PLAYER'S IMPRESSION

(October 24, 1999 Last Up Dated)


私がグル−プを再結成して代々木のナルに月1回のペ−スで再び出演し始めてから早11年になります。知人の方々から「せっかくホ−ムペ−ジも作ったんだから何かライブの記録でも残したら」というお勧めもあったので、挑戦してみようかなという気になりました。自分で自分たちの演奏の事をとやかく言うのはおこがましいし、主観的になりすぎるのではとも思いますし、自分の技量の未熟さも当然自覚しておりますので、ためらいもありますが、演奏者の気持ちが少し伝わればと思い、思い切って連載してみようかなと思っています。ご感想をお聞かせください。


1.代々木ナル 第119回 1999年9月18日(土) 3セット

(P)永井隆雄 (B)矢野伸行 (D)鏡剛 (V0)小笠原千秋 

今回はドラムの諸さんが自分のバンドの「J」出演と重なったため、ドラムを探さなければなりませんでした。田鹿雅弘さんとか二本柳守さんとか、いつも空いていれば快くやってくれる素晴らしいドラマ−もいるのですが今回はたまたま半年位前に聴いた鏡君に初めてやってもらうという冒険もありました。ギャラの関係もあって若い人に参加してもらうのも面白いなと思ったし、偶然に発見した鏡君のドラミングもタイプだったもので一度一緒にやってみたいと思っていました。

1セット目はいつもどおり、楽器のコンディションも自分の調子も良くないパタ−ンで始まってしまいました。当初の選曲を無難なモンクのReflectionsに変更しました。この曲ではいつもモンク的なアプロ−チを取り入れようと思いながらやっているのですが、1曲目という事と、タンギングの調子が上手く合わないという心理的アセリから余裕がありませんでした。その点、いつもすぐに自分のペ−スを掴める永井君はさすがです。モンク風音外しでも、いつもピッタリ付きあってくれちゃいます。2曲目のMoon Rayはホレスシルバ−の曲とのことですが、原曲は聴いたことがありません。ファラオ・サンダ−スのアルバムから拝借しました。そのアルバムではドラムがスティックを使わずに手で叩いてエキゾティックな雰囲気をかもしだすのですが、アフロ風3連リズムで挑戦しています。メロディはシンプルな長いト−ンなのですが、16−16−16小節というABA形式の長い曲なので、皆しばらくやっていないと、どこをやっているのか見失ってしまいます。案の定、昨夜は全員途中で見失いました。ベ−スの矢野君まで間違ってしまったのだから、何をかいわんやになってしまい、無理矢理自分に合わさせましたが、ピアノソロ部分でもまた3人ともやってしまいました。歌では小笠原千秋との共演は2年振りでしたが、1セット目は割とポピュラ−なスタンダ−ドでキ−もそれ程嫌なキ−の曲はなかったので一安心といったところ、無難に終わりました。

ここでいつも来て下さる智恵子さん、段木さん親娘、井上さん、しゅん子さん、植田真実さん、村山さん、竹前さんが登場。ネットで名前だけ知っているオットットさんはこの時帰られてしまったみたいで残念です。声をかけてくれればよかったのに。

2セット目は、最近仕入れたデクスタ−・ゴ−ドンの曲集から有名な曲2曲を用意しておきました。Soy Califaという裏ボサのラテン調の曲と Cheesecakeというお馴染ナンバ−です。Soy Califaはちょっとリハをしないと合わないだろうというリズムのおまけの決めがあるので、チ−ズケイクを取りあげました。はじめて奏った割にはまぁまぁかなっていう所、自分ではバップ・フレ−ズを随所に出そうと思っていたのですが、ままならず自分節になってしまいました。永井君はこの曲もおもいきりペンタトニックしてしまいました。サビのコ−ド進行はもうちょっと練習しないと−−。2曲目はここの所コルトレ−ンを奏る機会がなかったので(諸ちゃんは絶対にやりたがらない)、あえて挑戦しました。久保田君とは良くやっていたのですが、Wise One とCrescentを用意しておいて、あえて初めての人でも難しくない方のWise Oneを選びました。途中インテンポになって12小節のコ−ド・パタ−ンになるつなぎの部分で皆が間違えてしまったけれど、まぁこんなものかなっていうところです。歌のほうでは千秋ちゃんはいつもより何か声が苦しそうに聞こえたけど、どうだったんでしょう。彼女は自分でグル−プを作ってオリジナルの曲を目指しているタイプなので、ちょっとズ−ジャ通の人の好みからは違うかも知れません。けれど、ステ−ジ・ワ−クはベテランの域に入っていて、お客さんを引きつける力は持っていると思います。私は8,9年前はじめて彼女に会ったとき、あの目の魅力に取りつかれてしまった思い出があります。こんな状況でこのセットの演奏時間が1時間を越えてしまい、次の時間に大幅に食い込んでしまいました。

