも Desmond - Jim Hall にピッタリの曲調。1曲目、I Get AKick Out of Youは比較的速めのテンポであるが、Desmond は澱み無く美しく吹いている。この人、全くシャリコマとは無縁のジャズの人である。Take Five のヒットは、収入面のプラスとは逆に、音楽面ではこの人にとって不幸だったかも知れない。Jim Hall との相性がいい。Jim Hall という人は誰とでも、どんな楽器とも協調できる希有の人だ。協調しながら強烈な個性を発揮しているのもこの人ならではである。
その他、美しいスタンダードを、Desmond は音こそ穏やかでやさしいが、内容的にはハード・ボイルドに吹いている。

難点はブルースか? 曲は John Lewis の 2 Degrees East, 3 Degrees West で、曲調は他の曲と違和感は全く無いが、ソロは白人のアルトの典型のように感じる。Art Pepper は別格として、あの無機質な Lee Konitz でさえ Blues を吹くと緊張感の欠けた世俗的な演奏になってしまう。Desmond も他の曲に比べて通俗フレーズの多い演奏のように感じる。

何やかんや言っても、この演奏はお勧めです。他の Jim Hall とのコンビ全てと、D.Brubeck とのディズニー集 Dave Digs Disney と、マット・デニス集 Angel Eyes がお勧めです、Brubeck 自身は聴く価値はありませんが。



Vol.5. Herbie Hancock / Gershwin's World (Verve)

2000年11月14日投稿

Hancock がピアノを弾いていさえすれば、それはそれだけで素晴らしいのだが、どうもこういう鳴り物入りの大作は苦手だ。曲毎にメンバーが変わり、豪華この上無いのだが。オーケストラとの演奏はどれも私にはピンと来ないもので、私は評価する資格無し。やはり、小編成物や歌に興味が行ってしまう。
このアルバムは Gershwin の Showcase と言うよりは、Hancock 自身の Showcase である。彼は実は Sextet 時代 (Blue Note のPrisoner に始まり、Warner の3部作を経て、CBS 初作 Sextant まで) に大きなこだわりを持っているのではないか?

The Man I Love / Summertime は Joni Mitchell の歌だが、私はこの人の面白さがわからない。以前のオール・スターのバックのアルバム Mingus もわからなかった、それも豪華なバックだったのだが、いまだに世の中の評価の高さが理解できない。Stevie Wonder の歌とハーモニカも入っているが、歌よりもハーモニカに耳が行ってしまった私は、やはりこの辺の歌音痴か? Stevie の名誉のために言っておくが、彼が歌った St. Louis Blues のサビ(通常ハバネラで演奏される)はリ・ハーモナイズ(なんて生易しいものではないが)されていて、2小節ごとに音程をとるのが難しいコード(転調?)が続くつらいもの(だと思う)。Cathleen Battle の使い方 (Wordless vocal) も非常に贅沢だが、何となく物足りない。

中で、Shorter 入っているコンボものは面白かった。最近の Shorter はお疲れぎみのように思えて、Hancock との Duo のアルバムも私には面白くなかったのだが、今度はかなりリカバリーして来ているように思える。皮肉にも Gershwin の曲でない Cotton Tail (Ellington) が最もStraight Ahead な演奏で、Shorter も狂っていた。T.L.Carrington の ds も素晴らしい。

Corea との Duo も、題材が James P. Johnson のもので、期待したのだけれど今までに聴き慣れ過ぎていたためか、新鮮な感動はなかった。
Ron Carter との Duo も、技術的/音楽的には非常にレベルの高いものなのであろうが、私にはスリルが感じられず、わくわくはしなかった。
Solo の Embraceable You はピアニストに評価をお願いしたい。

私はやはり Hancock はコンボの(サイド・マンでの)演奏が好きだ。特にどうでも良いような Jazz Rock (Fusion とは言わない)でのサイド・マンの演奏など (Donald Byrd の Up など)にスリルを感じる。これってやっぱりカタワなのだろうか? 考えてしまう。それとも、大作に対する私自身の偏見が、もう公平な評価を妨げるほどになってしまっているのだろうか?



Vol.4. Wynton Marsalis / Standard Time Vol.5 (The Midnight Blues) : Sony

2000年11月13日投稿

Wynton のスタンダード5作目で、Quartet がストリングスと共に吹き込んだ CD。大スタンダード及び渋めの曲、計11曲に自身のオリジナル The Midnight Blues 1曲を含めたもの。このオリジナルも他の曲にフィットしている。

多分、例のマウス・ピース一体型のトランペットと思うが、素晴らしい音で、本当に美しく曲を吹いている。高音や速いパッセージでも音がかすれたり乱れたりせず、どうやったらこんな場面でこんなきれいな音が出るのだろうと不思議に思えるほどきれいに演奏している。全曲バラードだが、いかにも、という感じがしないのは、リズム・セクションが淡々と弾いているのと、Wynton のスムーズさの故か?勿論、音楽的にも技術的にも(多分)非常に高度なことをやっているのだろうが、それを聞き手に感じさせないほどスムーズに演奏している。多分 tp をやる方なら
あらゆる所で、ほう〜、と感心することが有るのだろう。逆にスムーズ過ぎて、本来ならユーモラスなフレーズも端正に聞こえてしまうの
は難点か。例えば、結構ハーフ・バルブを使っているのだが、これがリー・モーガンのように茶目っ気たっぷりには聞こえず、きれいに流れるフレーズの一部のように聞こえてしまう。(これは、実はとてつもない技術が必要なのでは?) 私個人的には、この部分に関しては、リー・モーガンの不良っぽい演奏の方が好きですが。