3セット目は時間も押していたので、いつもやるバラ−ドタイムなので短めに2コ−ラス位と思いJ.J.Jhonnsonn のLamentを取り上げましたが、バックの3人がメディアムのテンポに持ち込んで、結局長くなってしまいました。2曲目は鏡君のアップテンポでのドラミングを聴きたいと思い、Yes or Noを取り上げました。14−14−16−14という変則なパタ−ンなので、Aパ−トの繰り返しの所がやりにくい曲なのですが、皆乗ったと思います。歌の方は、インヴィテイション、私には千秋ちゃんから譜面が事前に渡されていたので練習して行ったのですが、皆は初見だったのでキ−がかなりヤバかったみたいです、しかしこの曲のサビはやっぱり苦手のひとつです。My Favorite Thingsも私は譜面をもらっていたのでおさらいしておきましたが、メンバ−にはきつかったみたいです。それより私はあのAのキ−の曲、何だったかな、アレが全然吹けなかったのがちょっとクヤしい。B(サックスで)のスケ−ルの復習です。途中,六角幸生さんが参入(いつもの事ですが)、彼の歌にはいろいろな意見が出ていますが、あの声量はいつも素晴らしい。私は彼のレパ−トリ−をほぼ掌握してしまったので(6,7回は一緒に仕事しているので)、ほぼ譜面なしで伴奏できます。

こんな調子で、まぁまぁなライブじゃなかったかなと思っています。今回の収穫は鏡剛君でした。永井君とは以前に一緒にバンドやっていたこともあるらしく、矢野君とは初対面だったのですが、最後は意気投合していました。今後もスケジュ−ルが合えば、うちのバンドをやってくれるそうです。

来月は広瀬麻美とビリ−ホリディ特集6回目です。さあ、曲と構成を考えなくては。去年は小林春美さんが台本を書いてくれて、今回のライブに来ていたアナウンサ−の植田真実さんが朗読してくれました。今年はどうなるだろう。


2.代々木ナル 第120回 1999年10月16日(土) 3セット

(P) 西島芳  (B) 磯部英貴  (D) 諸田富男 (VO) 広瀬麻美

(Asami Hirose sings Billie Holiday Vol. 6.)

広瀬麻美ちゃんのヴォ−カルにビリ−・ホリディの影響を感じていた私が、ビリ−の持ち歌を集めてやろうよと誘って始めたこの企画ですが、途中、新宿『J』にて行なったギグも含めて、もう早6年目になりました。最初はイヤイヤだった麻美ちゃんも、段々と乗ってきて、私もこのセッションは秋の楽しみにしています。今年はどの曲をやろうかというピックアップの楽しさもあります。1回目には私がニュ−ヨ−クで買ってきたジャズメンの白黒レトロ調のポ−トレ−トをナルの壁に貼って並べた記憶が思い出されました。斉藤さんもその時からバ−テンダ−を勤めてくれるようになったんでした。早いものです。昨年から小林春美さんが企画原稿を書いてくださり、ナレ−ションをアナウンサ−の植田真実ちゃんが担当してくれるようになってナレ−ション入りでやりだしました。

1セットはインストで 「There will never be another you 」と「All or nothing at all」です。another youはビリ−が歌っているわけではありませんが、ライブの2,3日前ビリ−とレスタ−・ヤングのレコ−ドを聴いていて、レスタ−の十八番の中から選びました。もう1曲「Taking a chance on love」とどちらかをやろうと悩んでいたんですが、結局another youにしました。私はレスタ−のようには吹くことが出来ませんが、この曲はかなりレスタ−を意識して演奏してみたつもりです。2曲目の「All or nothinng at all」はシナトラのお箱として有名ですが、ビリ−も1939年に録音しているそうです。これはコルトレ−ンのバラ−ドに取り上げられていて、そちらの方がジャズファンには知られているかもしれません。私も良く演奏する曲ですが、従来通りコルトレ−ン・バンドのアレンジを採用、私もいつものように演奏してみました。 歌の方に入り、1.「When you're smiling 」2.「Jeepers cheepers 」3.「Body and Soul 」4.「St.Louis Blues」の4曲、「When you're smiling 」ではビリ−/レスタ−の様にテナ−で1コ−ラス最初にメロを取ろうと麻美ちゃんと偶然一致し、私のテ−マから入りました。これもちょっとレスタ−を意識してみました。「St. Louis Blues」では間奏でカオリちゃんが譜面通りソロを取ってしまい皆ちょっとアセりましたが(この曲はブル−スの進行にサビのオマケが付いている)難なくことなきを得ました。掲示板で村山さんからリクエストをいただいていた2曲を村山さんがいらっしゃる前に演奏してしまったのは残念でしたが、今年も曲順をビリ−が録音した年代順に並べたのでしかたなかったのです。チェイサ−にはこの企画の時にだけビリ−の十八番、「What a little moonlight can do」を採用しています。

2セット目はインストは「These foolish things」と「You go to my head」です。「These foolish things」はレスタ−の定番ですがビリ−も1936年と1952年に2回録音しているそうです。(小林さんの資料によれば)、このシリ−ズでは毎年演奏している曲です。「You go to my head」は六角幸生さんと初めてフランク・シナトラ・シリ−ズをやった時から取り上げた曲ですが、何故かこの曲は私にはビリ−の唄いだしのイメ−ジがいつも付きまくっている曲のひとつです。ビリ−の声が出だしに響く曲が私には何曲かあります。例えば「For heaven's sake 」とか「You 've changed」などですけれど。 このセットも「These foolish things」ではちょっとレスタ−風に、「You go to my head」では自分流の吹き方をしてみました。でもこういうギグではソロは余り凝ったことを考えず素直に原曲のメロディ−をフェ−クしていく感じのアドリブをするようにした方がいいのではないかと思って演奏しています。それも時には表現の難しさはありますが、楽しいものでもあります。歌の方は、1.「I cover the water front 」2.「Traveling right」 3.「Lover come back to me 」4.「Lover Man 」5.「May be you'll be there」という構成で行いました。

3セット目は最初に、聴きにきてくださったお客様のセッションから近藤淳ちゃんの歌と村山さんのベ−ス、竹前さんのドラムで「Bye Bye Blackbird」から始まり、インストは「Lady Day 」「The end of love affair」という選曲でした。「Lady Day 」はずっとこのシリ−ズ用に暖めていた曲なのですが難しくてリハなしでは出来なかった曲なのですが、今年は是非やってみようと思い、ひとりで何回か練習しました。カオリちゃんにも事前に譜面を渡すチャンスがあったのと、リハをやる時間がちょっと取れたので、ちょっとリハをやって、初挑戦に望みました。しかし、やはり難しい。この曲はチャ−ルス・ロイドがビリ−に捧げた曲で1985年にタウンホ−ルで行われた新生ブル−ノ−ト・レ−ベルのオ−ルスタ−・コンサ−トでの演奏が印象的でミシェル・ペトルチア−ニが素晴らしいソロをとっています。ロイドがシダ−・ウォルトンとやったレコ−ディングもあります。この曲はビリ−特集ではなくても、常時レパ−トリ−に取り入れたいと思います。「The end of love affair」の方は「Lady in Satin」の中でビリ−が最後に唄っている曲ですが、このアルバムには賛否両論あるらしいですが、私は素直に大好きです。即席で準備され、ビリ−も普段唄っていないバラ−ドの名曲を並べたアルバムですが、どの曲にも泣かされます。50年代のこの手のウイズ・ストリングス物には何か自分の郷愁をさそうものがあるみたいです。シナトラの「Nice'n Easy」なんていうアルバムもそのひとつです。しかしビリ−特集をやるとアップテンポの題材が少ないので、デクスタ−ゴ−ドンがやっているヴァ−ジョンを取り入れてアップテンポで演奏しています。唄の方は1.「Crazy he calls me」2.「I only have eyes for you 」3.「How deep is the ocean ? 」4.「Ghoast of a chance」 5.「You've changed 」の5曲でした。麻美ちゃん得意の「For heaven's sake」が今年は入っていなかったのがちょっと残念ですが、まあ「You've changed 」があったからいいか。麻美ちゃんの唄も毎回、聴くごとに力強さというか、貫録というか、そういう感じが増してくるのが感じられます。7,8年共演してますが、大好きな歌手のひとりです。個人的にも一番仲の良い歌手の2,3人のひとりです。小林さんのスクリプトも大変良く出来ていたし、真実ちゃんもちょっとアナウンサ−っぽ過ぎるのではという声もありましたが(実際彼女はアナウンサ−なのでしょうがない)、総括的には大変自分でも楽しめたライブでした。

さて、来月はヨ−コ・サイクスです。


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