ストリングスは出過ぎず、ある場面では弦を意識させないほど溶け込んでいる。ということで、以前のフル・バンやディキシーのような演奏とは全く異なり、また、初期のコンボの非常にテクニカルな最先端の演奏とも異なる、また、スタンダードVol.1, 2, 3 (4は聴いていません)とも趣きを異にする Vol.5 です。この CD から1曲、Glad To Be Unhappy を Verse MD に収録。


Vol.3. 自編Verse Anthologiesについて

2000年11月6日投稿


Verse MD もついに20枚目まで完了しました。延べ450曲程度になりました。だんだんネタも無くなり、収録曲も重箱の隅的になりつつありますので、この辺で一旦打ち切ります。最後の5枚の中に Mel Torme の比較的新しい魅力的なのを収録できたのは収穫でした。最近の新譜でもまだまだ素晴らしいのが有りそうですが、追い切れません。

この編集作業を通じて感じたのは、前回の中途報告時にも書きましたが、Verse のある曲は魅力的な曲が多い、ということと、何らかの企画物 (Song Book シリーズ等)以外は、アルバム中の Verse 収録曲は意外と少なかった、ということ。企画物以外では1アルバム中、1〜2曲が平均収録数だったのでは?(Ella の VERVE Song Book シリーズ全CD16枚、全部欲しい!、入手できれば未収録分を追加したい。)

また、いわゆる純粋ジャズ歌手よりも Pops 寄りの歌手(パティ・ペイジやドリス・デイ、はたまたカーリー・サイモンやリンダ・ロンシュタットまで)の方が丁寧に Verse を歌っているのも意外であり感激ものでした。更に意外だったのは、Billie Holiday の Columbia 系全録音(160数曲:Lady In Satin など新しいものは除く)中、Verse 付きはわずかに3曲(聴き逃してなければ)だけでした。これらも最後の5枚に収録。Decca は Verse かどうかよく分からないのが3〜4曲と Commodore は Verse 無し。Billie は総じて Verse が少ない、SP時代3分制限の故か?

また、沢山ありそうだった Autumn Leaves の Verse 付きが Dee Dee の1例のみ(それも Verse はフランス語、じゅんちゃんから借用)だったのも、シャンソンでは結構 Verse から歌われているだけに意外でした。逆に Lush Life の Verse 無しは Julie London の1例があったのみ。あと、Dindi の頭は Verse なのでしょうか? インスト物では3例 (Stitt と Harry Allen と W.Marsalis)、歌のバックでのインストによる Verse が3例 (Chet Baker 2例と Rita Reys) を収録。

Sunny Side は今回収録、All Of Me の Verse 付きは相変わらず未収録ですが、今後に期待するとして、最後の5枚はぼちぼち関係者に配布予定です。今後は細々と。



Vol.2. Art Tatum & Ben Webster Quartet (Verve ==> Pablo)

2000年11月2日投稿

スイング時代の大物2人がモダン・ジャズの時代(1956年)になって録音したもの。大スタンダード7曲(ミディアム以下のテンポ)を淡々と演奏している。多くの方はこの2人の名前は聞いても実際の演奏を聴く機会は少ないんじゃないかと思いますが、これはお勧めです。

本当に素晴らしい。こんな境地には逆立ちしたってなれっこない。Ben はアドリブらしいアドリブはあまりせず、メロディを本人独特のサブ・トーンであっさりと吹く。まかり間違えばサム・テイラーになってしまう所を、ジャズ以外の何物でもない世界を展開している。

Art Tatum と言うと、テクニック云々が常に言われていて、事実、他のほとんどのレコードではその速弾きとアルペジオに耳を奪われるのですが、これは例外で(勿論そういう部分もありますが)、穏やかに淡々と弾いています。彼はソロ・レコードが多いのですが、この場合は4人という編成も影響しているのかも知れません。

もう一つ、All The Things You Are や Have You Met Miss Jones? のような曲をスイングの人達がどう弾くかも興味がありましたが、II-V とか AvailableNote Scale とかとは無縁の世界で非常にきれいに弾いています。こういうのを聴くと、ジャズの理論を議論することなんて馬鹿らしくなって来る。また、My One and Only Love も我々のコードとはだいぶ違う(本質的には同じですが、ベースの動きが違う印象)。同じような設定に、同じく Verve で、Teddy Wilson と Lester Young のレコードがあります。Lester がつらい時代のものですが、これは例外です。



Vol.1. The Complete Birth of The Cool / Miles Davis (Capitol)

2000年11月1日投稿

Miles の Capitol Studio Session 全12曲に、 Royal Roost からのライブで記録されたもの全てを加えて、1枚のCDに入れたものです。
ライブの方もLP時代から色々な形で出ていましたが、それらを全て集めて、1〜2曲の未発表曲(ライブ)を追加したものです。
個人的には、聴く立場としては、面白い演奏ではない。アレンジャーの立場では聴くべきものは沢山あるのだろうが、何か足かせが強すぎる
印象で、アドリブが生き生きとしていない。Shorty Rodgers などのWest Coast 派や、その後のアレンジに大きな影響を与えた、とのことで大きな評価をもらっているが、聴いてみてわくわくしない。ライブ盤の方がまだましではあるが、それでも例えば同時代の Parker に比べたら、わくわく度に雲泥の差。何で、この盤、そんなに評価が高いんだろう。Studio 盤の方は、元々はSP でバラで出されていたものをまとめて LP 化する時に Birth of The Coolのタイトルを付けたプロデューサー(ピート・ルゴロ?)のアイデアの勝利、でしょうか?

ということで、皆さんも聴いた CD の感想を聞かせてくれませんか?


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